無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。

高田タカシ

三章 29 『エルフの村』


 「いつまで寝てるんだい!とっと起きな!」

 「ふぎゃっ!」

 あれ?なんだこのデジャブ。どうやらこのサリスという女普通に人を起こすことが出来ないらしい。

 「イタタ・・。もうちょっと優しく起こしてくれてもいいだろ!」

 「こんな美人に起してもらうだけでもありがたいことだろ?贅沢言うんじゃないよ。どうやら私のおかげでちゃんと寝れたようじゃないか?礼を言われる筋合いはあっても文句を言われる筋合いは無いと思うが?」

 サリスの渡した枕をタクミが使ってるのを見てサリスが勝ち誇ったように言った。たしかにこのサリスから渡された枕を使ったらビックリするくらい安眠できてしまった。

 「ぐっ・・ホントアンタ良い性格してるよ。」

 「ハハハ。よく言われるよ。交際の申し込みはいつでも受け付けるぞ?」

 「しねーよ!」

 「おはようタクミ。このような形で休ませることになってしまいすまないな。」

 サリスのちょっかいの後だとアイズはまるで天使か女神のように見えた。

 「いや、別にいいんだ。アイズが気にすることないさ。まあ当然っちゃ当然だしな。ハハハ・・。」

 「ほれデレデレしてないで早く支度しな。早くエルフ族の村に行かないと行けないんだからな!」

 アイズとの挨拶もほどほどにサリスに急かされて支度を整えるタクミ。荷物をまとめてエルフ族の村に向かい出発した。

 ダジンにもらった地図を確認しながら進んでいくタクミ達。しばらくして森に入りこんだ。どうやらこの森の奥地にエルフ族の村があるらしい。道は良いものではなかったがグリドラ達は軽快に森の間を駆け抜けていった。

 「地図によればそろそろ着いてもいいと思うんだが・・・。あれは?」

 森を駆け抜けること2時間弱アイズの視界の先にそれらしき村のようなものが見えてきた。

 「どうやらあそこみたいだな!何があるかわからん!気をつけるんだぞ!」

 サリスが警戒を呼び掛けた。襲われるかもしれないという警戒をしながらエルフ族の村に到着したタクミ達。その光景に言葉を失った。

 「これは・・・!?」

 タクミ達が見た光景。そこには至る所にエルフ族たちが倒れていてマーリンと同じ症状を発症させていた。明らかにマーリンよりも重体の症状の者もいた。実に老若男女問わずといった様子だった。

 「どうやら状況は最悪と言った様子だな。・・・誰か!この村の責任者はいるか!?私たちはこの村の人達を救いに来た者だ!」

 アイズがエルフ族の村に向かって叫んだ。少しすると一つの家からガタイのいいエルフの男が出てきた。どうやらこの男も呪術にかかっている様子だ。ゆっくりとタクミ達に近づいてきた。

 「貴方達は一体何者だ?」

 「私たちはこの村のダジンとマーリンという者たちから頼まれて貴方たちの治療に来たものだ。その証拠に、タクミ。」

 アイズがタクミに視線を送った。

 「ああ。これがその証拠だ。」

 タクミは胸元からダジンから受け取ったフェルの描かれている魔石のペンダントを見せた。

 「おぉ。そのペンダントは間違いなくエルフ族に伝わるモノ。どうやら貴方達の言うことは本当のようだ。こんな私たちを治療できるというのか?」

 「私にかかれば問題はないさ。それよりもアンタ!どこか治療をするための部屋を用意してくれないか!?それなりに広い部屋が好ましいのだが。」

 「そういうことなら私の家を使ってくれ。」

 「そうかい。悪いが時間がもったいない。すぐに準備に取り掛からせてもらうよ!」

 「承知した。こっちだ。ついて来てくれ。」

 男に案内されてタクミ立ちは一つの家に入った。その中で一番広い部屋を治療の為に借りることにした。部屋にある余計なものを片付けるサリス達。片付いた部屋の床にサリスが何やら塗料のようなものを取り出し床に魔方陣を描き出した。サリスの家にも描かれたものと同じものだった。

 「なあアイズ。サリスが書いてるものって何なんだ?たしかサリスの家にも同じものがあったけど。」

 「あれはサリスの考え出した回復系魔法の効果を最大限高めるものだそうだ。あの魔方陣の中なら死人以外は完治させられるとサリスは以前言っていたな。」

 サリスは一心不乱に床に魔方陣を描いていった。その顔には汗を浮かべながら。

 「へぇー。っていうかなんかあんなサリスを見るとなんか不思議な気持ちになるな。なんていうからしくないっていうか、柄にもないっていうか・・・」

 「ハハハ。タクミはサリスの事を誤解しているようだ。彼女は普段は悪態をつくことも多いがその心を真に優しいものだ。ここに来る時もタクミを必要以上に急かしていただろう?」

 「ああ。すごいせっかちな奴だなと思ったよ。」

 「あれは一刻も早くエルフ族の人達を治療したいが為の表れだよ。サリスは良く私にお人好しというが、私からしたらサリスの方がよっぽどなお人好しさ。サリスはケガや病気で苦しんでいる人を放っておけないのさ。」

 アイズがサリスの方を見ながら優しく微笑んでいた。タクミも目の前で汗だくになっているサリスを見てアイズの言ったいたことを納得した。

 「・・・・出来た!これで準備は整った!今からこの部屋に患者を連れて来てくれ!症状の重い者から優先して連れてくるんだ!」

 サリスの指示の元でタクミとアイズ、それと動けるエルフ族の者で協力しながら呪術にかかっている者を案内していった。サリスは次々と運ばれてくる患者を治療していった。

 「今のでどうやら最後の患者だったようだ。サリスお疲れ様。」

 アイズが治療を終えたサリスにコップに入った水を差しだした。

 「ありがとう。さすがに私も疲れたよ。」

 サリスが渡された水を飲み干して、煙草を取り出し加えて火をつける。 約半日をかけてすべての呪術にかかっている者の治療をした。

 「サリスって凄い奴だったんだな。俺なんだか誤解してたよ。」

 「なんだ急に?私に惚れたのか?」

 「ち、ちげーよ!単純に凄いって思っただけだよ!すぐそうやって茶化すなよ!」

 「フフッ。タクミは反応がいちいち面白いからな。いじめ・・・からかい甲斐があるというものだ。」 

 「今いじめっていったよな?」

 「気のせいだろ。さてそれよりも治療も終わったことだし誰かに詳しい話を聞かないとな・・・」

 「そのことについては私が話そう。」

 そう言うと最初に出てきたガタイのいい男が扉を開けてタクミ達のいる部屋に入ってきた。



 

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