無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。

高田タカシ

三章 21 『悲しみの魔術』


 「な、なんだこの光は!?」

 呪文を詠唱したスコットを眩い光が包む。それはウインズの屋敷で見たモノとは完全に別の次元だった。

 「スコット・・・?」

 その光にタクミも戸惑いを隠せない。スコットの光に圧されてスコットに襲いかかろうとした男たちも勢いよく弾かれてしまった。

 徐々に光が薄れていきスコットの姿が露わになってきた。スコットの後ろにうっすらと羽の生えた戦士の姿があった。おそらくはスコットの降魔させた神の姿だろうとタクミは思った。

 「あれがスコットの降魔術によって呼び出された奴か?一体どんな力が・・・?」

 タクミがスコットの降魔術に疑問を抱いた時、リリックの呼び出した男たちが苦しむようなうめき声をあげだした。

 「なんだ!?何があったというんだ!?」

 その状況に驚き戸惑うリリック。

 うめき声をあげる男たちは次第に浄化されたように黒い塵のようにその姿を消していった。

 「お前の仕業か!スコットォォーー!!」

 「あなたの悪行もこれまでだ!リリック!」

 「ふざけるなぁーー!!こんな・・・こんなことがあってたまるかぁーー!!」

 目の前の状況に混乱を錯乱した様子のリリック。

 「スコット・・・・これがお前の魔術か?」

 「ええ、そうだよタクミ。やっと僕の事を認めて力を貸してくれるようになったみたいだ。」

 「一体何の力を降魔させたんだ?」

 「彼は太陽を司る神ヘリオス。その光は不浄な魔力を浄化することが出来るんだ。・・・リリック!もうあなたの兵士は僕の前には通じないぞ!おとなしく降参するんだ!」

 スコットの言葉を証明するようにスコットの発する光を浴びた男たちはその姿を次々に塵へと変えていった。

 「太陽神だと!?お前のような未熟者にそんな魔力が宿ったというのか!?そんな馬鹿な!」

 「僕だけの力じゃないさ。僕を生かすために母の力と最後まで立派な皇帝を貫いた父の力が僕にこの魔力を授けてくれたんだ!」

 「この戯言を!お前はここで私が直々に手を下してくれるわ!」

 リリックが何やら黒魔術を発動させようとしていた。

 「スコット!何か来るぞ!気をつけろ!」

 タクミの言葉にスコットは少し振り向いた。

 「大丈夫だよタクミ。すぐに終わらせるから少しそこで待っていてくれ。」

 まるでこの一瞬にスコットが大きな成長をしたと思わせるような安心感がタクミには伝わってきた。

 「二人まとめてここで消え去れ!我が黒魔術最強魔術!デスインパクト死の衝撃!」

 リリックからスコットに向けて禍々しい黒い魔力が放たれた。

 「その全てを浄化せよ!太陽神の加護よ!」

 次の瞬間スコットからまるで太陽の光のような眩い光が放たれリリックの放った黒い魔力を跡形もなく消し去ってしまった。

 「そんな馬鹿な・・・?」

 一瞬で自身の最強魔術を消し去られたリリックは呆然と立ち尽くした。

 「もうあなたの魔術は僕には通用しない。おとなしく諦めるんだ!」

 「こんなことが・・・・」

 リリックは戦意を失ったのかその場にしゃがみこんだ。

 「ふぅ・・・」

 そんなリリックの様子を見てスコットが降魔術を解いて振り返りタクミの方に近寄ってきた。

 「もう終わったよ。タクミ大丈かい?」

 倒れているタクミに手を差し伸べるスコット。

 「ああ、悪い。俺が護衛なのにすっかりスコットに助けられちまったな。」

 タクミが差し出されたスコットの手を握ろうとした次の瞬間、タクミがどこかで聞いたことのあるような音がした。

 え?今のは・・・銃声?

 タクミが音に気を取られた次の瞬間、スコットがタクミの方に倒れてきた。

 「おい!スコット!どうしたんだ!」

 タクミは上半身をなんとか起こし、倒れたスコットの方へと駆け寄った。倒れているスコットを抱きかかえる。

 スコットの体を抱きかかえると手に何やら生暖かい感覚を感じた。

 よく見るとタクミの手には赤い血がベットリと着いていた。スコットの血だった。右胸のあたりから出血をしていた。

 「おい!しっかりするんだ!スコット!」

 「あれ?僕は一体・・これは僕の血?」

 スコットも自身の状況が呑み込めてない様子だった。

 「ハッハッハッ!どうだ!このクソガキが!だから言ったんだ!お前ら魔法使いは魔法以外に対しては脆いってな!」

 先程戦意喪失したように見えたリリックが今度は高笑いをしている。リリックの右手には拳銃が握られていた。

 「あれは拳銃!?ならこの血はあの銃によるものか!?」

 どうやらスコットはリリックの拳銃によって撃たれたようだった。

 「てめーー!!なんでそんなもんもってやがんだ!?どこで手に入れやがったんだ!?」

 「クックックッ。これはある人から私が授けられた物なんだよ!時には魔法以上の力を発揮するとな!まさにその通りだ!どうだ!いくら太陽神の力を持っていようがこのざまだ!これで私の目的は達成した!」

 そういうとリリックはどこかに走り去ってしまった。

 「おい!待てよ!逃げんじゃねー!・・・くそっ!あのヤローどっかに行っちまった!って大丈夫かスコット!」

 「ハハ・・・やっぱり僕も全然未熟だったみたいだね。うっかり敵に背中を見せるなんて。ごめんねタクミ。こんなことになってしまって。」

 「そんな・・・スコットは何も悪くねーよ!待ってろよ今回復魔法で傷を治してやるからな!」

 タクミがスコットの傷を治そうと右手をかざしたがタクミの回復魔法では微々たるものでスコットの出血は止まらなかった。

 「くそっ!もっと!もっと早く傷口塞がれよぉーー!!」

 スコットがタクミの右手を優しくつかんだ。

 「いいんだタクミ。これも僕の未熟さが招いた結果なんだ。僕はきっと皇帝になる器ではなかったってことだね・・・」

 「そんなことねーよ!さっきのお前の姿はまさに皇帝って姿だったぜ!お前しかアーバンカルの皇帝になれる奴はいないんだろ!?こんなところで諦めてんじゃねーよ!」

 「ありがとうタクミ。君にそう言ってもらえただけでも僕は嬉しいよ。・・・タクミ一つお願いがあるんだ。」

 「なんだお願いって?」

 「タクミは人の魔術を取り込むことが出来るんだろう?その力で僕の魔術をタクミに取り込んでくれないか?」

 「え?お前何言ってんだよ?そんなこと出来るわけないだろ!傷が広がるからもうしゃべるんじゃねーよ!」

 「お願いだタクミ。僕のこの魔術を使ってみてわかったんだがこれはとても強力な魔術だったよ。だからこの魔術をここで失うわけにはいけないんだ。わかるだろ?」

 「わっかんねーよ!その魔法はお前のだろ!お前がこのアーバンカルの為に使わないとダメな力なんだよ!」

 「ハハ・・・僕も本当はそうしたかったけどそうやら無理そうだ。だからタクミにこの力を託したいんだ。お願いだタクミ!」

 タクミの右手をより一層強く握るスコットの手。

 「そんな・・・そんなこと出来ねーよ!あきらめるんじゃねーよ!お前はここで俺が助け・・」

 「タクミ・・・!」

 タクミの言葉を遮るスコット。

 「もう時間がなさそうだよ・・・」

 スコットが優しく微笑んだ。

 「くっ・・・わかったよ!でもお前が治ったらちゃんと返すからな!」

 「ああ。是非そうしてくれ。」

 タクミが右手を掲げた。

 「我、無能ゆえにその全てを欲する!今ここで全てを我に捧げよ!マジックオブロスト!」

 無能術を発動させその右手をゆっくりとスコットの体内に入れた。

 「・・・っ!」

 顔をしかめるスコット。

 「大丈夫か!?痛いのか!?」

 「いや、僕は大丈夫・・だから続けてくれ。」

 ただでさえ苦しいはずなのに大丈夫なわけがない。タクミはそう思い早くスコットの魔力の核となるモノを探した。

 「すぐに終わらせるからな・・・あ、あった!」

 タクミに右手にそれらしきものが触れた。それをゆっくり掴み取り出すタクミ。

 スコットの体内から右手を抜き出すとその手のひらには白く透き通るような輝きを放つ玉が出てきた。

 「これが・・・僕の魔術の源かい?自分でいうのもなんだが綺麗なんだね。」

 「ああ。スコットのは凄い輝きだぜ!こんなのは見たことねーよ!やっぱりお前は凄かったんだよ!」

 「ハハ・・そうかい?ありがとう。タクミは本当に優しいね。」

 スコットはそういうと安堵の表情を浮かべ目を閉じた。

 「本当の事だぜ!?っておい!スコット!どうしたんだ!?」

 「タクミ・・・最後に君と出会えて良かったよ。」

 「最後とか言うなよ!・・・おい!スコット!目を開けろって!」

 スコットの体を揺さぶるタクミ。しかしスコットが目を開けることはなかった。

 「嘘だろ?なぁ!?スコット!目を・・・目を開けてくれよ!なぁ!スコットォーーーー!!」

 タクミの悲しみの叫びが暗い路地に響き渡った。


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