無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。

高田タカシ

三章 18 『戦う理由』


 「はあ・・はあ・・・」

 疲労から地面に仰向けに倒れるスコット。

 「スコット大丈夫か!?」

 仰向けに寝ているスコットに近寄るタクミ。

 「いや・・・大丈夫だよ。ただ魔力がだいぶ消費したみたいで、せっかくタクミが修行してくれているというのにすまないね。」

 「そんなに落ち込むなって。俺も初めはスコットと同じようにすぐヘトヘトになって倒れてたんだからな。まあ少し休憩するか!」

 仰向けのスコットの横に座るタクミ。

 「それにしてもなんでスコットの事を認めてくれないんだろうな・・・」

 「え?僕の降魔術のことかい?」

 「ああ。スコットは良い奴だし、こんなに一生懸命なのにそれでも認めないなんてよっぽど偏屈な奴に当たったんじゃないか?」

 「ハハハ。そんなことはないさ・・・。僕はまだまだ未熟で本当なら皇帝なんて立場に相応しい人間ではないんだ。僕のような人間が本当にこの国を治められるか不安でしかないんだ。」

 空を見つめ弱気な表情を見せるスコット。

 「スコット・・・」

 「すまない。僕としたことがつい弱音を吐いてしまった。これから国を治めようとする人間として許されるような発言ではなかったね。・・・さっ!タクミ!修行の続きをしようか!」

 ゆっくり起き上がるスコット。

 「え、ああ。大丈夫か?無理はするなよ?」

 「大丈夫だよ。僕に弱音を吐く暇もないくらい鍛えてくれ!」

 何か見えないものを振り払うかのようにタクミに懇願するスコット。

 「・・・わかったよ。いくぜ!」 

 タクミも少なくとも何かを感じ取りこれに応じた。

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 「・・・もう今日はここでやめとこう。」

 「はあ・・はあ・・僕はまだまだ大丈夫だよ!」

 「嘘つくなって。もうスコットの魔力が尽きちまってんだからこれ以上しても修行の意味がないからな。体を休めるのも大事なことなんだから続きはまた明日にしようぜ。」

 「まったく情けないな、僕は・・」

 再び疲労から地面に倒れこんだスコット。

 「おいおい大丈夫かよ?自分で起き上れるか?」

 「まだすぐには無理そうだ。すまないがしばらく一人にしてくれないか?」

 「俺はスコットの護衛だからな。こんなヘトヘトな状態のスコットを一人っきりには出来ないよ。」

 「・・・それもそうだね。」

 「なあスコット。何をそんなに焦ってるんだ?スコットは十分に頑張ってると俺は思うぞ?」

 「ハハハ。頑張るだけじゃダメなんだよ。結果を残せなければそれまでの過程なんて何もなかったも同然だと言われる。僕は父にそう教わり育ってきたんだ。」

 「父ってことは前の皇帝か?」

 「そうだよ。父はとても厳格な人だったよ。まさに皇帝としとて、人の上に立つに相応しい人だったと息子の僕も思っていた。そんな父がまさかあんな形でこの世を去ることになるとは思いもしなかったよ。そして母はとても優しい人だった。母は父とはまさに正反対というか怒ることなんて一度もなく常に笑顔で誰に対しても差別することなく接する人だったよ。」

 「スコットの両親は良い人たちだったんだな。」

 「そうだね。僕は父の事も母の事も大好きだったよ。だからこそあの時何もできなかった自分が不甲斐なくて、情けなくてたまらないんだ。もしもあの時、僕に力があれば二人を護ることが出来たかもしれなかったんだ。・・・でも実際僕は言われるがまま逃げることしか出来なかった。僕は父と母を見捨てて逃げてしまったんだ!」

 スコットは仰向けのままで右腕で両目を隠すようにしていた。タクミは何も言わず黙って話を聞いていた。

 「だから僕は一刻も早く強くなりたいんだ。あの時何も出来なかった自分が許せないんだ!もう二度とあんなことを繰り返さないためにも弱い自分を変えなければいけないんだ!」

 「そうか・・・。スコットにはスコットの戦う理由があるんだな。悪かったな。」

 「いやタクミが謝ることはないさ。僕のわがままに付き合ってくれて感謝しているよ。」

 「俺に出来ることは全力で協力するよ。ただ休むのも大事なことだからな続きはまた明日にしような。疲れて歩けないだろ?俺が部屋まで連れて行ってやるよ。」

 タクミが横になっているスコットに手を差し伸べた。

 「すまない。助かるよ。」

 差し伸べられた手を握り立ち上がるスコット。

 タクミの背に抱えられてウインズの屋敷に戻った。

 屋敷に戻り入浴と食事を済ませて寝室に戻った二人。

 「今日はありがとう。タクミに話したらなんだか気持ちが楽になった気がするよ。」

 暗い寝室でスコットがタクミに言った。

 「そっか。俺でいいなら弱音でも愚痴でもなんでも聞いてやるよ。」

 「ハハハ。本当タクミに会えてよかったよ。」

 「な、なんだよ急に?」

 「いやなんでもないんだ。では明日も頼むよ。おやすみ。」

 「なんか気になるだろ・・・まったく。明日も厳しく行くからなしっかり休んどけよ。おやすみ。」

  

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