無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。

高田タカシ

二章 10 『初任務』


 部屋に通されたタクミとジュエル。

 「来たか・・。」

 二人を見てクリウスが口を開く。

 「魔法騎士団長がいらっしゃるとは。今回のことについてご説明していただけるんでしょうか?」

 ジュエルが少し挑発的ともとれる感じで質問した。

 「あぁ、もちろんそのつもりだとも。ウインズ頼む。」

 「かしこまりました。では私の方から説明させてもいらいます。さて・・」

 クリウスに頼まれてウインズがタクミとジュエルに向かって話しはじめた。

 「二人は今回の試験の発表に自分の番号がなかったことが不満なのだろう?」

 「そうだ。」

 「おう。」

 タクミとジュエルが同時に答える。

 「だろうね。まずは早まらないで欲しいのだが二人は魔法騎士団に入団してもらう。つまり合格しているということだ。」

 「なら、なんで俺らの番号が・・」

 タクミの質問を途中で左手で制止するウインズ。

 「君たちは、自分たちでもわかっているだろうが、今回の試験で特に良い成績を残した実践任務では狂魔六将との戦いも経験している。なので普通は一般騎士として入団するのだが、君たち二人は特例として遊撃騎士として入団してもらうことになった。」

 「へぇ・・。」

 「な・・・遊撃・騎士?」

 すぐに事態を理解したかのようなジュエルとまったく呑み込めていないタクミ。

 「つまり簡単にいえば、入団と同時に役職がつくということだよ。わかったかいタクミ?」

 「まぁ・・その遊撃騎士っていうのがなんなのかはよくわかんねーけど、とりあえずは合格したってことでいいんだよな?」

 「あぁ、そうだよ。あらためておめでとう二人とも。」

 「良かったぁー!!・・でもならなんであそこで発表しなかったんだ?」

 「やれやれ君という人は・・・」

 タクミの様子に呆れた様子のジュエル。

 「なんだよ?お前はわかってるのかよ!?」

 「ふぅ・・いいかい?入団していきなり遊撃騎士なんてのは今までにも前例がないんだよ。遊撃騎士というのは部隊長よりも格上になる存在だ。それを前例もなくいきなり二人というのはあそこで発表すれば混乱が起きかねない・・だから僕らはこうして別室に呼ばれて説明を受けているわけだよ。そうですよね?ウインズ総務長?」

 「その通りだ。ジュエル。いいかいタクミ?遊撃騎士というのは主に敵に対して一人でも十分に戦える実力がある者がなるんだよ。そして戦場では戦いの要として行動してもらうことも多い。つまり責任重大ということだ。そんな遊撃騎士に新人である二人をいきなり任命するのは反対するものも多い。なのでこのことはここにいる者しか知らない。二人もこのことは口外しないでくれ。」

 「あぁ、なるほど。まぁなんとなくわかったよ。それで俺らはこれからどうすればいいんだ?」

 「君たちは、まずは小隊長として入団してもらうこととする。そしてさっそくだが任務についてもらうことになる。その説明はドズールがするよ。」

 「おう!俺からあとは説明しよう!ジュエルにはある護衛任務についてもらう。これについてあとで詳しく説明する。そしてタクミは部隊を作りウルガンドという都市に出向いてもらう。このウルガンドは最近邪神教徒の動きが活発になっているという報告がある。なのでこれを調査に行ってほしい。こちらも詳しい任務内容は後から説明する。わかったか?」

 「わかったよ。」

 「了解した。」

 またも二人が同時に返事をした。

 「よろしい!では二人ともさっきの部屋に戻ってくれ。」

 二人はドズールに連れられ部屋を出た。クリウスは終始目をつぶったままで特に何も言わなかった。

 最初の部屋に戻るとレミが駆け寄ってきた。服は魔法騎士団の制服に着替えていた。

 「お帰り二人とも!どうだったの!?」

 「あぁ。とりあえずは二人とも無事入団出来るみたいだ。だから安心してくれ。」

 「そっか!良かったぁ!まぁ二人が落ちてるわけはないと思ったけどね!」

 「さぁ、立ち話もほどほどにして皆席に着くんだ。」

 後ろにいたドズールが急かしてきた。中に入り席に着くタクミ。

 落ちた者は帰ったようで人数は8人になっていた。タクミ、ジュエル、レミ、シュウ、ジークと他の3人がいた。3人は名前は知らないが一人はツンツン頭の少年ですこし悪ガキっぽい容姿をしている。もう一人は青いセミロングの若い女性でおっとりとした感じがした。最後の一人はなんだか日本の侍のような恰好をしている男だった。腰には刀のようなものを帯刀している。年齢は20代といった感じだった。

 全員が席に着くとドズールが話を始める。

 「さて今ここにいる者が今回の入団試験を合格したものだ!あらためておめでとうと言っておこう!だがさっきもいったようにここからが本番だと思ってほしい!任務は常に死と隣り合わせだと覚悟してほしい。異論はないな?」

 全員が無言の返事をする。

 「うむ。ではここの者すべてを晴れて魔法騎士団として任命する!今からはさきほど説明を受けたように行動してくれ!」

 ドズールの合図でみんながそれぞれ動き出す。その様子を見てタクミが焦りだす。

 「え?ちょっと・・説明って具体的になにしたらいいんだ俺は?」

 「タクミはここに残ってていいぞ!あとレミとシュウとジークもな!」

 部屋にはドズールとタクミ、レミ、シュウ、ジークが残った。

 「レミたちはなんか聞いてるのか?」

 タクミがレミに耳打ちする。

 「うん。いまからタクミ達と一緒に任務についてもらうって言われたよ。」

 「そうか・・・」

 少しすると部屋に魔法騎士団の制服を着た男女が二人入ってきた。

 「よし、来た。では全員そろったので今から任務について説明する。ここにいる俺を含めた7人でウルガンドに調査に行く!調査内容は邪神教徒とウルガンドの情勢調査だ!この二人を紹介しよう。」

 ドズールがそう言うとまずは黒髪でセンター分けの男の方が口を開いた。

 「私は第十一分隊所属のアトスだ。よろしく頼む新人諸君!」

 明るく挨拶するアトス。声もハキハキしていて、まさに軍人と言った感じだ。年はタクミと同じくらいと言った感じだ。次に女性が口を開けた。

 「同じく第十一分隊所属のエリーよ。よろしくね皆さん。」

 右手でその紫の長い髪を耳からかき上げる女性。こちらは透き通った声をしていた。スタイルも制服の上からわかるくらい良かった。女性的にかなり魅力的と言った感じがした。おもわず見とれるタクミ、すると右足に痛みが走った。足を確認するとレミが踏みつけていた。

 「いててっ!なにするんだよ!?」

 「別に!なんかだらしない顔してたからなんとなくね!」

 ちょっと不機嫌そうなレミ。プイッと巧から顔を背ける。そんな中ドズールが話しをする。

 「ゴホンッ!・・二人とも魔法騎士団の団員として優秀だから安心してくれていいぞ。今回は俺が総隊長として、アトスとエリーが補佐として、そしてタクミ達新人4人はタクミをリーダーとした小隊として任務にあたってもらう!なにか質問はあるか?」

 特に誰も何も聞かなかった。

「うむ。ではさっそくだがウルガンドに向けて出発する!皆グリドラの畜舎へと移動してくれ!」

 タクミ達は再びグリドラに乗った。今日のは昨日より一回り大きい荷台で全員が一台に乗って移動することになった。

 タクミ達を乗せたグリドラは再びウルガンドを目指してアーバンカルを後にした。森の道中アトスがタクミに話しかけてきた。

 「君がタクミ君かい?なんでも入団試験で狂魔六将と戦ったそうだね。それに昨日の闘技場での魔法も見ていたよ。君には期待してるから頼んだよ。」

 「はぁ。まぁ頑張ります。アトスさんは魔法騎士団に入団してどのくらいなんですか?」

 「僕かい?僕は今4年目だよ。こっちのエリーは3年目だ。僕たちは実戦経験も何度もしているから頼りにしてくれていいよ!」

 アトスが自信満々に親指をタクミに立てた。エリーも微笑んでいた。やっぱり可愛い。またも目を奪われていると再び足に痛みが走った。またもレミが踏みつけている。

 「っつう!だからなんなんだよ!?さっきから!」

 「べっつにー!なんかムカついたからだよ!ふんっ。」

 またも不機嫌そうなレミ。そんなレミを見てオロオロするシュウ。ジークは相変わらず我関せずと言った感じで目をつぶっている。

 「ハハハ。君たちは仲が良いんだな。その勢いで任務の方も頼んだよ。」

 アトスが笑顔でタクミの肩を叩く。そうこうしているうちにグリドラは森を抜け荒野を走っていた。

 こうして穏やかな雰囲気でタクミの魔法騎士団としての初任務が始まった。

 

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