無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。
一章 11 『闇夜の来客』
三人は繁華街から少し離れたところに宿を確保した。
もう日も沈み辺りは暗くなっていた。馬車を宿に止めて、今度はマルクも連れて昼食を食べたシャンバルをまた訪れた。
どうやらローゼはこのシャンバルの熱狂的なファンらしい。だがタクミもその気持ちがわからなくもなかった。
メニューも豊富でそのどれもが絶品なのである。晩御飯を食べ終わる時にはすっかりタクミもファンになっていた。
食事を終えた三人は宿へと戻った。
ローゼは別室で、タクミとマルクが一緒の部屋に寝ることにした。
タクミが部屋に入るとベッドが二つあり壁に掛けられたランタンの中に光る石のようなものが入ってそれが部屋の中を照らしていた。やはり電化製品の類はないみたいだ。
ベッドに腰をおろすタクミ。部屋にはマルクと二人きりだ。一番初めは怒鳴られたけれどもローゼとは違い、基本的には口数少ない人のようだ。
部屋に沈黙が続く。
「あの・・マルクさん」
気まずさに耐えかねたタクミが口をひらく。
「その・・食事から宿までなにからなにまで助けてもらってホントありがとうございます。ただなんで見ず知らずの俺にローゼはここまでしてくれるんでしょうか?」
「ローゼお嬢様は本当に心優しいお方なのですよ。ただ困っている人を見過ごすことが出来ないんです。なのでタクミさんをお助けしたことに理由なんてないのですよ」
マルクは優しく微笑み答えた。その顔からどれだけマルクがローゼを慕したっているのかが伝わってきた。
「はぁ・・そんなもんなんですか」
「えぇ。なのでタクミさんがそこまで気になさる必要はありませんよ。では明日も早いのでそろそろ寝ましょうか」
マルクは立ち上がり光る石のランタンに手をかざした。先程まで部屋中を照らしていた明かりが一瞬で消えた。
「マルクさんも魔法が使えるのですか?」
「いえいえ、これは人の動きにこの魔石が反応しているだけなのですよ。私自身は魔法は一切使えません。ではおやすみなさい」
そう言うとマルクはベッドに横になった。
タクミも横になり目を閉じた。
・・・・・・・・・・・あちぃ!
1,2時間ほど寝入った後に暑苦しさで目を覚ましたタクミ。
エアコンのある生活に慣れていた現代っ子のタクミには少々熟睡するには厳しい環境であった。
体を起こしマルクの方を見た。寝息をたてている。どうやらマルクにはどうってことないようだった。
タクミは少しでも涼しくしようと部屋の窓を開けた。
二階から外を見ると昼間とは違い外に人は誰もいなかった。心地良い風が部屋に入りこんできた。
「ふぅ・・これでだいぶ寝やすくなっただろ。さて・・・」
タクミがまたベッドに戻ろうとした時、背中にまた誰かに見られている気配を感じた。昼間にシャンバルを出たときに感じたものと同じように嫌な感覚だ。
視線に気づき勢いよく振り返り窓から外を見渡すタクミ。
「くそっ!昼間の時といい、なんなんだよ?この気持ち悪い感じは!?」
今度こそ視線の正体を暴あばこうと隅々すみずみまで細かく探す。
ふと物陰に何か動くのを見つけた。正体を見極めようとさらに目を凝らした。
そこには夜だが何か黒いマントのようなものを被っている何かがいた。
雰囲気から察するに、こちらを見ているようだった。
あいつだっ!!
直感的にそう感じたタクミは正体を突き止める為に寝室を飛び出した。
宿の外に出て先程の人影のあった方を見て叫んだ。
「おいっ!お前!なんなんだ!?」
タクミの声を聞き、影がふっと建物の方へ消えた。
「待て!おいっ!」
影の後を追う。
影が消えた曲がり角に到着し、消えていったであろう方角を見たがそこには誰もいなかった。
「くそっ、どこにいきやがったんだ?」
ふと視線をおろすと、そこにはまだ出来たばかりと思われる足跡が奥の方へと続いていた。
「ん?これ?さっきの奴のか?これを追いかけて行けばなにかわかるかも・・・」
一瞬、ローゼ達にも声をかけようか迷ったが一人で行くことにした。呼びに戻っている間に見失うかもしれないし、正直これ以上迷惑をかけたくなかった。
街灯もない道を月と星の明かりを頼りに足跡の続く方へ走りだした。
しばらく走っていくと行き止まりの細い路地へとたどり着いた。そこで足跡が急に消えてしまったのであった。
「はぁ・・はぁ・・ちくしょう!どこに行きやがったんだ!」
タクミが来た道以外は高い塀に囲まれていた。何か手掛かりを探そうとキョロキョロする。しかし何も見つからなかった。
「ったく・・・なんだよまったく。気味悪いな」
影の捜索をあきらめ来た道を戻ろうと振り返るタクミ。
「待て・・・」
「・・・っ!?」
後ろの方からしゃがれた低い声が聞こえてきた。
慌てて声のする方へ振り返るタクミ。そこにはさっきまで何もなかった塀の前に黒いマントに身を包んでいる何者かがいた。
正直影の正体と対峙してビビってしまったタクミだが、なんとか強気に出ることにした。
「な・・なんなんだ!お前は!?俺に何の用なんだよ!?」
ちょっと声がうわずってしまった。
「・・・お前何者だ。どこから来た?」
「あぁ!?俺は普通の人間だよ!どこからってそんなもんお前には関係ねーだろ!?お前こそ何者だよ!?」
「お前からは何かこの世界のものとは違うものを感じるぞ・・・その理由を教えてもらおうか?」
タクミの質問は見事にスルーされた。
「理由とかそんなもん知るか!むしろ俺が教えてほしいくらいなんだよ!そんなくだらない用事ならもう俺にまとわりつくなよ!もう俺は帰るからな!」
正直こんなところで訳の分かんない奴と二人っきりの状況から一刻でも早く逃げ出したかったので強引にでも帰ろうとして振り返った。
そして振り返ると同時に全力で走りだし来た道を戻った。
もう日も沈み辺りは暗くなっていた。馬車を宿に止めて、今度はマルクも連れて昼食を食べたシャンバルをまた訪れた。
どうやらローゼはこのシャンバルの熱狂的なファンらしい。だがタクミもその気持ちがわからなくもなかった。
メニューも豊富でそのどれもが絶品なのである。晩御飯を食べ終わる時にはすっかりタクミもファンになっていた。
食事を終えた三人は宿へと戻った。
ローゼは別室で、タクミとマルクが一緒の部屋に寝ることにした。
タクミが部屋に入るとベッドが二つあり壁に掛けられたランタンの中に光る石のようなものが入ってそれが部屋の中を照らしていた。やはり電化製品の類はないみたいだ。
ベッドに腰をおろすタクミ。部屋にはマルクと二人きりだ。一番初めは怒鳴られたけれどもローゼとは違い、基本的には口数少ない人のようだ。
部屋に沈黙が続く。
「あの・・マルクさん」
気まずさに耐えかねたタクミが口をひらく。
「その・・食事から宿までなにからなにまで助けてもらってホントありがとうございます。ただなんで見ず知らずの俺にローゼはここまでしてくれるんでしょうか?」
「ローゼお嬢様は本当に心優しいお方なのですよ。ただ困っている人を見過ごすことが出来ないんです。なのでタクミさんをお助けしたことに理由なんてないのですよ」
マルクは優しく微笑み答えた。その顔からどれだけマルクがローゼを慕したっているのかが伝わってきた。
「はぁ・・そんなもんなんですか」
「えぇ。なのでタクミさんがそこまで気になさる必要はありませんよ。では明日も早いのでそろそろ寝ましょうか」
マルクは立ち上がり光る石のランタンに手をかざした。先程まで部屋中を照らしていた明かりが一瞬で消えた。
「マルクさんも魔法が使えるのですか?」
「いえいえ、これは人の動きにこの魔石が反応しているだけなのですよ。私自身は魔法は一切使えません。ではおやすみなさい」
そう言うとマルクはベッドに横になった。
タクミも横になり目を閉じた。
・・・・・・・・・・・あちぃ!
1,2時間ほど寝入った後に暑苦しさで目を覚ましたタクミ。
エアコンのある生活に慣れていた現代っ子のタクミには少々熟睡するには厳しい環境であった。
体を起こしマルクの方を見た。寝息をたてている。どうやらマルクにはどうってことないようだった。
タクミは少しでも涼しくしようと部屋の窓を開けた。
二階から外を見ると昼間とは違い外に人は誰もいなかった。心地良い風が部屋に入りこんできた。
「ふぅ・・これでだいぶ寝やすくなっただろ。さて・・・」
タクミがまたベッドに戻ろうとした時、背中にまた誰かに見られている気配を感じた。昼間にシャンバルを出たときに感じたものと同じように嫌な感覚だ。
視線に気づき勢いよく振り返り窓から外を見渡すタクミ。
「くそっ!昼間の時といい、なんなんだよ?この気持ち悪い感じは!?」
今度こそ視線の正体を暴あばこうと隅々すみずみまで細かく探す。
ふと物陰に何か動くのを見つけた。正体を見極めようとさらに目を凝らした。
そこには夜だが何か黒いマントのようなものを被っている何かがいた。
雰囲気から察するに、こちらを見ているようだった。
あいつだっ!!
直感的にそう感じたタクミは正体を突き止める為に寝室を飛び出した。
宿の外に出て先程の人影のあった方を見て叫んだ。
「おいっ!お前!なんなんだ!?」
タクミの声を聞き、影がふっと建物の方へ消えた。
「待て!おいっ!」
影の後を追う。
影が消えた曲がり角に到着し、消えていったであろう方角を見たがそこには誰もいなかった。
「くそっ、どこにいきやがったんだ?」
ふと視線をおろすと、そこにはまだ出来たばかりと思われる足跡が奥の方へと続いていた。
「ん?これ?さっきの奴のか?これを追いかけて行けばなにかわかるかも・・・」
一瞬、ローゼ達にも声をかけようか迷ったが一人で行くことにした。呼びに戻っている間に見失うかもしれないし、正直これ以上迷惑をかけたくなかった。
街灯もない道を月と星の明かりを頼りに足跡の続く方へ走りだした。
しばらく走っていくと行き止まりの細い路地へとたどり着いた。そこで足跡が急に消えてしまったのであった。
「はぁ・・はぁ・・ちくしょう!どこに行きやがったんだ!」
タクミが来た道以外は高い塀に囲まれていた。何か手掛かりを探そうとキョロキョロする。しかし何も見つからなかった。
「ったく・・・なんだよまったく。気味悪いな」
影の捜索をあきらめ来た道を戻ろうと振り返るタクミ。
「待て・・・」
「・・・っ!?」
後ろの方からしゃがれた低い声が聞こえてきた。
慌てて声のする方へ振り返るタクミ。そこにはさっきまで何もなかった塀の前に黒いマントに身を包んでいる何者かがいた。
正直影の正体と対峙してビビってしまったタクミだが、なんとか強気に出ることにした。
「な・・なんなんだ!お前は!?俺に何の用なんだよ!?」
ちょっと声がうわずってしまった。
「・・・お前何者だ。どこから来た?」
「あぁ!?俺は普通の人間だよ!どこからってそんなもんお前には関係ねーだろ!?お前こそ何者だよ!?」
「お前からは何かこの世界のものとは違うものを感じるぞ・・・その理由を教えてもらおうか?」
タクミの質問は見事にスルーされた。
「理由とかそんなもん知るか!むしろ俺が教えてほしいくらいなんだよ!そんなくだらない用事ならもう俺にまとわりつくなよ!もう俺は帰るからな!」
正直こんなところで訳の分かんない奴と二人っきりの状況から一刻でも早く逃げ出したかったので強引にでも帰ろうとして振り返った。
そして振り返ると同時に全力で走りだし来た道を戻った。
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