無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。

高田タカシ

一章 8 『巨大都市』

 初めにタクミがこの世界に来た時に目に入ってきた建物はどうやらこのアーバンカルの外壁だったようだった。

 「でけぇ・・」

 おもわずタクミの口から驚きの声がこぼれた。遠くでみるとそうでもなかったが近くで見ると圧巻である。

 「そうでしょうね!このアーバンカルはこの世界でも有数の巨大都市なのよ。この外壁の高さもすごいけど中の広さもそれは相当なものなのよ!」

 なぜかローゼが自慢げに解説してきた。

 「ほえー。それでローゼはこの町に何しに来たんだよ?」

 「私?私はちょっとある人に届け物を渡しに来たのよ。」

 そういうローゼの目線の先には、いかにもそれらしき黒い箱があった。

 「それでタクミはこれからどうするのよ?」

 「俺か?そうだなー・・・とりあえず・・・」

 ・・・・グーーーーー

 タクミの空腹が限界を迎えそうな音が荷台の中に鳴り響く。

 「アッハハハ!!なるほどね。そういえば昨日から何も食べてないって言ってたわね。いいわ!まずは食事でもしましょうか!マルク!あそこに行きましょう!」

 ローゼは笑い過ぎでその目にうっすら涙をうかべながら外のマルクに声をかけた。

 「了解しました。」

 カーテン越しにマルクの返事が聞こえる。あそこで伝わるってことは行きつけの店か何かか?

 「マジか!?それは助かるぜ!・・あっ・・でも俺この世界の金とか持ってないぜ?」

 マルクの返事が聞こえ一瞬喜びを全開に表現したタクミだが、自分の置かれている状況を思い出し、申し訳なさそうにローゼに聞いた。

 「わかってるわよ!今回は特別に私が御馳走してあげるからそんな心配無用よ!」

 「えぇ!?いいのかよ!?なんでそんなさっき会ったばかりの、しかも異世界から来たなんて言ってる怪しい男になんでそこまでしてくれるんだ?」

 ローゼのあまりにも純粋な優しさが逆にタクミの不安を煽る。

 「別にそのくらいかまわないわよ。別にあなたからはそこまで悪い気みたいなものは感じないし、それに異世界から来た人間なんて初めてだからもっとタクミには聞きたいこともあるしね。」

 どうやら魔法使いにもなると相手がどんな人間なのか気でわかるらしい・・

 「はー・・そんなもんなのかねぇ・・・。まあ!ぶっちゃけ食事を恵んでもらえるなんて今の俺にはこの上ないありがたいことだから、ここは素直にローゼの優しさに甘えさせてもらうとするよ。ありがとよ。」

 「いいえ。どういたしまして!」

 ローゼはまたニコッと白い歯を見せて微笑んだ。

 「着きましたぞ。ローゼお嬢様。」

 外からマルクの声が聞こえてきた、同時に馬車が止まった。どうやらそうこうしている間に到着したようだった。

 「ありがとうマルク。さぁ!着いたわよ、タクミ!」

 そういうとローゼは勢いよくタクミの腕をつかみ外に連れ出した。

 「え?あ?おい!ちょっ・・」

 見かけによらず力強いローゼに引っ張られるがままタクミも外に出た。

 そこには建物はまるで西洋風な建物が並んでいた。どうやら繁華街の入り口のようだった。
 通行人もかなりの人数が往来していた。

 「それでは私は馬車を近くに止めて待っていますのでごゆっくりとどうぞ」

 そういうとマルクは馬車を走らせ行ってしまった。

 ・・・・ん?

 タクミはなんだか周りの視線を集めているような気がした。

 やはりこの服装はこの世界では珍しいようだった。周りには同じような格好をしている人間は誰もいなかった。

 「おい・・なんだか俺ら注目されてないか?」

 タクミはローゼに耳打ちした。

 「そうね。やっぱりあなたのその服装は少し目立つものね。食事の前にとりあえず着替えましょうか」

 「そうだな」

 今にも空腹で倒れそうなタクミだったが、ここはおとなしくローゼの言ううことを聞くことにした。

 タクミの性格上まわりの注目を浴びることには慣れていなかった。

 ローゼはタクミを近くの服屋へと案内した。 店の外には鎧のようなものも展示してあった。 

 「とりあえずこのお店の中から適当に選んでちょうだい。なるべく早くしてね。あ、もちろんお代は私が払ってあげるから。」

 そういいながらローゼはタクミを店の中に腕をつかみ引き込んだ。

 店の中には鎧やローブ、いかにも魔法使いがかぶりそうなとんがり帽子などかなりの種類の服が用意されていた。

 さすがこんだけ栄えてる通りに店を出しているだけあって品ぞろえがすすごい。

 タクミははじめて見る異世界の商店に関心していた。

 だがローゼから早くしてと催促されている以上時間をかけるわけにもいかず、なにより早く自身の空腹を満たしたくてしょうがなかったので適当に身動きの動きやすそうな生地で作られている赤を基調としていて二本白いラインが横に入っているTシャツのようなものと黒いズボンをささっとチョイスした。

 お?意外と似合うんじゃないか?

 異世界の格好になって試着室の中の鏡の前に立って自分の様子を確認したが、不思議とそこまで違和感は感じなかった。

 試着室のカーテンを開けローゼに着替えた格好を見せた。

 「あら、似合うじゃない?その色を選ぶなんてセンスいいわね。」

 どうやら赤色の服を選んだ所が気に入ったらしい。

 「店員さーん!この男が着てる服買うわ。あ、このまま着て行くけどいいかしら?そう、じゃあ2400コルね。ありがとう!」

 そういいながらローゼは勘定を済ませていた。

 どうやらこの世界の通貨はコルと言うらしい。ただこの服で2400コルというのが高いのかどうかまではわからなかった。

 二人は店を出た。

 「悪いな。こんな服まで買ってもらっちまって・・・」

 「別にいいわよ。あのままの格好でいたら目立って困っちゃうし、そんなに高いものじゃなかったし気にしないで。さっ、それより次は食事ね!行きましょ!」

 そう笑顔でいうとローゼはマイペースに次の目的地に向かって歩き出した。それをタクミはただ追いかけた。

 そこから少し歩くと食欲をそそる匂いを放つ店に到着した。

 「着いたわ。ここよ!ここが私のお勧めのお店よ。」

 ローゼが足を止め振り返り左手を掲げた。そこには

 ---アーバンカルで一番美味い店 シャンバル----

でかでかと書かれた看板が目に入ってきた。

 「アーバンカルで一番ってこんだけデカい町でたいそうなうたい文句だな、おい」

 あまりにもストレートなキャッチコピーにタクミは疑いの眼差しを向けた。

 「そんな顔しなくても大丈夫よ。ここの味は私が保証するんだから。この看板に恥じない料理が出てくるんだから覚悟しなさいよ?今は幸運にも並ばなくてもいいみたいだし。さぁ、入るわよ。」

 ローゼは店の扉を開け入っていった。あとをタクミも追った。

 店の中はお客であふれていた。確かにこの盛況ぶりを見ればここが人気店なのは一目瞭然であった。

 テーブルに座りメニューに目を通す。だが文字は読めるのだが料理名はどれも見たことないもので決めかねていた。

 そんなタクミの様子を見かねたローゼが

 「とりあえず私がおススメ頼んであげるから食べてみなさいよ。」

 そう言いタクミからメニューを取り上げ店員を呼び注文を済ませた。

 せっかちな奴だなー。

 そう内心思ったタクミだがここは御馳走される身なのでおとなしく従うことにした。

 10分もしないうちに何種類かの料理がテーブルに並べられた。

 どれも見たことない料理だったが匂いはたまらなく良いものだった。

 「おぉー!!うまそうだな!いただきます!」

 たまらずタクミは料理にかぶりついた。

 「うめぇーーーー!!」

 料理を口にした感想を率直に言葉にした。

 「喜んでもらえたようでよかったわ。遠慮せずにドンドン食べていいからね。」

 そんなタクミの様子を見てローゼも満足そうな様子だった。

 こうしてタクミは異世界に来てから初めての食事をすることが出来た。



 

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