ドMな英雄候補者は、ダメージを感じづらい。

暗喩

第33話 いい一日にだったぞ!


ーーーーーー

「はあ......。俺はもう無理だ......」

  美優紀をナデナデしてからというもの、さらに有頂天になった生徒達による熱気からやっと解放された俺は、まるで軟体生物にでもなったかのように部屋のベッドに腰を落とした。

  もう時刻は十二時を回っている。明日は再び、授業が始まる。

  そんな状況にも関わらず、まだ外からは笑い声が聞こえる。

「明日は通常授業だって分かってるのかよ......」

  すっかりと酔いが覚めてしまった俺は、小さくため息をつくとそんな事を呟いた。

「何を言っておるのじゃ......。こんなに楽しい時間は久しぶりだぞ......」

  顔を真っ赤にして俺の膝に頭を置くピピィは、そう返答すると幸せそうに目を瞑っていた。

  そんな彼女の心の声を聴くと、俺は少しだけ安心させられた。

  ずっと寂しかったピピィを無理やり連れて来て本当に良かったと思えたから。

  正直なところ、俺は彼女に迷惑をかけているのでは無いかと、ずっと不安に思っていたのだ。

  いくら、ピピィ自身が俺といる事が嬉しいと言ってくれていても、やはり違う種族の中にたった一人で飛び込むには相当の勇気が必要だったと思う。

  ましてやどんなに否定した所でやはりこれから先に戦う相手は同族である。

  彼女自身がその状況を理解しているのもよく分かる。

  だからこそ、せめて俺といる時だけでも彼女には自然な笑顔を見せて欲しいと思っていた。

  そして、今この瞬間、俺が不安に感じていた事は、単に考え過ぎだったのだと理解した。


  何故なら、今俺の元で寝息を立てる彼女の表情は、世界中の誰よりも幸せそうであったのだから......。


  しかし、それにしても一つ言いたい。

  ピピィの頭の両脇から生える鋭利なツノが、寝返りを打つ度に俺のレオンに突き刺さるのだ。

  痛みは感じないが、ナチュラルに調教されている気持ちにもさせられる。
  むしろ、俺のツノもヘラクレスオオカブトのそれの様に逞しくなってしまうかもしれないのだ。

  下手をすると、明日の朝になったら俺は女として生きていく事を強いられてしまう可能性すらある。
  それは嫌だ、絶対に。

  だが、今ある快楽に抗えないのも事実。

  即ち、突然に訪れたラッキースケベ。
  平和な表情と裏腹に繰り出されるクリティカルヒットのギャップがたまらなく良い。

  俺はそんな事を考えているうちに震えだした。


  ピピィよ、お前に俺を倒せるかな。
  ある意味、今の俺は魔王なんかよりもよっぽど獰猛だぞ......。

  とりあえず、まずはサーヴァントであるレオンと戦うが良い......。

  幸いにも美優紀はまだ馬鹿騒ぎを繰り返す生徒と共にはしゃぎ倒している。チャンス。


  俺はそんな風に十八禁どころでは無い程、閲覧注意なスマイルをしながらピピィを見つめていた。


  もっと寝返りを打つが良い。
  安眠するが良い。俺と言う名のクイーンベッドの上でな.....。

  そう考えれば考える程に、意図した通りピピィのツノは俺のレオンを抉っていった。

 
  かい、かん......。


  俺は悦に浸りながら純粋無垢な合法ロリに目を向ける。


ーーだが、そんな夢見心地な展開を妨げるようにして、勢い良く入り口のドアが開くと、

「たっだいま〜!! 」

と、アホ丸出しな声が部屋全体に響き渡ったのである。

  慌ててそちらの方へ視線をずらすと、そこには顔を真っ赤にして満遍の笑みを見せる美優紀の姿があった。

  それと同時に、ピピィは目を覚まして体を起こしてしまったのである。

「あれ......? 気がつけば寝てしまったのじゃ......」

  俺は、最悪のタイミングで部屋へ戻って来た美優紀に、憎悪にも似た感情を覚える。


  クソ、この女、また邪魔をしやがったな......。


  そう思ったのも束の間、美優紀はフラフラと俺の方へと寄って来た。

「ふたりともぉ〜。私を置いて帰るなんて、ひどいよぉ〜」

  彼女のそんな発言を聞くと、俺はこんな事を思った。


  美優紀、どんだけ飲んだんだよ。

  お前は酒強かった筈じゃないか?


  そう思っていると、隙も与えずにその場に倒れ込みそうになる彼女。

  そんな状況に対して慌てて助けると、「お前、大丈夫か? 」と問いかけた。

  すると彼女は、俺の胸元で呂律の回らない口ぶりをしてこんな事を言い出したのである。

「だってさ、だってさ。学長がとんでもない事言い出したんだよ。戦況が変わったから、この宴会が終わったらすぐに私達『特級クラス』のみんなは至急、戦場へ送られるとか......。いきなり過ぎるよ! そんな事言われたら飲まなきゃやってらんないじゃん! 」

  美優紀がそう返答したのを聞くと、俺は先程までの快楽を忘れて真剣な表情へ変化した。

「お前今なんて......」

  だが、俺がそう問いかけたその時、美優紀は思い切り口を膨らました。


  そして、彼女はマーライオンになった。見るも鮮やかに。

  
  俺の服には生暖かい何色とも形容しがたい液体が止めどなく流れる。

  それを見て詳しい話は明日聞く事に決め、とりあえず介抱を優先する事にしたのであった。


  臭い、臭いぞ......。そんなに俺が嫌いなのか、堪らん。


  最後の最後でほんの少しだけ興奮を頂いた俺は、今日一日に満足をすると明日からの不安をとりあえず置いておいて、足早にシャワーを浴びて着替えさっさと眠りにつくのであった。

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