戦力より戦略。

haruhi8128

予定着々と

「まぁ、無理でしたと」
「失敗したんですか?」
「いや、失敗はしてないんだけど……」

 結果としては候補と思しき人物を伝えるという第一目標は十分に達成できたと言っていいだろう。
 だが、まぁ、もしかして俺のコミュ障は改善されているのでは? という淡い期待は打ち砕かれたのであった。
 伝えられたのは箇条書きのような感じで名前くらい。
 なぜ、どのように期待がかかっているのかなど屁理屈こねて考えてきていたのだが、そんなの皆気にしてなかった。
 普段から話してる奴らと考察した方が楽しいってことだな。
 さらに言えば、本人たちからの又聞きしか情報がない俺と違って本人たちの耳には入っていない情報もあるからむしろ彼らの考察の方が面白そうだった。
 流石にずっと聞いてるわけにもいかなかったからな。

「でも、そんな噂で相手方は気にするんですかね?」
「そりゃ気にするさ。本人はどうか知らないが、少なくとも陣営はな」

 政略結婚の材料にされていたご子息たちならわからんが、少なくとも陣営はチャンスが出来たと聞いたら喜ぶし、レインとプリンセを好いていた当人たちは嬉しいだろう。

「火のないところに煙は立たぬって言うしな。噂が立つからにはそれなりの根拠があると考えるだろうよ」

 そして、もし根拠がなく懐疑的だったとしても来ざるを得ない。
 自分が候補だった場合、行かなければ第二候補に権利が移る可能性があるからな。
 それをしない奴らをピックアップしておいたし。

「それで、どうしてこんなことしてるかそろそろ教えてくれてもいいんじゃないですか?」
「……レインちゃんはともかく、私も……?」

 2人には当日に城に行くことしか指示していない。

「プリンセ」
「……うん」
「レインには悪いんだが、俺はプリンセのことも好きだ」
「……うん!」

 レインも頬を膨らませてはいるが、納得はしている模様。
 俺がいない間に色々あったんだろうな。
 それでも嫉妬して欲しいというのは俺の我儘で、目の前で浮気してる俺に言えることじゃないので、そっと胸の内にしまっておく。

「でもカイルさんはぎりぎり大丈夫かもだが、お前のお父さんを説得できるとは思えない」
「……そこは、頑張るとこじゃ?」
「出来ると思うか?」

 プリンセの尻尾がくるりとはてなマークを描く。

「……無理かな?」
「だろ?」

 どうしても説得できない親というのは一定数存在するだろう。
 だが、それでみんなが諦めるのか。
 むしろ諦めない人たちの方が多いのではないか。

 で、今回はもあるのでギリギリまで伏せておきたい。

「まぁ、楽しみにしとけって。久しぶりに俺の手際を見るチャンスってことでさ」

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