戦力より戦略。

haruhi8128

56日目 過剰

「やぁやぁ、おはよう!」
「おはようございます、ハンネさん。朝ごはんはどうします?」
「もちろん、食べていくよー。おっと、これはこれはドルガバの虎族族長の奥様ではないですか」
「ハンネ様、でしたよねー? どうもー」

既に面識はあったようですね。
お母様もこっちに来てからそれなりに経っているようですし、それはそうかもしれません。

「こうして顔を合わせるのは初めてかしら?」
「そうですねぇ。なにぶん、研究室から外に出てなかったものですから……」

いや、初対面なんですか!?
ちょっと顔見知りくらいの雰囲気を感じましたけど!?

「レインちゃんがこっちにいるってことは、今日はプリンセちゃんが担当かい?」
「そうなりますね。お母様に修行の成果を見せるんだそうです」
「修行……?」

そうなりますよね?
修行ってなんだってなりますよね?
まぁ、花嫁修業という言葉はリブレさん曰くあるらしいですが。
プリンセちゃんのレベルならそれは超えてるでしょうからね。
完全に趣味の領域です。
というか、プロの領域です。

「……できた!」

キッチンの方からプリンセちゃんの声が聞こえ、お盆を頭の上に抱えたプリンセちゃんが出てきます。
あれ?

「1種類しかのってないですね?」

いっつもあのサイズのお盆には全員分のってるはずなんですけど。

「ちょっと作りすぎちゃった」
「あ、そうですよね。気合入ってたですもんね」

朝ごはんは簡単に済ませるものですから、あまり多くは作ってないとは思うんですけど……。

2往復目……。

3往復目……。

4往復目……。

5……。

いやいや!

「もうこれ以上のりませんよ!?」
「……あれ?」

作りすぎにも程があります!
家の食材どれだけ使ったんですか!?

「とりあえず、もうのってるものだけでいいですから! お母様には後で個人的に食べさせてあげてください!」
「……ん、そうだね」

まじで朝ごはんでどれだけ食べさせるつもりだったんですか?

「まぁまぁ、全部おいしそうだからいいじゃないのさ」
「じゃあハンネさんが全部処理してくれます?」
「ん? いやだけど?」
「なら適当な事言わないでください!」

既にモグモグと料理を口に運んでいるハンネさん。

「いただきます」
「……ん」
「じゃあ、いただくわね」

緊張の一瞬です。
お母様の第一声は……?

「んー! おいしー!」

おぉ。

「これもおいしいわー!」

おぉ?

「これも、これもね! さっすが我が娘! 完璧よー!」

思いっきりプリンセちゃんをギューッとするお母様。
諦めたような表情で大人しく抱かれているプリンセちゃん。
もしかして……。

「……ちょっと親バカなところが、ある」

やっぱりですか。

「でも、それならこんなに頑張らなくても良かったんじゃ?」
「……家を出て、自由にさせてもらってるから。……恩返し?」

なんといい子なのでしょう!
可愛すぎます!

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