戦力より戦略。

haruhi8128

コミュ障でごめん

「まずは」

リアーネさん以外の9人が一斉に土下座する。

「お姉ちゃんを助けていただき、ありがとうございました!」
「え、えっ!」

リアーネさんも一瞬のラグののち土下座する。

「あ、ありがとうございましたっ!」
「あ、うん」

いや、俺の反応軽っ!
自分でびっくりしたわ。

「本当にどうお礼を申し上げていいか……!」

うちに駆け込んできていた弟君がうるうるとした目でこちらを見上げてくるが、いやそれが許されるのは美少女だけだから。
需要ないから。

「もうその話は終わってるから。とりあえず全員立ってくれ」

ぞろぞろともう一度並ぶ10人。
男女比は4:6か。
まぁ、特に力仕事があるわけでもないし、そこはいいか。

「お礼と言うなら、俺が今から説明することを一考してもらえると助かる」
「なんでも言ってください!」
「いや、それじゃ困る」

キラキラした顔を一蹴する。

「今でこそ恩義に感じてもらってるが、助けられた本人以外は現場も見ていないからな。実際はたぶんそうでもないんだ。後から実はそこまで恩を感じてなかったけど流れで言っちゃいましたみたいなことを言われてもこっちが困るからな。これから少なくとも何年かは働く条件として考えて欲しい」
「ご主人様の代わりに私が説明いたします」

ドゥとトロワが俺を抱えて下がり、アンが前に出る。

「おいっ?」
「ご主人様は、例え恩人だからと言って考えることを放棄するなと言っておられます。もちろん、恩義は感じていただいてけっこうですが、それと相手の言う事を鵜呑みにするのとは話が違います。ご主人様は、私たちの会社を皆様を社会に送り出すためのステップアップの場と考えておられるのでこう言われているのです」

きつめの言葉でごまかしていた内心を暴露され、黙りこくる俺。
いや、こういう場合に俺はどうすればいいんだ?

「申し訳ありません、ご主人様。ご主人様も心証を悪くしたいわけではないようですので代弁させていただきました。ご主人様は、こう、言葉少なというか……」
「コミュ障のフォローありがとうな!」

逆に困るわ!

「まぁ、そういう訳だから、真剣に聞いてくれ」


「その仕事は、年長が難しい方だと決まっていますか?」
「? いや? 特に決めてるわけではないけど」
「なら、俺は外にしてくれませんか」
「僕もです」

説明後、なぜか男子4人がそろって外の仕事を希望した。

「その心は?」
「強くなりたいんです」



あぁー。

「屋台の護衛みたいな形でやりたいってことか」
「そうなります」

なるほど。
姉が攫われ、何も出来なかった少年たちがそう思うのもわかる。
いや、俺も精神年齢同じくらいだろうけど。

「にしては線が細いな」

細マッチョとかいう次元ではなく、シンプルにひょろい。
仕方ないと言えば仕方ないのだが。

「とりあえず、鍛えてから考えろ。働きに来ている間は食事保証するから」
「はい……」

俺の実体験だが、何はともあれ筋肉が無ければ体は動かないのだ。
無理に膨らませる意味はないが、ある程度なければ話にならない。
とりあえず、一通り筋トレだけ教えることにするか。

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