戦力より戦略。

haruhi8128

短文の手紙って怖いよね

とりあえずその問題は先送りにして目の前の経営の問題を片付けることにした。
訪れたのはある孤児院である。
どうせ教えるなら吸収が早く、将来性がある子供が良いのではないかと思い立ったからだ。
孤児院の経営が厳しいのはどこの世界でも同じらしいし、孤児院側もお金がもらえてWin-Winだと思ったのだが。

「話すことはありません! 帰ってください!!」

バタンッ!!

孤児院を経営しているという奥さまに会うこともなく女の子に追い返されてしまった。
いや、子供と言っても感覚的には俺と同じか、少し若いくらいの年齢だったのだけども。
ここの何歳が俺の何歳に当たるのかわからないからどうにも言い難い。

そんなことはさておき。

「なんか嫌われるようなことしたっけ?」
「ご主人様、そのような格好では警戒されるのも無理ないかと」

あ。
俺フード被ったままだったわ。
今回はちゃんと俺がこんな肌の色だったりするというのを認識した上で雇用したかったので、俺自ら行くことにしたのだが、この頃外でフード取らなすぎて忘れてたわ。
そりゃ正体不明のフード野郎がメイド引き連れて現れたら何事かという話になるな。
ファーストコンタクト最悪じゃん。

「ここでごり押ししてもマイナスにしかならないだろうからな。トロワ、紙とペンくれ」
「かしこまりました」

とりあえず、ここの経営者と年長組へ向けて手紙を書いておくことにする。
彼女が子供代表ということは年長だろう。
雇うなら彼女か、それよりちょっと若いくらいかな。

とりあえずは訪れた目的、その雇用関係の説明、仕事の説明、給料の相場などを書いていく。
先ほど彼女に視えていたのは{怯え}だった。
どうやら目下問題を抱えているようだが、一旦干渉はしない。
無理に関わろうとすれば要らぬ誤解を生みそうだからな。

「こんなとこだろ。アン」
「はい」

リオンの家の倉から拝借したサッカーボール数個と共に手紙を置いておく。
本日、正面から挨拶に来る前に数日上から覗いていたところ、遊び道具も無さそうだったからな。
子供の遊び心につけこんでおこう。
いや、善意はあるけどもな?


4日後、手紙が俺の家に帰ってきていた。
かなり綺麗な少々丸めの文字で書かれたその手紙にはこんな内容が書かれていた。


―拝啓 リブレ様―

余計なお世話だよーだ!

―敬具―


うん、中々に嫌われているようだ。
文面的には子供が書いたのだろうが、もうあれだな。
議論の余地なく嫌われている。
これは雇用問題振り出しか……。

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