戦力より戦略。

haruhi8128

三下の相手も大変だ

「こうして勘であんたらを見つけられてるんだ。捨てたもんじゃないだろ?」
「まぁ、それは認めるよ。俺たちも見つけられるとは思ってなかったからな」

実際は穏やかじゃない感情が視えたから警戒していただけなのだが。
俺のこの眼の長所になるだろうか。
俺の視力の許す限りの遠さなら暗かろうが視えるのだ。

俺はこの謎の特徴を「気配を捉える」と表現している。
こっちに来るまで特に役立つようなことはなかったが、こっちに来たら来たで役立ちすぎだ。
正直、引いてる。

「あんたがそのまま立ち去るなら後ろの嬢ちゃんたちだけで勘弁してやるんだが……」
「この間にも俺の後ろのやつらが今のうちに拐ってしまおうとしていて何言ってんだか」

後ろでギョッとした気配が伝わってくる。

「ばれてたか……」
「当然だろ。むしろ人数優位のこの状況でしない方がおかしい。俺もそうするだろうからな」

「だが、お前が防げるかどうかは別問題だろう?」
「そうだな。その上で、問題ない」

オーシリアがチェーン・バインドを発動し、周囲の奴らを一網打尽にする。

「な!?」
「珍しいだろ。まぁ、人生そう上手くはいかないってことだよ。精々朝まで足掻いてみてくれ」

それだけ言い残してまたステッド・ファストの内側に戻る。
無力化さえ済んでしまえば別に俺にそれ以上のことをする必要はない。

「アン。おい」
「……ご主人様。夜這いですか?」
「誰がするか! って大声出させんなよ……」

さぁ、どうぞとばかりにこちらに両手を広げるアンをペしっとはたく。

「見張り変わってくれ」
「承知いたしました」
「ほい」

もぞもぞと起き上がってきたアンに俺が今まで羽織っていた毛布っぽいやつを渡す。

「なるほど。これで致せということですね」
「ナニをだよ!? あ、また大声出しちまった……」
「ご主人様、冗談です」
「質が悪いぞ……」

アンと入れ替わり、俺は少し離れたところの寝袋に潜り込む。

「主、わしもいれるのじゃ」
「狭いんだが」
「わしに寒空の下で寝ろと申すか」
「向こうに混ざればいいだろ」
「わしは主のそばで寝たいのじゃ」
「むぅ……」

まぁ、つめれば別に入れなくもないな。
裾を広げ、オーシリアを招き入れる。

さて、翌朝あいつらがどうなっているかな。


転がってた。
逃げようと格闘したあとは地面の痕から見受けられるが、とうとう脱出には至らなかったらしい。

「ご主人様、彼らは?」
「お前らを拐おうとしてた不届きなやつらだな」
「もしかして、最初に見張りを引き受けたのはそういうことだったのかなー?」
「まぁ、拘束さえしてればいいと思ったから」

実際それで間に合ったわけだし。
無駄に気を遣わせることもない。

「で、この人たちはどうするのー?」
「どうもこうもないが、このまま放っておくとそのまま死にそうだもんな……」

一番体力のあるときに逃げ切れなかったのだ。
これ以降も拘束から抜けられる可能性は低い。
かといって逃がすのも違うよな。

……どうしよう。

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