戦力より戦略。

haruhi8128

水分補給は忘れずに

更に数十分後。
前線を下げながら削り続けるものの、進展は見られず。
更に言えば、周りに出てくる弱いエネミーたちはほぼ無限湧きであることもわかった。
今のところ増えはしていないが、一定数は常にいるように感じる。

消耗戦になればなるほどこちらが不利だ。
銃も使い潰しなわけだし。

「レイン、一旦攻撃は置いといてくれ。試したいことがある」
「なんですか?」

引いてきたレインがこちらを見上げる。

「えっとな、土魔法で小さなこぶを作って欲しいんだ」
「こぶ、ですか?」
「あぁ」

幻想級ファンタズマルが山を越えられないのはわかった。
なら次はどこまで越えられないのかを調べるだろう。
もし、小さなこぶでさえ乗り越えられないなら、それを使って誘導することも出来る。
どこら辺までが誘導できるのか。
それによってこの後の展開も変わる。
多少なりとも進行を遅れさせることが出来るなら、疲労の色が見えてきた魔法を撃っている人達も休ませることが出来る。

「なるほどですね。じゃあ、徐々に大きくしていく感じでいいですか?」
「そこらへんは任せる」
「了解です」

レインが皆が撃っている光魔法に混ぜて土魔法で足元にこぶを作る。
子供の頃に砂場で作った小さな山のような大きさから始まり、徐々に大きくなっていく。

すると、小さな丘くらいになると幻想級が避けていく。
もしくは歩みが遅くなることが分かった。

「レイン! 保険かけてあれよりちょっと大きい奴! 一旦こっちにこれないようにしてくれ!」
「はい!」
「他の奴は一旦退避! 回復してくれ!」
「「はい!」」

矢継ぎ早に指示を飛ばす。

「相手の回復手段がわからない以上、こっちもずっと攻撃するわけにはいかない! 順次回復してくれ!」

恐らくはこっちから吸収するMPで回復しているという理屈なのだろうが、今まで吸収してきた分がどのくらいあるのかによって削らなければいけない時間も労力も変わってくる。

「このくらいですかね」
「そうだな」

地面を底とみなしたらちょっと深いくらいの堀が出来た。
よし、ちょっとこれで時間が出来る。

「全員休息には水分補給とかも含まれるから。その辺も忘れずにな」

実際の戦争がどんな感じだったかなんて想像もつかないが。
水分もろくにとれないような環境だったのは間違いないだろう。
俺たちは水分補給も出来るような余裕をもって戦う。
逆に言えば、そういう余裕がないのなら引いた方がいい。

「被害状況は!?」
「重傷2名です!」
「っ! レイン! 頼む!」
「了解です!」

急いで重傷者の方に向かうレイン。
レインは全属性に適性があるから人1倍回復魔法の強度が強い。
よってレインにどうにもできないならハンネの謎薬に頼るしかなくなる。
それだけはどうしても避けたい。

「頼むぞ」
「任せてください」

2人とも必死ではありながら真剣な表情で頷く。
それほどまでにハンネの治療に対する不信感は凄いのだ。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品