戦力より戦略。

haruhi8128

前線へ

「じゃあ、一旦ここでプリンセとはお別れだな」
「……そうなるね」
「名残惜しいですけど、役割分担ですからね」

決められていたように、次世代のドルガバを担うプリンセやアミラは前線には立てない。
先頭へ行く俺たちとはここまでだ。

プリンセは俺にギュッと抱き着いてお腹の辺りに頭をこすりつける。

「……うぅー……!」
「うんうん、名残惜しいのはわかるけどな。もう時間だから」

キラたちは先行している。
俺たちも追いつかなくちゃいけない。

「……リブレさん」
「ん?」
「……最後にギュッてして?」
「了解」

膝立ちになってプリンセと目線を合わせる。
すると、その瞬間。

プリンセがキスをしてきた。
しかも割と長めの。

「プ、プ、プ、プリンセちゃん!?」
「……ふふっ」

固まっている俺に対してプリンセが笑う。
それはまるで小悪魔のようだった。

「……ちゃんと生きて帰ってきてね」

それだけ言うと、自分の持ち場の方へと走っていった。

「リブレさん?」

キスの多幸感を感じる間もなく、レインさんからお呼びがかかる。
首がさび付いているかのような動きで振り返ると、笑顔のレインがそこにはいた。

「いえ、わかってますよ? 今のはプリンセちゃんからしたのであって、リブレさんには非はありませんよね?」

必死に頷く俺。

「ただ、僕がリブレさんの彼女だというのにも間違いはありませんよね?」

深ーく頷く俺。

「なら、それなりの対応ってものがありますよね」
「と、申しますと……?」

いきなり歯切れが悪くなり、もじもじする。

「それは……」

{羞恥}か……。
いや、俺からっていうのは初めてだな……。

視線を周りに走らせて、誰かの感情がないかを伺い、レインを引き寄せ、キスをする。
真っ赤になりながらも応じてくれるレイン。

……やっぱ恥ずい。

ただ、これだけでは足りないので言葉にもする。

「レイン、俺はお前が好きだよ」
「僕も、リブレさんが好きです」

2人とも笑顔になる。

「じゃあ、行くとしますか」
「そうですね。ササっと片付けちゃいましょう」

そうして俺たちは前線に追い付くべく歩き出すのだった。


「やあ、待ってたよ」
「首尾はどうだ?」
「人員の配置は完了。銃もそれぞれ戻ればとれる場所に置き終わったし、あとは僕が確認してくるだけかな」
「上々だ。だが、キラ。お前でも無理はするなよ。姿を確認するだけでいいんだからな」
「わかってるよ。じゃあ、行ってくるね」

姿を消すキラ。
ほんと、偵察でキラが死んだら犠牲者を出さないって目標が瓦解するってだけの被害じゃなくなってしまうからな。
くれぐれも無茶はしないでほしい。

「とりあえず、キラが戻ってくるまでは待機だな。各自、最後に自分の得物を確認しといてくれ」

俺も自分の小太刀を抜いて見る。
こいつも割と使ってきたわけだけど、時々城の刀鍛冶の人にメンテナンスに出す以外はなにもしてないのに刃こぼれ1つ無いのはなんなんだろうな。
魔界でアンリさんから貰って来たことを考えると日本のものなんだろうけど。
よほど名刀だったのかもな。

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