戦力より戦略。

haruhi8128

水着お風呂論争

俺とプリンセは一緒にお風呂には入っていたのだが、レイン風紀委員長の帰還によりそれは禁止されてしまっていた。
俺は最初こそ動揺したものの、最後の方はなんとも思わなくなっていた。
というのも、プリンセが年相応に無邪気にはしゃいでくれるので、子供のすることだから、と納得できていたのだ。

まぁ、常識的に考えて親子とかではない男女が一緒にお風呂に入るというのはたとえ相手が6歳といえどおかしいというのはわかっていたので、レインに怒られた時もさらっとやめることが出来た。
しかし、プリンセとしては俺と一緒にお風呂に入るというのは別に悪いことだと思っていなかったので不満だったらしい。
禁止後も何かと理由をつけて一緒に入ろうとしていたが、その都度レインに見つかって怒られたりしていた。
プリンセとしては、今回のことは一緒にお風呂に入る口実ということになったらしい。

「だ、だめですよ!? 一緒にお風呂なんて……」
「……なにが、わるいの?」
「何がと言われましても……」

レインとプリンセによる俺と一緒にお風呂に入るのは大丈夫か論争が行われている。
現状、水着は男女が一緒に水に入れるようにしたものである、という後ろ盾を得たプリンセが優位なようだ。

なぜなら!
水着であればコンプラ的にもセーフ!
ポリスメンに捕まることもない!
いや、他人の子と家のお風呂に一緒に入っているという非常に特殊な状況はおいとくとして。


「ちょっと待ってくれ」
「……なぁに?」

反論のために知恵を絞っているレインの代わりにプリンセが返事をする。

「俺の水着がないから結局ダメじゃね?」
「! そうですよ! リブレさんが裸だったら意味ないじゃないですか!」

我が意を得たりとばかりにレインが食いついてくる。
そんなに追い詰められていたのか。

「……ふっふっふー」

プリンセがちょっと悪そうな顔をして笑う。
かわいい。

「……これがあるよ!」

そう言ってわきに置いていた大きめの袋から取り出したのは、男用のダボっとしたトランクス型の水着だった。
なにゆえ。

「……こんなこともあろうかと、お姉さんがくれたよ」

お姉さん恐るべし。
何という慧眼だろうか。
未来が見えてるまであるな。

……。
流石にカイルさんの差し金ではないよな?


「……これなら、大丈夫だよね?」
「え、えーと……」

レイン風紀委員長、絶体絶命。

「……わかりました! 僕も一緒に入ることで許可します!」
「……やったー」

プリンセ、勝訴。
ルンルンでこの論争の間に冷えてしまったお吸い物を温めなおしに行った。

「あぁ……」

律儀にも皿の前で延々と待っていたオーシリアは自分の前の皿が温めるために持っていかれるのを見て悲しい声をあげる。
哀れだ。

「レイン、いいのか?」
「確かにちゃんと水に入れるような素材ですし、家のお風呂は大きいから問題は、ないと思いますが……」

ここで俺をキッと見る。

「あんまりジロジロ見るのはリブレさんでも許しませんからね」
「はい」

気を付けます。

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