戦力より戦略。

haruhi8128

示威行為にはやっぱり派手さです

「オーシリア」
「わかっておる。任せるのじゃ」

カイルさんの開始の合図とともに俺は杖を放り、ステッド・ファストをオーシリアに任せる。

「とりあえず俺の通り道があるように張り巡らせといてくれ。2階層も適度に上がれる道を作ったうえで頼む」
「こうかの?」

2階建ての迷路のようなステッド・ファストの構造物が一面にできる。

「あぁ、壊されたとこから改良して作り変えていってくれ。で、レインについていけ」
「わかったのじゃ。しかし、主は大丈夫なのかの?」
「お前が防いでくれれば問題ないよ。問題はレインはこれが見えないってことだ」

レインは目の前にある壁をぺちぺち叩きながら不思議そうにしている。

「これは見えないまま動くのはきついですね」
「だろ? オーシリアには見えてるから頼ってくれ」
「魔法が途中で止まっちゃいません?」
「オーシリアがその都度穴をあける。思うままに撃っちゃってくれ」
「中々無理難題をこともなげに言うのじゃな!?」
「できるだろ?」
「出来んことはないが……」

「頑張ったらお菓子買ってやるから」
「頑張るのじゃ!」

オーシリアは食事を必要としないが、甘いものは気に入ったらしい。
事あるごとにねだってきていたからな。
人間の姿に嗜好が引っ張られるのだろうか。


ガアァァァッッ!!

自由な動きを封じられている獅子と化した長殿は苛立っているかのように吠える。
見えなければぶつかるまで攻撃することは難しいからな。
改めてキラが怖い。
なんであいつわかってたんだろう……。

「なにが起こってるんだ?」
「さぁ……?」

しかし、これには欠点がある。
今回は俺たちの実力を見せるという機会なのでわかりやすい方がいいのだが、これはすこぶるわかりにくい。
俺たちがすいすい移動していて、長殿が進んだり立ち止まったりしている。
長殿が苛立っている様子などから俺たちがなにかしているのはわかるようだが、そこ止まりだ。
カイルさんは{楽し}んでいるようだ。
ってことはあの人にも見えてるのか。

このわかりにくいという欠点を補う方法がある。
レインの魔法だ。

「この辺りでどうじゃ?」
「じゃあ、いきますよ!」

俺と別れて長から見て俺と60度ほど離れた位置に陣取った2人。
レインが詠唱を連続して行う。
その魔法は属性も様々。
レインから放たれるものもあれば、長殿の辺りに急に現れるものもある。
オーシリアも頑張っているようだ。
ちょいちょいミスっているようだが、ほとんどの魔法は長殿まで到達している。
それも徐々にミスは減ってきている。

グロァァァァ!!

文字通り四方八方からの魔法に襲われる長殿は吠える。
レインの凄いところは、自分の魔法の特性を全て把握していることだ。
魔法によって詠唱が終わってから相手に効果が届くまで時間に違いがある。
レインはそこも管理して、相手に魔法が絶え間なく降り注ぐようにできる。
それも多属性なので防ぎづらい。
我ながらあれ相手によく戦ったな。

長殿もステッド・ファストを所々破ったりしながら避けたり、レインの方に近寄ろうとしているが、それをオーシリアがさせない。
長殿と2人の間には幾多もの壁があり、一度破った壁も数秒すれば他の形に直される。
一度そこを通ったからといって次に同じ方法で通れるわけではない。

観客はレインの魔法のド派手さと長殿が文字通り手も足も出ない様子を見て驚いているようだ。
俺?
俺はほら、作ってもらった2階の方にいるよ。
レインの闇魔法の影に影隠しシェイド・ハイドで隠れながら。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品