戦力より戦略。

haruhi8128

何かをし続けるのはきついものです

チャキ。

おもむろにキラが刀を抜いたかと思ったら、俺が止まる間もなくそれをふるう。
一陣の風が吹き、キラが刀をしまう。
よく見ると、入り口と床の間にうっすら傷がついている。
なるほど、そこにひっかけてここを開けようってことか。
いきなり暴走しだしたかと思ったわ。

「誰か起きてるのぉ……?」

もぞもぞとベッドの中で動く音が聞こえ、俺たちは大いに焦る。
キラが蓋を開けているうちに俺とオーシリアが飛び降り、神速でキラが降りてきて蓋を元通りにして一応は事なきをえた。


四方の壁に沿ってステッド・ファストを張って音漏れをしないようにしてやっと話す。

「無茶苦茶しやがったなキラこの野郎」
「上手くいったからいいじゃないか。あれぐらいの傷なら注意しなきゃ見つけられないだろうし、少なくとも暗いうちには見つからないだろうしね」
「それはそうだろうけどさ……」

キラに詰め寄るが、全く悪びれた様子がない。

「まぁ、そうだな。結果的に上手くいったからよしとするか……」

落ち着いたところで小部屋を見渡す。

「書庫か?」

部屋の両側に大きな本棚があり、他には特に何もない。

「これは当たりだな」

本を守るためだけにあれだけの魔法による防御を施してるんだ。
これが何でもない資料のはずがない。
これで何でもなかったら酷い詐欺だ。


「とりあえず手あたり次第見ていくか」
「そうだね」
「了解じゃ」

そう言って手分けして本を見始めたのはいいものの、その多くははエルフの言語で書かれているから俺とオーシリアには読めない。
キラも一応は読めるとのことで流石だと思ったのだが、触れたことがある程度だということでお世辞にも効率がいいとは言い難い。

よって俺たちが読めるものは俺たちで処理して、エルフの言語のやつはキラに回して最初の数ページと途中の数ページだけ読んでもらい、それぞれ重要だろうと思ったやつだけ撮って帰る運びになった。


「しんどっ」

なにしろ1冊1冊が辞書みたいな厚さなのだ。
時々出てくる絵が救いかと思いきや、1冊の中に絵がないものもあり、シンプルに心が折れる。

「これは1日じゃ無理だな」

目を通しながら薄々感じていたが、この部屋にあるもので重要でない文献なんてない。
俺たちが読めるものは全部読んでから記憶だけではだめだろうと思われるものだけ撮っている。
キラに全てを読ませるわけにもいかないのでちょっとずつ読んでもらっているが、それだけでは判断が難しく、1つ1つに時間がかかってしまう。

「この夜のうちに脱出するのは諦めて、休憩をとりながら次の夜に出るまでに終えるペースでいくってのはどうだ?」
「……そうしてもらえると、助かるかな。いくらなんでもこの量はきつそうだ。ごめんね。僕がもっとちゃんと読めたらいいんだけど」
「何言ってるんだ。そこら辺に関しては俺たち役立たずゴミだぞ。十分助かってるって」

キラがいなかったら全部撮ってかなきゃいけなかったからな。
ハンネの解析にも時間がかかっただろうし。

「そうかい? それは良かった」

そうして俺たちはまた本を読み始めるのだった。

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