戦力より戦略。

haruhi8128

温泉はいいぞ!

ヘスティアさんの多大なる尽力によりスピードアップした俺たちは遂に目的を達成しようとしていた。
「でー、なんでこれやってるんだっけー?」
リオンがそう聞いてきたのは掘り始めて4日が経ったころだった。
正直、もっと早く疑問に思わねーのかよとか今さら聞いてどうするんだよとかこんなのが次期魔王でいいのかとか色々思うところはあるものの、手伝ってもらっている俺としては説明してなかった俺が悪いのでそれらは封印する。

掘ってるんだ」
「温泉?」
そう、温泉。地中から湧き出てくるお湯を風呂として活用するもの。その効能はお湯の成分によって様々ではあるが、大抵は身体に良い影響を及ぼす。
俺が地面を見ていたのは温泉が湧いている場所をスルー・アイで見つけるためである。さすがにぴったりは見つけられなくて多少の軌道修正はあったものの、一応たどり着けそうだ。
「へー。でもそれってお風呂じゃダメなのー?」
「温泉じゃなきゃダメだ!」
温泉にはただ汚れを洗い流すというよりリラックスできるという点が重要だと思う。俺は生前、ってか生きてるけど要するに地球に生きてた時はある温泉で有名な場所に住んでいた。もちろん、家に風呂はあったのだが、俺は足繁く温泉に通っていた。やはり大きなお風呂というのはのびのびとできるし、色々な形態のお風呂もいい。大きな湯船に一人で浸かっている時の解放感は格別である。

「んーと、それならパパにも認めてもらえるんだねー?」
「あぁ、その可能性が高いと思ってるよ」
奥の手もあるしな。
ちなみに魔王は床から起き上がると同時に降ってきた土砂に押し潰されて今は土の中で生活している。下手に出てくるよりも甘んじて受け入れていたほうがヘスティアさんに何もされないんじゃないかと判断したようだ。ちなみに多少食わなくても大丈夫とのこと。
魔王が復活してくるタイミングを見計らってあれを仕掛けていたとは…。ヘスティアさん、恐ろしいひと

俺の見立てによるともうそろそろなんだが…。
「あ、ねぇ弟君!土が柔らかくなってきたよー!」
今まで硬い岩盤を掘り進めていたため、違いがすぐにわかったらしい。硬すぎて俺は掘れず、全く役にたっていなかったが。
「よし、一旦中断だ。先に上をやってしまおう」
温泉といってもただ湧き出してるだけでは入れない。しっかりと浴槽を整備して、お湯を外に出す仕組みを作らなければいけない。

「さて、とりあえず浴槽だが…」
どうせなら広くでしょ!!
リオンに隣の家の人に話を脅してとおしてもらって土地を譲り受け、大体の大きさを決める。ステッド・ファストで大きさ分の周囲の土を固定し、リオンに掘ってもらう。そのあとステッド・ファストを解除して周りに石を敷き詰めていく。
「本来なら床とかも石を敷き詰めたほうがいいんだろうけどな…」
ランガルじゃあるまいし、そんな石材はない。城壁にならって大きな石を並べてその隙間に小さな石を並べていく。

「これ楽しいねー!」
ほんとにリオンがこういうことを楽しいと思える奴で良かった。更に言えば力を持て余してるだけの奴じゃなくて良かった。
石を並べてる途中で「こんなので大丈夫なのー?」って聞いてきたから「なにが?」って聞き返したら片手で石を握りつぶして「脆くないー?」って言われた時には戦慄したからな…。

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