Restart to the Game
Code:7 reunion
ザー……ザザッ ザザザザー
(……?なんだよこれ……早くログアウトさせろよ……)
ログアウトしている途中のはずなのに、突如ノイズのようなものが聞こえ、俺は言いようの無い不安に駆られた。おまけに俺の周りは、360度暗闇に覆われていて何一つ見えない。
落ち着いて待ってはみるものの、一向にログアウトする気配は無いみたいだ。
(バグ?あるいは機械の故障とか……)
だとしたらかなりまずい。この状態は、いわばゲームとログイン前の中間ぐらいなのだ。自分で外そうにもここはまだ仮想世界だし、GMコールしようにもゲームからはログアウトしている。
と、突如暗闇の中に朧気な光が浮かび上がった。それは段々と収束し、人の形を成していく。
そこに現れた人物を見て、俺は思わずあっと声を上げた。銀髪で紫眼の少女。
「お前……この前の……」
黒フードを被った少女は小さく頷くと、鈴を鳴らすような声で言った。
「コマンド。強制ログイン・データ名《shadow》。座標固定、空間転送」
「なんだよそれ……………、っ!?」
目の前で突然フラッシュをたかれたような眩しさが俺の目を直撃し、一瞬だけ目を瞑ってしまう。
目を開くと、そこはさっきまでいた真っ黒な空間とは正反対の真っ白な空間だった。視界には何もない。ただただ真っ白で、床や壁があるのかすら分からない。
「やっと、会えた」
後ろから声がした。振り向くと、先程の少女が無表情に俺を見つめている。
「調整が遅くなった。謝罪する」
「別に良い……それより、なんでこんな所に移動した?そもそもお前、誰だ?」
問いかけると、少女は「アイディ」と名乗った。どうやら会話は出来るらしい。
「アイディか。とりあえず、お前はプレイヤーなのか?それともNPC?システム管理者ってのもあり得るな」
「私はシステム的にはプレイヤーに分類された。だけどシステム管理者の権限は使える」
プレイヤーだった。NPCだと思っていたのだがどうやら外れたようだ。でもシステム管理者って事は要するにGMじゃねぇか。
「質問攻めで悪いが、俺をここに移動させたのも管理者権限ってことか?」
「そう。あとここは《AFW》の内部」
「……なんでだ?」
「私は言ったはず。未来を切り開くべき世界で待ってる、と」
俺はすぐに結論に至った。
《未来を切り開くべき世界》とはここだったのだ。何故聞いた時に理解出来なかったのだろう。よく考えれば《AFW》のキャッチコピーとほぼ同じではないか。
「《未来を切り開くべき世界》ってのはここの事だったんだな」
「私があなたを呼んだのは、理由がある」
「理由?」
「私は、あなたの手助けをしなければならない。それが〈あの方〉の願い」
手助け?何の手助けだろう。っていうか〈あの方〉って誰だ?
「馬鹿にも分かるように説明してくれ。俺は全く意味が分からない」
「じゃあ、まず一つ。あなたを含めるランダムに選定されたプレイヤー一万人が、この世界から出られなくなる」
「……………………は?え、それって……現実に戻れないって事かよ?」
《AFW》の実質的なアクティブプレイヤー数は、現在十万人。
つまり、およそ十分の一の確率だ。
「……でもまだ俺がその一万人のうちの一人だとは決まってないんだろ」
「本来なら言ってはいけないけど……あなたは、その一万人の中の一人である事が確定している」
「な……」
「どうか分かってほしい。これは定められた運命なのだから」
いや運命とか言われてもだな。荒唐無稽な話過ぎてにわかには信じられない。
「それが事実だと仮定して……、なんでそんな事する必要があるんだよ」
問いかければ、少女もといアイディは少しだけ目を伏せて話し出した。
「この世界…………あなた達の言う《Advent final world》は、ゲームでは無く実在する別世界。本来なら、あなた達が存在する世界とこの世界は別々の次元にあって、お互いに干渉する事は無いはずだった」
だけど、とアイディは続ける。
「何者かは分からない。けどどちらかの世界の誰かがこの世界を見つけ出し、「ゲーム」として繋げた。でもこのままでは次元と次元の壁が壊れ、二つの世界は崩壊してしまう。そうなってはいけないけど、私たちこの世界の住民は対抗する術を持たない。だからやむを得ず、あなた達をこちらの世界に強制的に閉じ込め、このゲームを終わらせてもらうようにした。そうすれば再び次元は離れ、干渉する事も無くなるはずだから」
呆然としている俺を見て、アイディはやっぱり理解出来ないか……と微妙に表情を変える。
「要するに、このゲームをクリアしろって事だろ?」
「そういうこと」
はあ。なるほど、そういう事か。
よし、じゃあ早速ゲームをクリアして、干渉とやらを防ごうじゃないか。
「…………じゃなくて!『そういうこと』じゃなくて!なんで俺指定なんだよ!」
アイディは俺が突然大声を出してもピクリとも表情を変えず、あくまで無表情を貫いている。別にキャラ作んなくても良いんじゃないのか。まあ、この調子を見るにキャラでは無いと思うけど。
「あなたは言うなれば重要因子。私の《特殊能力》は他プレイヤーの全てを見通す力。行動、記憶、ステータス、その他あらゆるものが見通せる。だけど、〈あの方〉に頼まれて見通しをしていた時、あなただけは一切見通す事が出来なかった。判ったのは、あなたのプレイヤーネームとあなたが特別な何かを秘めていること。それだけ」
なんだよそのチート能力。
お前が言うなと言われても何も言い返せないが、それでもこの《特殊能力》はおかしいだろう。
「それ本当なのかよ?」
「本当」
怪しいと思っている事を感じとったのだろう、アイディは少しだけ困ったような目をした。だがすぐに無に戻る。
「私を信じてもらうために、あなたにこれを渡しておく」
アイディがそう言うと何も無い空間から突如細い剣が現れた。全体が深い闇色で、その刃全体に埋め込まれている色とりどりの小さな宝石は、黒い刀身なのもあってまるで夜空に光る星のように煌めいていた。
「この剣は《ヴァイオレット・グノシス》。きっとあなたの助けになるはず」
そう言うが早いか、突然アイディが現れた時を逆再生しているかのような現象が起こった。アイディの周りを徐々に白い光が覆っていく。
「お、おい!俺何も分かってないんだけど!?」
俺はテストの点数こそ良いものの、そういった事に対する理解力はアリより下だ。
「申し訳ない……時間が足りなかった。だけど、どうか今は私の言葉を信じてほしい。2つの世界の未来は ─── 」
アイディはそこで僅かな残光だけを残し消えた。
(……?なんだよこれ……早くログアウトさせろよ……)
ログアウトしている途中のはずなのに、突如ノイズのようなものが聞こえ、俺は言いようの無い不安に駆られた。おまけに俺の周りは、360度暗闇に覆われていて何一つ見えない。
落ち着いて待ってはみるものの、一向にログアウトする気配は無いみたいだ。
(バグ?あるいは機械の故障とか……)
だとしたらかなりまずい。この状態は、いわばゲームとログイン前の中間ぐらいなのだ。自分で外そうにもここはまだ仮想世界だし、GMコールしようにもゲームからはログアウトしている。
と、突如暗闇の中に朧気な光が浮かび上がった。それは段々と収束し、人の形を成していく。
そこに現れた人物を見て、俺は思わずあっと声を上げた。銀髪で紫眼の少女。
「お前……この前の……」
黒フードを被った少女は小さく頷くと、鈴を鳴らすような声で言った。
「コマンド。強制ログイン・データ名《shadow》。座標固定、空間転送」
「なんだよそれ……………、っ!?」
目の前で突然フラッシュをたかれたような眩しさが俺の目を直撃し、一瞬だけ目を瞑ってしまう。
目を開くと、そこはさっきまでいた真っ黒な空間とは正反対の真っ白な空間だった。視界には何もない。ただただ真っ白で、床や壁があるのかすら分からない。
「やっと、会えた」
後ろから声がした。振り向くと、先程の少女が無表情に俺を見つめている。
「調整が遅くなった。謝罪する」
「別に良い……それより、なんでこんな所に移動した?そもそもお前、誰だ?」
問いかけると、少女は「アイディ」と名乗った。どうやら会話は出来るらしい。
「アイディか。とりあえず、お前はプレイヤーなのか?それともNPC?システム管理者ってのもあり得るな」
「私はシステム的にはプレイヤーに分類された。だけどシステム管理者の権限は使える」
プレイヤーだった。NPCだと思っていたのだがどうやら外れたようだ。でもシステム管理者って事は要するにGMじゃねぇか。
「質問攻めで悪いが、俺をここに移動させたのも管理者権限ってことか?」
「そう。あとここは《AFW》の内部」
「……なんでだ?」
「私は言ったはず。未来を切り開くべき世界で待ってる、と」
俺はすぐに結論に至った。
《未来を切り開くべき世界》とはここだったのだ。何故聞いた時に理解出来なかったのだろう。よく考えれば《AFW》のキャッチコピーとほぼ同じではないか。
「《未来を切り開くべき世界》ってのはここの事だったんだな」
「私があなたを呼んだのは、理由がある」
「理由?」
「私は、あなたの手助けをしなければならない。それが〈あの方〉の願い」
手助け?何の手助けだろう。っていうか〈あの方〉って誰だ?
「馬鹿にも分かるように説明してくれ。俺は全く意味が分からない」
「じゃあ、まず一つ。あなたを含めるランダムに選定されたプレイヤー一万人が、この世界から出られなくなる」
「……………………は?え、それって……現実に戻れないって事かよ?」
《AFW》の実質的なアクティブプレイヤー数は、現在十万人。
つまり、およそ十分の一の確率だ。
「……でもまだ俺がその一万人のうちの一人だとは決まってないんだろ」
「本来なら言ってはいけないけど……あなたは、その一万人の中の一人である事が確定している」
「な……」
「どうか分かってほしい。これは定められた運命なのだから」
いや運命とか言われてもだな。荒唐無稽な話過ぎてにわかには信じられない。
「それが事実だと仮定して……、なんでそんな事する必要があるんだよ」
問いかければ、少女もといアイディは少しだけ目を伏せて話し出した。
「この世界…………あなた達の言う《Advent final world》は、ゲームでは無く実在する別世界。本来なら、あなた達が存在する世界とこの世界は別々の次元にあって、お互いに干渉する事は無いはずだった」
だけど、とアイディは続ける。
「何者かは分からない。けどどちらかの世界の誰かがこの世界を見つけ出し、「ゲーム」として繋げた。でもこのままでは次元と次元の壁が壊れ、二つの世界は崩壊してしまう。そうなってはいけないけど、私たちこの世界の住民は対抗する術を持たない。だからやむを得ず、あなた達をこちらの世界に強制的に閉じ込め、このゲームを終わらせてもらうようにした。そうすれば再び次元は離れ、干渉する事も無くなるはずだから」
呆然としている俺を見て、アイディはやっぱり理解出来ないか……と微妙に表情を変える。
「要するに、このゲームをクリアしろって事だろ?」
「そういうこと」
はあ。なるほど、そういう事か。
よし、じゃあ早速ゲームをクリアして、干渉とやらを防ごうじゃないか。
「…………じゃなくて!『そういうこと』じゃなくて!なんで俺指定なんだよ!」
アイディは俺が突然大声を出してもピクリとも表情を変えず、あくまで無表情を貫いている。別にキャラ作んなくても良いんじゃないのか。まあ、この調子を見るにキャラでは無いと思うけど。
「あなたは言うなれば重要因子。私の《特殊能力》は他プレイヤーの全てを見通す力。行動、記憶、ステータス、その他あらゆるものが見通せる。だけど、〈あの方〉に頼まれて見通しをしていた時、あなただけは一切見通す事が出来なかった。判ったのは、あなたのプレイヤーネームとあなたが特別な何かを秘めていること。それだけ」
なんだよそのチート能力。
お前が言うなと言われても何も言い返せないが、それでもこの《特殊能力》はおかしいだろう。
「それ本当なのかよ?」
「本当」
怪しいと思っている事を感じとったのだろう、アイディは少しだけ困ったような目をした。だがすぐに無に戻る。
「私を信じてもらうために、あなたにこれを渡しておく」
アイディがそう言うと何も無い空間から突如細い剣が現れた。全体が深い闇色で、その刃全体に埋め込まれている色とりどりの小さな宝石は、黒い刀身なのもあってまるで夜空に光る星のように煌めいていた。
「この剣は《ヴァイオレット・グノシス》。きっとあなたの助けになるはず」
そう言うが早いか、突然アイディが現れた時を逆再生しているかのような現象が起こった。アイディの周りを徐々に白い光が覆っていく。
「お、おい!俺何も分かってないんだけど!?」
俺はテストの点数こそ良いものの、そういった事に対する理解力はアリより下だ。
「申し訳ない……時間が足りなかった。だけど、どうか今は私の言葉を信じてほしい。2つの世界の未来は ─── 」
アイディはそこで僅かな残光だけを残し消えた。
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