ログボしか取ってないクソゲーに転移したので無双しようと思います
廃課金≠最強
麗らかな昼下がり。
街の中央に据えられたお洒落なオープンカフェで、ピシッと決まったパンチパーマのヤーさんがコーヒーを飲んでいた。
キャラメルマキアート的な甘めのコーヒーを啜りながら、手に持っていたドス(UR)を恍惚とした表情で見つめている。
やべぇ、やべぇ奴がいる。
僕の率直な感想だが、カフェでドスを見てニヤニヤしていて周りは違和感無いのか?いや、明らかに異常な光景だが、彼がこのゲームのモブの可能性も僅かにある。街人がスルーしているのが何よりの証拠かもしれない。あ、そうか、フェスの当たりを見せつける事により射幸性を煽ると言う、運営の浅ましい魂胆なのだろう。
ならば僕には意味を成さない。何故なら、任侠フェスを蹴って通常の11連を回したくらいなのだから。
とりあえず、なんか嫌なので他のカフェに向かおうと前を通ろうとした時だった。ヤーさんの独り言が意図せず耳に入ってきた。
「まさかこの世界に来て、念願のドスが手に入るなんてなぁ。やっぱりレア度が高いとテンション上がるわ。おい姉ちゃん、俺のシナモンロールまだかよ!!」
聴きたくなかった。
これ、どう足掻いても僕と同じ転移したプレイヤーじゃんかよ。しかもシナモンロールて、シナモンロールて!!
甘いモン食わずに塩辛とか食ってろよ!
僕は心の中で思い切り突っ込んだが、とても口には出せなかった。
とりあえず少し距離を置いて、僕は妖精に問いただす。
(……なぁ、この世界って、ユーザー同士が戦う事ってあんのか?)コソッ
『厳密にはありませんね。ギルド的な組合はありますが、大型のレイドボスを倒す事が目的であって、人間同士がどうとかはありません……ですが』
(ですが?なんだよ歯切れ悪いな)
『転移する事で、元のゲームより自由度が上がっています。言うなれば、マ●オからGT●になった位の変化ですかね』
「違いすぎんだろ!?なんで横スクロールのゲームから何でもありのギャングもんに昇華してんだよ!!じゃあ何か?ユーザーの気分次第で予期せぬ展開に縺れ込む可能性もあるってか!?」
『ですね』
ですねじゃねえよ、ですねじゃ。
いや、本当にそれならヤバイぞ。マジでガチャから強アイテムとってランク上げないと死活問題に直結じゃねぇか。
俺はゲロった嫌悪感も忘れて外へと出向き、そしてスマホからメニューを開きガチャのページを開いた。
「こうなりゃ、やる事は限られる。見てろよ……見せてやる!」
廃課金に抗う術は、全くといって皆無では無い。僕はいままで培ったソシャゲ脳を、フルで動かしてみせるのだった。
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