仮面の魔術師と小さな弟子

無道創

第1章 少女と仮面魔術師その1

 ゼファ王国にある辺境の村、カナン村の村長は悩んでいた、半年前に疫病で存亡の危機だった村を助けてくれたペストと名乗る魔術師に、金を払わなければならないのに、踏み倒してしまっていることをだ、忘れてしまっていることを願ってみるものの、毎日、魔術師の使い魔の、九官鳥が来て、金を払え!と毎日、催促してくる、最初は優しい口調で催促していたが、最近は、お前の村焼くぞ!と脅してくる次第だ、しかし村長は、正直払いたくなかった、何故ならシンプルに村長は、金の亡者だからだ、しかしこの脅しも決して、冗談ではなかった、つい先程、村長の納屋が焼かれていたのだ、しかし、それでも払いたくない村長はふと、名案を思いついた、それは彼のもとに奴隷を献上しよう!というものだった、この時代にとって奴隷は、金の次に価値のあるものなのだ、村長は満面の笑顔でこの案を即決し小躍りしながら、奴隷を送る準備をしだした。
 エリーゼ大森林、この奥に例の魔術師が住んでいた、村長は村の若い衆と共に、麻袋を抱え、ペストの住みかまで、意気揚々と向かっていった、そしてペストの住居につくと村長は大声で、
[ペスト様!約束のものを持って参りました!ここに置いておきますので!あとは、好きにしてくださいませ!]と叫んだ。
村長達は、ペストが出てくるのを待たずに、村までそそくさ帰っていった、すれ違うように、ペストが出てきた、ペストは辺りを見渡した、辺りには誰もおらず、玄関の前に、麻袋だけが落ちていた、ペストは
[ようやくか…]とため息混じりにいい放ち、中身を確認した、そして中身は、ペストが予想もしてなかったものが入っていた、中からは金貨ではなく、ボロボロなオッドアイの少女だった!、少女は健やかに眠っていた、中身を確認したペストは、しばらく思考が停止していた、そして理解した、これが助けた対価の代わりだということを理解した、ペストは久々にぶちギレそうになったが、深呼吸をして、冷静さを取り戻そうとしていたが、最悪なタイミングで少女は目が覚めた、少女はすぐさまペストを見ると、[わ、私を食べても美味しくないですよ!?]と声を震わせ泣きそうになりながら訴えてきた、それは当然だ、仮面を被った大人が、自分の近くでハァハァ言っていたのだから、当然の反応だ、少女の反応を見てペストは少し落ち込んだ。しかし落ち込んでいる場合ではなかった、この誤解を一刻も早く解かなくてはならなかった、とりあえず子供受けする魔術をいくつか見せようとしたが、逆に少女は更に泣きそうな顔になった、今世紀最大、ペストはオロオロしていた、こっちが泣きたいよ!と思うペスト、今にも泣きそうな少女、これが、ペストと少女の最初の出会いだった。

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