妖精の羽

ささみ紗々

恋のキューピッド

△▽△▽△▽

「ご………めん、うぅっふぅっぅ」
自分の目からぽたぽたと、涙が流れてる。ごめんなさいって呟いて、何度も何度も呟いて、柊二の意識がちゃんと戻ったって聞かされて、やっと私は我に返った。


柊二が急に倒れるなんて、思ってもみなかったの!まさか、ちょっと口にしただけであんなパニックになるなんて……!ほんとに申し訳ないって思ってるし、少し子供じみた真似をしてしまって情けないよ……

「あの……柊二君には、無理に記憶を思い出させるようなことは言わないで、お願い…」

家を出ていく前、私の服の袖を掴んだセツナは、消え入りそうな声でこういった。
どうして?と問う私に、彼女はこう続けたのだ。
「記憶を消されてるから、無理に思い出させようとしたら危ないって、本に書いてたの」

記憶を……ねぇ。
ほんとは半信半疑だった。セツナを家に連れて帰ったあの日、事の顛末を聞いた。面白そうだな〜なんて軽い気持ちで彼女に協力することにした私は、今日こうやって柊二と約束を取り付けたのだ。
確かに彼女の言う話は嘘のようには聞こえなかったから、私は協力するだけの価値があるかなって、そう思ったの。
でもまさか、ほんとに記憶を消されてるなんて思わないじゃない?魔女がいるって?そんなの言われても、すぐに信じられるほうがおかしいっての!

まぁね……文句言っても悪いのは私だし。セツナに言われたことちゃんと守ってれば、こうはならなかったのかな。私のせいで、セツナの目的が遠ざかってしまったらどうしよう。少し気がかり。

泣いてしまったのは不覚。ちょっと驚いただけ。それからほんの少しの罪悪感。
私はもう柊二の事はぜーんぜん好きじゃない。けど、彼氏がいるって言ったとき、あそこまで普通に対応されるとは……ってちょっと胸の奥がチクッてした。
彼氏がいるなんて嘘。なんでそんな嘘ついたかって、私が下心があって誘ったなんて思われたくないから。
柊二はきっと、記憶を失ってもなお、セツナことを好きなんだ。心の深海みたいな、そんな深いところで彼女のことを思ってるんだ……って気づいた。
じゃなかったらもっと動揺してくれてもいいでしょう?
柊二が私の知らない人になってく。やっぱさ、もう好きじゃなくても、なんか寂しいなって。でも恋愛ってきっとそんなもんなんだなって割り切らなきゃいけないんだよね。

「……ごめん、私もう、帰るね?」
目を覚ました柊二には申し訳ないけど、セツナをずっと1人にしておくわけにはいかない。なんてったって物騒な世の中なんだから。
「ん、俺の方こそ、ごめん」
「柊二は悪くないよ!……また今度、お礼するよ」
私が2人をくっつけるの……今度は恋のキューピッド。
感謝しなさいよね、バカ。

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