妖精の羽

ささみ紗々

山部潤の話

うーん……
俺はひとり顔をしかめる。そんなにやばいのかな、やっぱ。俺は春山生きてると思うんだけど。
まぁこんな状況に置かれたことなんて初めてだし、きっと混乱してるのかもしれないよな、俺の頭が。

「ふぅ、」
軽く息を吐いて俺は寝そべる。
大丈夫、すぐ帰ってくる。そうやって言葉をかけたいけど、なんだか話しかけちゃいけない雰囲気の七島と陸人。
チラッと横目で見ると、七島は今にも倒れそうな顔で手を組んでいた。まじでやばい。助けるべき相手はここにもいるんじゃないかってくらい。

「助かった、らしい」
旅館のエントランスから帰ってきた陸人が、息を切らせながら言った。

「今、電話かかってきた」
「それで今、柊二は!?」
七島は目を見開いて言った……というより叫んだ、に近い。

「ヘリに乗ってる」
ヘナヘナと力が抜けたように座り込む七島。
「良かった……」
小声でつぶやき、そのまま横になって、寝た。
「全くよぉ」
俺は笑いながら七島に近づく。
「七島もよく頑張ったよなぁ」
陸人もやって来た。
ふと隣を見ると、陸人の目には涙がこれでもかってほどいっぱい溜まっていた。今にも溢れだしそうだった。
なんだよ、泣くなよ……。
俺は俯いて七島の冷えた体に毛布をかける。ゆっくり休めよ、そう心の中で唱えながら。
「良かった、良かった……」
震える声で呟く陸人。
やめてくれよ、ほんとに。あぁもう……
「早く会いてえな、春山になぁ」
ほらきた。視界が滲んでくる。
なにか、なにか面白いこと考えなきゃ。なぁ、泣くなって。

ポタ。七島の枕のシーツが濡れた。あぁ、だからやめてほしかったのに。俺は泣きたくなんてないのに。

「堪えなくていいよ」

隣を見る。陸人はずっと俺の顔を見つめていたようだ。恥ずかしい。
「いつも皆を笑わせようとして」
陸人が俺の頭に手を乗せる。
「こんな時くらい無理すんな」
涙が溢れる。
「お前も不安だったんだろ?」
……そうか。俺は不安だったんだ。
「よ、良がっだ……春山、生きててよかっだぁ、」
「ほら拭け」
笑いながらティッシュを差し出してくる陸人。俺はそのまま甘えて、鼻からも目からもダラダラ水を流した。陸人も泣いていた。
春山は大事なやつだから。大事な、仲間だから。

「心配してくれる友達もいて、あいつは幸せなやつだなぁ」
と言って、陸人は涙を拭いた。すっかり赤くなった目を見る。優しい顔をしていた。

さあ、あいつに会いに行こう。

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