妖精の羽

ささみ紗々

岡野陸人の話

    七島は頼れるやつだ。出会った時からずっとそう思ってきた。でも今日わかった。七島は春山ありきの頼れるやつなのだ、と。
七島と春山は高校の時からの友人だったらしく、その2人に俺、岡野陸人ともう1人、山部潤が加わって、グループができた。2人はあまり話さない方だった……少なくとも俺と潤よりは。
でも二人とも凄くいいやつで、俺達はすぐ仲良くなった。
出会った頃よりは二人も明るくなったんじゃないだろうかと思う。


    旅館についた時、七島は普段通りを装っていたつもりだと思う。けれど……そうだな、弱っているのは目に見えてわかったし、いつもうるさい潤も、そんな七島を見て、元気づけるということさえしなかった。話しかけちゃいけない雰囲気だったからな。
「必ず、見つかるさ」
俺は独り言のように言った。誰も何も言わなかったから、結局独り言になったんだが。

    二日目は曇っていた。俺達はずっと祈り続けた。寝た方がいい、そう七島には言ったが「でも」と頑なに拒み続けて、結局起きていたのだろう。

    俺は布団の上で考えた。あいつは……春山は無事だろうか、と。根拠はないが、無事なんだろうな、と思ってくる。……根拠はないが。
   一昨日の夜、みんなで鍋を囲んだ時に、春山が言っていたことを思い出す。

「芳樹はァ、元々こんなんじゃなかったんだよなぁ!」

「髪の毛もモサくて、眼鏡かけてていーっつもうつむいててよぉ」

「気が合いそうだと思って話しかけたけど、結構勇気いったんだぜ??ははぁ」

なんだか前にも似たようなことを言っていた気がするが、すっかり忘れていた。
今の七島は髪を遊ばせていて、キリッと整った目鼻立ち、きっと一般に言う、大学デビュー……?
でも七島は真面目で、俺らのグループのまとめ役って感じの役回りだから、春山がいうことも納得できる。そんな七島をそんなふうに変えたのも春山なんだろうな、きっと。
あいつは、影響力があるやつだった。

「教師、なるんだろ……?」
ふぅ、とため息をついて、
「お前ならなれるわ。人の人生を変える力があるからな。」
伸びをする。

「だから早く戻ってこいよ」

「妖精の羽」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く