平凡な私が異世界で生きていくにはチート主人公に媚びるしかない!

tomayu

受勲式

部屋に朝日が差し込んでいる

もう朝?

「…んんっ」

上体を起こし部屋を見渡す。

部屋には私1人、どうやら上田くんは既に起きているみたいだ。

昨日はまさかムード作るだけ作って、寝落ちしちゃうとはね…

上田君には残念系主人公の称号をプレゼントするよまったく!

でももしあのまま続いてたら…

昨日の夜の出来事が鮮明に頭によぎり、
体温が上昇していくのを感じる。


お酒が入ってたからだとは思うけど、
いつも控えめなくせに急にグイグイくるのは
ずるい。

あの時私完全にに流されてたよね…

もうただのチョロインじゃん!

「うう…」

顔を枕に埋め足をばたつかせる

今日からどう接すればいいんだろう。

私の事を好いてくれているのは分かったけど、今だけかもしれないしヒロインだってどんどん増えてくるかもしれない…

まだ私がかませ犬になる可能性は大いにある。

つまり私はもっと積極的に行くしかないよね[

様々なラノベのヒロインを見て来たけど、
結構グイグイ行ってるもんね彼女達。

例えば胸を当てるとか…



そんなの無理っ!

出来るわけなでしょ!

恥ずかしすぎるわ ︎

「…何してるんだ楓」

「きゃっ⁈」

慌てて飛び起き、顔を隠すように手を構える。

「…なんだその変な構えは」

「う、上田君、 いつからそこに?」

「…1人で暴れていた時ぐらいからかな。 」

「さ、さいですか…」

そういうスキルでもあるのかってくらい、
この男は存在感無いな。

毎度毎度驚かされる。

「…昨日の夜のことなんだが」

いきなり来たな…。

思わず俯いてしまう。

「…昨日はひどく酔っていたみたいでな、
…その、すまなかった。」

「…うん」

心臓の鼓動が早くなって行くのを感じる。

上田君の顔がまともに見れない。

「……だがな、あの言葉に嘘はないつもりだ」

頭の中が真っ白になる。

でも何か答えないと!

「その、私も…」

「…メ、メイド達を外で待機させてある。
準備が出来次第行く。俺は外に出てるぞ」

「う、うん!」



上田君と入れ替わるように、年配のメイドと若いメイドが2人入ってきた。

「では柊様のお着替えを。手伝わせて貰います。」

メイド達は手慣れた手つきで、私の服を脱がせ始める。

「…あの、聞こえました?」

「…少し」

「あの英雄にアプローチを受けるなんて羨ましい限りです!」

若いメイドに嬉々とした目で見つめられる。

「英雄?」

「知らないんですか?だってあの人は…」

「マリー手が止まってますよ」

年配のメイドに注意され、見るからに落ち込んだ様子になっている。

メイドも大変そうだね…

着付けが終わり、鏡で自分の姿を確認する。

さすがの出来だな。

「ちなみに貴方も近頃街で、天使だなんて呼ばれている有名人ですからね?」

私の耳元で年配のメイドがボソッと呟く。

なにそれ初めて聞いたんだけど!

「それどこで…」

「では失礼します。」

メイドは一礼すると部屋から出て行った。

…行ってしまった。

天使って……

もはや嫌がらせでしょ……

「…終わったか?では行くぞ」

無言のまま、受勲式を行う玉座の間へと向かっている

すごい気まずいんだけど…

「ち、ちなみに私って今日どこにいればいいの?」

「…貴族達の列に一緒に並んでいれば良い。
 俺は受勲者だから別室にいる、何かあったら来てくれ。」

上田君と別れ、玉座の間にまで到着した。

すごい変な距離感になっちゃったな…

これはオペレーション変更だね……。

想像以上に意識してしまって、グイグイ行くどころじゃない。

中に入ると、両端には兵士が待機しており、
入り口から玉座まで伸びるレッドカーペットを隔てて貴族王族達が並んでいる。

圧倒的場違い感…

「ねえ、あんた!」

「はい!」

突然後ろから声がかかり驚いて振り向くと、
カールがかかった金髪の女性が腕を組んで、
私を睨んでいた。

「私に何か?…」

「とぼけんじゃないわよ!あんたが私のレオンを誑かしたって知ってるんだから!」

「えーと、貴方は?」

「私はシュヴァーベン公爵家次女
  リリー.・ロゼ・シュヴァーベンよ。
  レオンは私の婚約者なの!
  少し可愛いからって調子に乗らないでよ
  ね!」

レオンって確かあの侯爵様だよね。

婚約者いるのに私に求婚しに来たの?

うわぁ…

でも世界平和のために求婚して来たなんて言えないし、ここはなんとか誤魔化さないと!

「これはリリー様、お初にお目にかかります、私柊楓と申します。
先日レオン様は体調が悪かった私に、気づかって話してくれただけなのです。
それにしても、リリー様は愛されているのですね?少しの時間でしたがレオン様は、止まらぬ勢いでリリー様への愛を語っておりました。」

どうだろ?

リリーの顔色を伺うと、下を向いて指をモジモジさせていた。


「そ、そうなの?
  …えへへ、そうなんだ。
 やっぱりいつもは照れているだけなのね!
  疑ってごめんね楓。
 ではその、一緒にいませんか?」

はい余裕ー!

こういった事を中学の頃から何度も体験している私に、それはきかぬよ!

ご機嫌のリリー様について歩いて行く。

********************

勲章式開始より2時間が経過

冒険者が次々と呼ばれ国王より、勲章を受章をしている。

いや長いわ!

一々そんなに溜めを作る必要ある?

高校に居たハゲ校長のことを思い出。

何か勢いで参加した事を後悔してきたよ…

あっ、次上田君だ。

上田君も他の冒険者と同じ様に、レッドカーペットを歩いていき、王の前で跪く。

「月神帝よ、此度の魔王の中枢都市陥落作戦において 魔王軍一個師団の単騎での殲滅、
  及び、魔王軍幹部の討伐の成果により、月神帝殿に大一等勲章、金一封、騎士公を与える。」

なんかもう驚かなくなって来た。

だって上田君だよ?

上田君だったらやるでしょ!

あっ、次レオン様だ。

横でリリー様の怒涛の自慢が始まる。

レオン様が終わってますまだ半分くらいいる。

異世界にまで来てこんな事を体験するとはね…

もっとこう異世界らしい心踊る事をだね…

バンッ

扉が勢いよく開き、会場中の視線が集まる。

扉の前には迷彩柄の軍服を着た男が立っていた。

「緊急事態発生!王都に突如複数の魔物の出現を確認!」

もしかして今のフラグになっちゃった⁈

すいません神様!さっきのは嘘です! 

本当は平凡な日常が大好きなんです!

ってちょっと待って!

入ってきた兵士の顔をよく見る。

 伊藤君?

あれ伊藤君だよね?

オタクトリオを冒険者組合で全く見ないと思っていたら、城で働いていたんだ…

しかし迷彩柄の軍服って、ファンタジーの世界観ぶち壊しでしょ!

絶対山田君のせいだよ。

確か軍事オタだったもんね…

上田君もだけど、みんなやりたい放題し過ぎじゃない?


  




































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