異世界スキルガチャラー

黒烏

VS レイラ・リーブスパーク 1

「ねぇ、挑戦者さん。これから私と君で殺し合いをするわけだけど、何か言い残すことはある?」
「……まるで、お前が俺に勝てるみたいな言い方だな」
「そりゃあね。それくらいの自信ないとキミと戦おうなんて思わないでしょ。それに、ベネットの次にタイマン強いの私だし」

そう言いながら、レイラは少しだけ口角を上げて笑う。
実際に口角を上げたのは本当にほんの少しだけのはずなのだが、まるで口裂け女のように切り裂かれている口周りの皮膚のせいで、ニタリと不気味な笑顔を浮かべたように見える。

「君、今私の顔見てちょっと不気味に感じたでしょ」
「………」
「いいよ、全然そう思ってもらって。自分でもけっこう気味悪いって思ってるし、ていうか半分くらいそのために顔晒してるのもあるから」
「……そうか」
「ま、いっか。それじゃあさっさと始めよう」

静かに言い放ったその瞬間、啓斗が身構えるよりも早くレイラは啓斗の懐に潜り込んできた。

「んなっ!?」
「フッ飛ばしてあげる」

その手には、手のひらの中に収まるほどに小さな手榴弾が握られている。

『バカな!? 自分の腕ごと吹っ飛ばす気ですかコイツ!?』
「くそっ、防御が間に合わ……!!」

レイラが握りしめた手榴弾は、啓斗の顎に叩き付けられると同時に、彼女の腕を覆うほどの大きな爆発を引き起こした。
巻き起こった白煙により、一瞬で啓斗たちの姿が見えなくなる。

『さあ、レイラの挨拶代わりの爆撃が決まったぁぁ!! 普通の人間ならこの出会い頭の一撃で頭が消し飛びますが、今回の挑戦者はどうでしょうか!?』

2秒ほどして、煙が晴れる。
啓斗は、レイラから数メートル離れた場所に立っており、レイラの方も気味の悪い笑みを浮かべて啓斗を眺めている。

「危なかった……あとコンマでも反応が遅かったら死んでたな」
『ええ、そうですねー。でも、まっさか行動速度上昇系のスキルを全部同時発動してブリッジで躱すなんて、咄嗟によくできますね』
「まあ、本当に勘ってやつだ。最近、反射神経も良くなってるっぽいし」
『なんででしょーね、啓斗様がこの世界の感覚に順応し始めてるってことなんですかね』
「何でもいいが、今一番疑問なのは、あのレイラとかいう女の腕が無傷で残っていることだ」
『……あー、なるほど。啓斗様、どうやらあの女もベネットとかいうのと同じで「ただの人間」じゃなさそうですね』

ナビゲーターがレイラの腕を指さす。
その腕は生身の人間の物ではなく、ライトと星の光を反射してギラギラと光る、金属製の腕であった。
しかも、よく見れば右腕だけではない。両腕が謎の金属製のアームになっているのだ。

「コイツもアンドロイドなのか?」
「んー、半分正解かな。正確に言うと、両手両足と両目を失った女の子に、機械の四肢と目ん玉くっつけただけの人間かな」
『なんでこの距離の独り言聞こえてんですかね……』

すると、レイラのアームの手のひらが開き、新たな爆弾が握られる。
彼女はいきなりピンを引き抜いたかと思うと、啓斗に向かって高速で投擲してきた。

「マッジかよ!?」
『逃げて、逃げて! 超逃げてぇー!!』

非常に正確に啓斗の足元に転がってきた爆弾は、啓斗が回避行動を行った次の瞬間にもう爆発した。

『あぁ、惜っしー! さすがは今までの挑戦者の中で最強クラスと皆様方と私たちが認めるだけあり、簡単には死んでくれません!!』
「アハハ、ヴェローナったら言ってくれるねぇ。そんな風に解説されちゃあ、このショーの成功失敗とか抜きでプライドが負けを許せなくなっちゃうじゃん」

レイラは今度は両手から爆弾を同時に取り出すと、右手に持つ方は啓斗に投げつけ、更に左手に持っている爆弾はサッカーボールのように蹴りつけてきた。

『緩急つけてきました! 啓斗様、どうにかして避けて!』
「チッ、緩急の『緩』も『急』も両方高速過ぎんだろ!」

啓斗は、1発目を【ジャストシールド】を展開することで辛うじて防ぎ、2発目は横に回避しようとした。
だが。

「……起爆」

レイラが指を鳴らすと同時に、啓斗の眼前で爆弾が起爆する。
凄まじい爆発音が起き、咄嗟に腕でガードした啓斗は10メートル以上吹っ飛ばされた。

「ヒヒ、命中ぅー。あ、でも致命傷にはなってなさそうだね」

啓斗は、何のスキルも発動しない状態の生身の腕で爆発を防御した。
もろに爆風と火炎に晒された彼の両腕は、火傷と爆弾の破片によってズタボロにされてしまった。

「さ、これで小賢しい真似はできないね。あとはじっくり料理すれば、一丁上がりだよ」

また手の中から爆弾を取り出しながら、レイラは啓斗に向かってゆっくりと歩いて近づいてきた。

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