異世界スキルガチャラー

黒烏

『猫人型違法改造アンドロイド』ベネット

「ニャハハ! さあ、今度こそブッ殺してあげるのニャ! 覚悟するニャー!!」
「そうなる前に死ぬのはお前だ! 覚悟はそっちがするんだな!」

啓斗が【爆熱拳バーニングフィスト】を再発動させて構えるのと同時に、ベネットの両腕から蒸気のようなものが噴出しだす。

「どうにもキミは殴り合いにとっても自信があるみたいだニャ。それじゃ、真正面から殴り殺してあげるニャ。人間の弱さと限界を思い知るといいニャ」
「殴り殺す? やってみろよ、後悔しても知らねぇぞコラァ!!」

両者同時に走り出し、そのまま同じタイミングで互いの頬に拳を叩き込む。
ベネットの顔面は再び爆発したが、啓斗の方は彼女の腕から噴出している蒸気の噴出速度が上がったのを感じると同時に、ジェット噴射で飛ばした鉄の塊に顔を吹き飛ばされたような感覚に陥った。

「ガブッ!?」
「……だからさぁ、キミじゃアタシには勝てないって言ってるニャ」

腕に内蔵されている小型ジェット噴出装置を使った右フックで啓斗を殴り飛ばしながら、ベネットは笑みを崩さずに言った。

「キミが変わった能力を持ってて、アタシを本当に驚かせてるのは認めるニャよ? でも、それだけだニャ。ビックリ箱なんて2回開けたらもう飽きちゃうニャ。それとおんなじニャ」
「ぐ……くそ……うぐぅ……」

骨折までは免れている(ダメージ50%カットスキルを常時発動しているからだ)ものの、一時的に立ち上がることすらできないダメージを与えられてしまった。
前後に揺れる視界と朦朧とする意識の中、ベネットが近づいてくるのを感じる。

「……キミ、最初に会った時にはこんな無茶な真っ向勝負するような人間には見えなかったんだけど、大分荒い人みたいニャね。そんなんじゃ、機械には絶対勝てないニャ」
「殺……し、て、やる……」
「ムキになりすぎだニャ。戦いっていうのは頭をクールに保つのがコツなのにニャ。それじゃ、あの世で永遠に……頭を冷やすニャア!!!」

「キィィィィン……」というような音を腕から立てさせながら、ベネットは拳を振り上げる。
そして、まさに「音速」というにふさわしい速度で啓斗に叩き込まれた。






「……畜生、この俺が、この俺が!!」
「まあまあ落ち着きなって。ここでこの判断をした君は懸命だと思うよ」
「……俺の存在意味が全部なくなっちまった気分だよ」
「そんなに落ち込まないで。ほら、ボクたちは一旦お役御免みたいだし、奥に引っ込もう? 慰めてほしいなら、のボクがいくらでも」
「気持ちわりーんだよ。オラ、行くぞ」
「……そうだね。行って、また待とうよ。チャンスはまだまだあるはずだしさ」




「ニャッ!? ギイィィィィ!!???」
「……【ジャストシールド】。勢いがつきすぎたみたいだな、〈型番No.79022〉さんよ」

啓斗に向かって叩き付けられた拳は、突如張られたシールドによって防がれる。さらに、その超硬質のシールドを殴りつけた勢いと力が強すぎ、ベネットの右手のパーツは破壊されて吹き飛んだ。

「グギギギギ……! いきなり何するニャ!」
「俺はただ、自分の身を守る行動をしただけだ。勝手に自滅したのはお前の方だろう?」
「ニャヒヒヒヒ……まあ、間違ってないかもニャ。あーあ、まさか自分で自分を壊す羽目になるとは……」

会話の中で、啓斗はベネットの右腕から液体も漏れ出ていることに気が付く。咄嗟に液体を【解析】すると、身動きを円滑にするための油であることが分かった。

(あのオイルが奴の身体能力に影響しているなら……よし、好都合だ。一瞬でカタをつけられる)

そして啓斗はいきなりベネットに急接近すると、スキルを使ってナイフを一本取り出し、「自分の左手のひら」に突き刺した。
突飛な行動に反応が一瞬遅れたベネットの隙を突き、血が噴き出す手のひらを破壊された右腕部に押し付ける。
そして、トドメとなるスキルを発動した。

「外からの攻撃を防御する装甲は強そうだが、中身はどうだ? 喰らえ、【緋色クリムゾン銃弾バレット】を!」

弾丸となった啓斗の血液は、油を通すための管に入り込み、内部からベネットの機能を破壊する。
その威力は絶大だったようで、ベネットはいきなり口から煙を出して後ずさりしだした。

「エラー発生、エラー発生! 想定外、の、内部損傷……修復、フ……カ……ノ……アアッ!!」

その言葉を最後に、ベネットは糸が切れた操り人形のようにその場にへたり込むと、一切の活動を停止した。

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コメント

  • ノベルバユーザー239457

    くろうやっぱすごいね~♪また遊ぼうね?投稿頑張ってね~

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