異世界スキルガチャラー

黒烏

ジャンキーズ・パーティナイト 4

「……すまねぇ、助かった」
「勘違いするな。私から見れば貴様はあの狂人どもと同じテロリストなのだからな」

ミューズに落下から救われた啓斗は礼を述べるが、向こうは彼の方を向きもしないで言葉を返してきた。

「私はただ、容疑者に勝手に死んでもらっては困るから命を助けただけだ。この騒動が収まったら全員逮捕してやる」
「……怖いねぇ。じゃ、その警官としてのアンタの考えを尊重して、俺もあの赤髪猫女は殺さないように戦ってやるよ。なるべくな」
「勝手にしろ」

そう言うとミューズは、ルカを攻撃しているレイラとヴェローナに向かって走っていく。
啓斗からは、ミューズの履いている靴の踵のあたりから風が噴射されているのが感覚として分かった。

「ニャハ! ラッキーで生きてたのにはびっくりしたけど、アタシと戦うのには力不足なんじゃないかニャ?」
「アイツ、【爆熱拳バーニングフィスト】を顔面に直撃されて無傷で笑ってやがる……」
『この前あそこまでダメージを与えられたのは、MPを大量に使って【エクスプロージョン】を唱えたからだ。おい、ちょっと【解析アナライズ】をベネットに使ってみろ』
「俺に命令すんなって言ってんだろ!」
『いいから黙って使え!! 確実に勝つためには絶対に必要なことなんだよ!!!』

普段冷静な啓斗が本気で出した大声に、常に声を荒げているこの青年も一瞬怯んだ。

「……くそっ、ここまで本気で命令されたらじゃ逆らえねぇ。【解析アナライズ】発動!」

目の前の敵を解析し、ベネットの情報を得る。

型番No.79022
種族  違法改造済アンドロイド
Lv(該当無し)
HP(エネルギー残量):98%
MP:無
P・ATK:A
M・ATK:無
DEF(装甲耐久力):S
DEX:B+
SPD:S-
LUK:無

魔法属性適正
機械のため該当無し

状態
装甲破損度:0%

『一言でいえば「異常」だな。生半可な攻撃じゃまともにダメージを与えられなさそうだ』
「それでもアイツは倒して情報を聞き出さなきゃならねぇ。絶対に勝つ!」
『残りMPに注意して戦え。MPが切れたら俺たちはただの非力な高校生のガキなんだから』
「ああ、だったら全開で潰すだけだ!!」




「ミューズ・ブルーワース、警官としての任期は未だ短いものの、その執念深さと判断力の早さで期待の新人と呼ばれている。最新式の装備の扱いにも長け、新人たちの中では頭一つ分以上抜き出た才覚を持つ」
「……レイラ、とかいったか。ジャンクヤードの住人がなぜ私の素性を知っている?」
「私たちはあなた達より何倍も多くこの国で起きている事柄を感知できます。法でがんじがらめにされていないが故に、街中に〈網〉を張れるのです」
「どういう意味だ?」
「私の仲間は、表の世界で生きている奴らでは到底太刀打ちできない天才だけです。たった1人の警官が首を突っ込んで生き残れるほど、甘くないのですよ?」
「私に脅しは通用しない。私は、必ず貴様らを刑務所に叩き込んでやる!」

拳銃を構えて威嚇するミューズと、ガスマスク越しゆえにその感情が読み取れないレイラは、まだどちらも動いていない。


「ヒャヒヒヒヒヒヒ! バンバンバンバンバンバーン!!」
「くうっ!?」

超至近距離で半龍化状態のルカと互角の身体能力で渡り合いながら、蹴りや肘鉄に混じってメチャクチャに銃を撃ちまくるヴェローナ。
ルカも確実に反撃しているはずなのだが、その華奢な体格に見合わないほどの防御力も持っており、ルカの方が防戦一方にされている。

未だ終わりの見えない、燃え盛るホテルの屋上での戦いは、遂に3対3の様相を呈して局面が動き出そうとしていた。

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