異世界スキルガチャラー(旧バージョン)

黒烏

スターアライヴ脱出作戦 3

「がっ……ああっ……」
「即効性の麻痺弾を撃ち込んだ。しばらく貴様の右足は機能しなくなる」
「そーかよ。だが、どんなものにも使い道ってのはあるんだぜ!?」

右足の感覚が無くなったのと同時に、勢い良く前のめりになって両腕をバネにして逆さのまま飛び上がると、感覚が無いゆえに伸びきった状態の右足を叩き付けるように振り下ろした。

『攻撃うまっ!? キミ、昔から喧嘩強かったけど、そこまで身体能力自体は高くなかったはずだけど……』
「だあぁ! 今戦ってんだからお前は黙ってろ!」
『はいはーい……』

右足が肩にクリーンヒットしたが、ミューズの方にダメージがあったような様子はない。ミューズが身に付けているライダースーツは、見た目の何倍も硬質な素材で出来ているようだ。

「無駄だ。この最新型特殊装甲は人間の如何なる体術と、民間で手に入る程度の銃火器は無効化できる」
「そうかよ、じゃあ無防備の顔面はどうだ!?」

サングラスしか着用していないために、外見的には顔面の防御力は無さそうだと判断し、そのまま力の入る左足を支えにしてまた右足を叩き付ける。
だが、ミューズの顔を中心とした球状のバリアのようなものが現れ、それに反射されるように部屋の外まで吹っ飛ばされてしまった。

「なにっ!?」
「……抵抗は無駄だ。最後のチャンスをやろう、大人しく投降しろ」
「やなこった……」

右足が完全に痺れていてまともに立てないため、片膝立ちのような状態で辛うじて回避の構えを取る。

「そうか、では荒っぽい手段を取らせてもらう」

が、【トリプル・スピード】を使用しているとはいえ片足での回避は困難だったようで、ミューズが連続で撃ち込んだ弾丸4発全てを喰らってしまった。

「う……が……」
「これで貴様はもう動けない。さあ、もう1人の女の居場所を吐いてもらおうか」

弾丸は左腕・右腕・左足・胴体に撃ち込まれており、その全てに含まれる麻痺作用によって、撃ち込まれた者の頭部以外の自由を奪った。
そうして動かなくなった「容疑者」に尋問を行うために、ミューズ・ブルーワース巡査は弾丸を装填しながら廊下に出た。




ほんの少しだけ時間は前後する。
ルカは、全力疾走で廊下を移動し、階段を発見してそのまま駆け上がった。
上階は、啓斗が言ったとおり、監視カメラも作動している様子もなく、さらにまどもいくつかが開いている。

「よし、ここから……」

開いている窓から外に出ると同時に翼を生やすと、一気に上昇して屋上を目指す。
次の瞬間、啓斗がいる250階から派手な爆発音が響いたために戻ることも考えたが、彼の命令を守ることが優先されると判断して上昇を続けた。


「よし、着いた。あとは地震を……」

数分かけて屋上にたどり着く。
屋上はただのコンクリートの床だけがある殺風景な場所で、元々人が来るのが想定されていないのか安全用の柵すら設置されていなかった。
だが、そこに何か、いや誰かがいる。うずくまって作業をしているようで、こちらに背を向けてルカに気づいてはいないようだ。

(私が飛んでようやく来れた場所に既にいるなんて……いったい何者?)

訝しみながら一歩前に出た瞬間、「ザリッ」というような音が鳴る。
その小さな音を耳で拾われてしまったようで、屋上の先客はこちらを振り向いた。

「誰ですか? 私の計画を知っているのは仲間の皆さんだけのはずですが……」
「…………」

その声はこもって聞こえたが、確かに少女と思わしきものだった。
しかし、その服装はルカが今まで生きてきた人生で一度も見たことのないもの。
ルカは見たことが無いので彼女視点で説明すると難しいため、俯瞰的な視点で彼女の容姿を説明する。
長袖長ズボンの明らかに仕掛けがありそうな服を着ていて、何やら変なデコレーションが施されたヘルメットを被っている。
そして、声がこもっている要因にもなっている真っ黒なガスマスクが、彼女の異様さを引き立てていた。
ルカはまだ気が付いていないが、この少女の足元には様々な武器が散乱している。
スコープの付いたスナイパーライフル、現代なら軍用マシンガンとして使われるであろう機関銃、両腕に装着できるようにベルトが付いているガトリング砲など、この少女の体躯には合わないような火器や兵器が置いてある。

「貴女、誰なの? 一体何をやっているの?」
「最初の質問には回答を控えます。2つ目の質問の返答と致しましては、私個人の独断と偏見、そして私怨による動機をもってとある任務を実行しております。内容は申せませんが、成功すればこのビルは粉々になるでしょう」
「それをしたら、中にいる人はどうなるの!?」
「死ぬでしょうね、例外なく。準備は終わったので、あとはこのスイッチを押せばジ・エンドですよ」

そう言われた瞬間に、ルカの体は勝手に動いていた。
両脚を即座に龍化させると、少女にタックルをかまして吹き飛ばし、スイッチを奪い取った。

「これは壊さないと!」
「無駄ですよ、私が作った特製の起爆スイッチですからね。ちょっとやそっとじゃ破壊できない素材で作ってありますからね。それと……」

そう言いながら、この少女の姿と屋上に散乱する銃火器全てが景色に溶け込むようにして消えていく。

「私の計画を邪魔したため、あなたの排除を執行します。では、さようなら」

気づけば、ルカの足元には無数の手榴弾が転がっている。
次の瞬間、それは一斉に爆発した。

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