異世界スキルガチャラー

黒烏

スターアライヴ脱出作戦 1

「しかし、セキュリティがめちゃくちゃなレベルで高いな……」

啓斗が【分析アナライズ】で得た情報によれば、監視カメラは部屋から出た外の廊下中に仕掛けられているようで、全てに映らないようにするには相当苦労させられそうだ。

「単純な作戦だが、監視カメラに映らないくらいのスピードで走るくらいしか無さそうだな」
「自信はあるよ。だけど、ドアが開閉するところを見られたらまずくない?」
「そこで、作戦だ。俺が囮になる捨て身の作戦だけどな」
「ど、どういうこと?」
「つまりだな……」

啓斗がルカに話した作戦を簡単にまとめるとこうなる。
1.部屋から出た瞬間にルカは全速力で上階へ向かい、啓斗はその場で少し暴れる。
2.駆けつけるであろう警備を啓斗が捕まる又は上手く立ち回って足止めし、その間にルカは屋上へ。
3,ルカが地震を発生させてホテルを混乱に陥れ、啓斗は窓を破壊して脱出。

「足止めしてる間に俺は自分がヴァーリュオンからの使者ではなく、テロリストだというふうに嘘をつく」
「そ、それって大丈夫なの!?」
「この方がジャンクヤードに逃走するのにも都合がいいし、後から来る皆に迷惑がかからないはずだ」
「……分かった。じゃあ、行こっか」

啓斗とルカは深呼吸を1つすると、部屋のドアを開ける。

「よし、作戦開始だ。頼むからお前だけは捕まらないでくれよ」
「うん、ケイト君も無事でね!」

同時に頷くと、ルカは一瞬で両脚を龍化させ、目にも止まらないスピードで走り去って行った。

「さて、じゃあ俺は……」
(おい、ちょっと待て。暴れるなら俺に代われ)

いきなり体内から聞こえてきた声に、啓斗は非常に驚いた。

「本気か? これは敵を吹き飛ばすんじゃなくて気を見計らって逃げるんだぞ?」
(アホ。それくらいの冷静さくらいある。それに、悪役ぶるなら俺の感じの方が印象悪くできるだろ)
「……了解だ、ルカに注意が行かなくなるくらい徹底的にやってくれ。MPの温存も忘れるなよ」
(暴れるのは任せろ。温存に関してはあんま期待すんなよ)

その言葉を聞くと同時に、「啓斗」はスイッチが切れたように意識を失う。


次に目を開けた彼は、少し前に人格を切り替えた時のように様子が変わっていた。
目付きが威嚇するような鋭いものになり、素体は同一人物なのにも関わらず別人の雰囲気をまとっていた。

「そんじゃま、一発かましてやりますか。アイツと俺は目を付けるスキルが違うからな、ようやく試せるぜ……」

そう言ったかと思うと、いきなり壁に設置されている警報装置に向かって蹴りをかました。
ウー、ウー、ウー、というサイレンの音が響き渡る。

「あー、うるっせぇな。だがまあ、陽動するならこれくらいが適切だろ」
『うーわ、やっぱ乱暴だねー。ボクとは大違いだよ』
「お前もうるせぇな。電話越しみたいな感じではっきり喋ってくんじゃねーよ」
『まーまー、今は「彼」の無意識的な制御が外れてるから良いじゃない。それに、ボクがサポートしないと君じゃ3分で捕まっちゃうよ』
「余計なお世話だよ、俺もあのスキル入手用の便利アイテムは取り戻したいからな、無茶はしねーって」
『昔から君の無茶しないは信用出来ないって知ってるから。しっかりサポートさせてもらうよ』
「チッ……好きにしろ」

けたたましい音の中、他人から見れば独り言にしか見えない会話をしながら、はっきりした啓斗の中にいる、呼び名も未だない青年は「大暴れ」を開始した。










『新しいコネクターと接続しました』

「忘れられし怒り」 NO NAME レベル1
「封印されし笑顔」 NO NAME レベル1

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