異世界スキルガチャラー(旧バージョン)

黒烏

「命」か「力」か

「その子の体内にはあと6発、起爆してない弾丸が残ってるニャ。これゼーンブ一気に爆発させたら、間違いなく生命活動は停止するニャよ?」

まだ眼球が残っている方の目をギロギロとさせてこちらを見つめながら、この機械とも生命体とも区別がつかない猫耳の敵はケタケタと笑う。

「あと1分だけ考える時間をあげるニャ。もし0.1秒でもそこを超えたら、そっちの女の子の命は無いって思うニャ。はい、スタート!!」

合図された瞬間に、啓斗は脳をフル回転させて考え出す。もちろん、この状況で可能な最も被害が少なく済む行動の選択についてだ。

(マズ過ぎる状況というのが最初の前提だ。クソッ、【エクスプロージョン】でMP
を全て使ったのは迂闊だった!!)
『まあまあ、そう焦らない焦らない。ボク達も一緒に考えるから一旦落ち着こうよ』
『どうにもならなかったらその時はその時だがな』

切羽詰まった啓斗の脳内に声が響く。この少々高めの少年のような声は、彼の中でのみ発せられ、彼にしか聞こえない声だ。

(お前らか、今の状況は理解してるな?)
『モチロン。君が大事に大事にしてるエルフの子が大ピンチで、彼女を助けたかったらボク達が戦ったりするのに必要不可欠なそのハイテク腕時計を渡せって言われてるんでしょ?』
(そういうことだ。しかも、さっきの渾身の攻撃で俺はMPが空になって、小さな抵抗すらできるかどうか怪しいって感じだ)
『あー……こうなったら一旦諦めて腕時計渡しちまえよ。どうせ偽善者なお前のことだ、その女を見捨てるのは無理だろうよ』
(しかし、この腕時計は俺がこの世界に存在するのに必要なものだ。もし取り返せなかったら俺は……いや、お前達も含めて終わりだぞ)
『でもさぁ、あの大爆発をまともに喰らって死んでないくらい不死身な奴だよ? 今、無理に抵抗したところで一緒に殺されるのは目に見えてる』
(なら、どうすればいい!)
『そうだねぇ、馬車に戻ればMP回復手段もあるだろうし、いったん渡してすぐにあとを追いかければいいんじゃないかな』
(そう都合よくいくと思うか?)
『他にいい案もないんだし、物は試しさ。それに彼女の命は失いたくなくても、くらいボク達は昔からやってたじゃないか』

脳内でその言葉が響いたとき、啓斗は記憶の扉をドンドンと叩くような激しい頭痛を感じた。
とても大事な、そう、思い出さなければならない何かが頭の中に欠けている。だが、深く考える時間は今は無かった。

「さて、あと15秒で1分だニャ。急いだほうがいいニャー」
「……分かった」

苦々しい顔のまま頷くと、左手首に巻いた腕時計を外す。そのまま、目の前に立つおぞましい外見をした敵に投げ渡した。

「ニャハ! キミが素直で助かったニャ! それじゃ、約束通りアタシは帰るニャー」

投げられた腕時計を受け取ると、少女は自身の踵に触れる。
すると電子音が鳴り、その体が宙に浮きだした。

「それじゃ、さよならニャー。あ、コレ取り戻したかったらアタシの所まで来るといいニャ。キミ達、なかなかミドコロあるし!」

徐々に高度を上げながら少女は去り際に告げる。

「アタシはベネット・レッドクルー。マギクニカのジャンクヤードに住んでるニャ。もし来たら、その時は本気で殺して実験材料にしてあげるから、ぜひ来るニャ。それじゃあニャー」

ふわりと回転して向きをマギクニカの方向に変えた後、踵からジェットのように炎を噴射しながら高速で飛び去って行ってしまった。

「ベネット・レッドクルー……必ずこの礼はさせてもらうからな……」

啓斗はベネットが飛んで行った方向を睨みつけてそう呟くと、うずくまったままのルカを抱えて丘の斜面をゆっくり降りて行った。





「そういうわけで、俺はすぐに敵を追わなきゃならない。魔力を回復できるものは無いか?」

啓斗は馬車隊に戻ると事の顛末を報告し、他の団員たちに的確に指示を出しているゼーテに魔力回復のためのアイテムが無いか聞いた。

「……あるにはあるけど、ほんの少しよ? アンタの内臓魔力量に見合うのは無いと思うわ」
「少しでいい、分けてくれ」
「ハァ、分かった。アンタが強情なのは知ってるし、止めれないわね。ちょうど……あったあった。一粒食べればそれなりには回復するでしょ、1缶あげるわ」

渡されたのは、現代で言うならば「サクマドロップス」が入っているであろう形状をした缶だった。中には飴らしきものが入っている。

「悪いな、じゃあ、マギクニカで会おう!」

早速一つ噛み砕くと、少しだけMPが回復したのを感じた。そのまま、つい先日入手して「運転できない」という理由で気が進まなかった【サモン・ビークル】を発動する。
すると、目の前にあのベネットが乗ってきたのと似たバイクが出現した。

「あとは勘で何とかするか……行くぞ!」

数分もたついた後にエンジンをかけると、フルスロットルでバイクはマギクニカに向けて発進した。

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