異世界スキルガチャラー(旧バージョン)

黒烏

「灼炎」 ラビア・ムルキベル

「兄さん、そういや名前はなんていうんだ?」
「俺は藤崎啓斗だ、呼び方は何でもいい」
「りょーかい、じゃあケイ兄さんって呼ばせてもらうぜ。多分昨日言ったけど、オレはラビア。ラビア・ムルキベルだ。よろしくな」
「ああ、よろしく。で、どう戦うんだ? 作戦は?」
「作戦なんてねぇよ。とにかく、ぶっ飛ばすだけだ!」

ラビアはそう言うやいなや、立ち上がったギガンティスの腹の下に潜り込む。
150センチメートル前後と思われる低身長で、ラビアの身長とほぼ同じ長さを持つ柄、その柄の1/3ほどの長さと彼女自身の胴体の倍以上はある横幅を持つ頭部が付いた大槌を右手だけで軽々と担ぎ、更には啓斗よりも素早く動くのだから、彼女の筋力は尋常でないことが理解できるだろう。

「全身丸焼きにしてやるよ! 【バーニングフレア】!!」

左腕を真上に掲げて呪文を唱えると、左手のひらから吹き上がるように火炎が放たれ、ギガンティスの腹部を覆い、焼いていく。

「……少し異常にも見えるが、これがムルキベル家の力ってことか。よし、【分析アナライズ】しておこう」

啓斗はラビアに向かって【分析アナライズ】を行使した。


ラビア・ムルキベル
種族  ヴァーリュオン人
Lv28
HP:1415/1415
MP:1100/1200
P・ATK:A
M・ATK:A
DEF:C
DEX:C
SPD:B
LUK:C

魔法属性適正
火:SS 水:C 風:C 土:C 光:C 闇:D 無:C

状態:正常

特殊スキル
【フレイムマスター】
火属性の攻撃の威力が常時1.5倍になり、火属性魔法の消費魔力が30%減少する。

固有スキル
【炎と鍛冶の神の加護】
火の魔法属性適性がSSになり、火炎の温度を2000℃まで上昇させることができるようになる。
魔法【神聖なる種火】を習得・行使するのに必要なスキルである。


「まさに火炎のエキスパートってところか。特殊・固有スキル共に火の魔法の威力を上昇させるためのものだ。【神聖なる種火】っていうのが気になるが」

啓斗は再び剣にバフをかけるが、【大切断】【飛翔する斬撃】【切断力増強】だけに留めて【フレイム&フリーズエンチャント】は使用しなかった。

「俺の残りMPは……」
『4200ですよ、啓斗様。しっかしまあ、面白いことになってますねぇ!』

腕時計を確認しようとした瞬間、文字盤から飛び出るように出現したナビゲーターに啓斗は驚きを隠せなかった。

『いやー、すいません。ここ数日バタバタしててご連絡できませんでした。お詫びとしてまた昨日のアップデートを……って、なにポカンとしてんですか』
「何でもない。それで、アップデートの内容は?」
『あー、今はお忙しそうなので後にしましょうか。というか何がどうなったらこんな平和な場所にギガンティスが出現するんですかね?』
「俺が分かるわけないだろ」

【飛翔する斬撃】の効果を活用し、遥か上方にあるギガンティスの頭部に向かって剣を振る。勢い良く飛んだ斬撃は、巨大な敵の左目に直撃した。

『おお、ナイスコントロール! さては啓斗様、剣の扱いに早くも慣れ始めましたね?』
「この剣が振りやすいっていうのもあるな。あのラビアって少女、しっかり武器屋としての眼も一級品らしい」

すると、ラビアが啓斗に向かって大声で話しかけてきた。

「なあなあケイ兄さん、ちょっちお願いがあるんだけどさー!」
「何だー!?」
「コレ、預かっててくれ!!」

そう言ってラビアは彼女が持っていた大槌をやはり片手で啓斗に投げてよこしてきた。
彼の少し前に落ちた大槌は、「ドスン」という大きく鈍い音を立てる。

「でさ、オレこれからめっっっちゃ上までジャンプして攻撃するから、今のうちに攻撃するならしといてくれ!  多分オレが一発でやっちゃうけどさ!」
「分かった、出来るだけのことはする!」
「頼むぜー! あ、これはできればでいいんだけど、そのハンマー、跳んだ後のオレに向かって投げてくれると助かる! 攻撃力爆上がりすっからさ!」

そして彼女はギガンティスの脚を物凄い速さでよじ登り始める。あっという間に背中まで到達し、そのまま真上に向かってジャンプした。
ギガンティスが大体7階建てのマンションと同程度の体の大きさと考えると、ラビアは13階くらいの位置に相当する高さの空中にいる。

「やれやれ、こんな重量の物をあそこまで投げろなんて、無茶言いやがって……」
『あ、啓斗様がそうおっしゃると思いまして、勝手ながら私が今【技能変貌スキルメタモル】して作っときました。はいどうぞ』
「いつもお前は余計なところでだけ気が利くな、全く」
『いやー、それほどでも』


SRスキル【ハイパースロー】
発動すると投擲とうてき能力が一時的に20倍に跳ね上がり、コントロールも同程度まで上昇する。


「野球選手が知ったら喉から手が出るくらい欲しがりそうな能力だ……な!」

投げる力は上がったが持ち上げるほうの腕力は上がっていないため、投げる構えまでもっていくのに相当苦労した。
なんとかこの巨大な槌を持ち上げた啓斗は、そのままラビア目掛けて全力で投げる。見事にそれは彼女の手元に飛んできた。

「ナイススローすぎね? やっぱあの兄さん、只者じゃないな」

ラビアも完璧に槌をキャッチすると、柄の端を両手で持ち、槌を叩き付けるような構えを取る。



「よし、このタイミングが良いだろ。ナビゲーター、今すぐ通信をルカに繋げ!」
『はいはーい! 繋げましたー!』

ギガンティスの攻撃が届かない程度離れた場所から啓斗たちを見ていたルカに、啓斗から通信が入る。

『ルカ、今だ、やってくれ!』
「うん、分かった! 行くよ!」

ルカは、右腕を地面スレスレを拳が通るほど大振りで突き上げた。

「【隆起するグラウンド大地アッパー】!!」

叫んだと同時に、ギガンティスの足元の大地全体が勢いよく持ち上がる。
そのままこの巨大モンスターを空中へと打ち上げた。

『うっはー! 凄い威力!』
「本当はこれに俺が斬撃を合わせる予定だったが、こっちの方が良いだろ。ラビア、段違いなのを見せてくれ!」



「そこまで舞台整えられちゃ、答えないわけにはいかねぇよな!」

ラビアが両手に力を込めると、大槌が啓斗の【フレイムエンチャント】が比較にならないほどの業火を纏う。

「燃え尽きやがれ! 必殺のぉ……【ヴォルカニック・メテオ】!!」

振りかぶった勢いそのままに、燃え盛る大槌をギガンティス目掛けて全力で投げつける。
縦に高速回転しながら飛んだ槌が体に触れた瞬間、ギガンティスは巨大な爆発音と共に全身を大炎上させた。
しかし、火炎は空中を落下している間に残り火も無く消え、地面に落ちてきたのは炭のように真っ黒になった死骸だけだった。






「消し炭一丁上がりってな。ちょっと火加減強すぎたか?」

あれほどの大爆発を引き起こしておきながら傷一つ見当たらない槌を死骸から持ち上げると、ラビアはニシシと笑った。

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