異世界スキルガチャラー

黒烏

100連目 The all begin

第1部 0章 「全ての始まり」




カチカチ……カチカチ……
照明を切った部屋にマウスのクリック音だけが響く。
パソコンを操作しているのは、藤崎ふじさき 啓斗けいと、17歳。
世間は既に夏休み。
今日やると決めた分の学校の課題も片付けたので、趣味のネットサーフィンに没頭しているところだ。
服装は、手近にあったTシャツとハーフパンツを適当に着ている。
ゲーム攻略サイトのリンク先にあった動画を見ようとすると、

《おめでとうございます!抽選の結果、あなたが当選致しました!》

というポップアップが突然表示される。
その字の下にはURLが表示されており、クリック出来るようになっている。

「何だこれ……古めの手口の詐欺か?」

ポップアップを消そうとするが、何故か右上の赤い×をクリックしても消えない。

「おいおいおい、マジかよ」

啓斗は、パソコン自体の電源を切るか、このURLのリンク先に飛ぶかしばらく迷った後、好奇心と再起動が面倒という考えに負け、URLを押すことにした。
少し深呼吸しながらマウスカーソルをURLに持っていき、素早くダブルクリックした。

「な……!」

瞬間、目が眩む閃光に包まれる。
5秒後、光が収まった部屋は誰もおらず、パソコンの電源も消えていた。












「……ん……あ?」
「おや、お目覚めですね!」

啓斗が目覚めると、目の前には少女、そして周りには真っ白な空間が広がっていた。

「では、改めまして……当選おめでとうございます!貴方様には異世界への転移権限がプレゼントされました!」

少女は満面の笑みを浮かべながら高らかに叫ぶ。

「………は?」

勿論、啓斗は状況を全く飲み込めていない。

「「は?」じゃないです。全く、最近の奴らは理解力が低くて困りものですねぇ」

少女は苦々しげに言う。
少女の外観は、150cm程の身長に、真っ白なワンピース、金色の瞳、整った顔立ち、さらに白髪と、どこか神秘的なものがある。

「まぁ、初っ端から突然こんなこと言われても困惑する人の方が多いか……」

ただし、口調のせいでかなりイメージが崩れている。

「じゃあ、説明しますね。貴方はまあ、とある企業秘密な事情で転移権限を持った人間として登録されることになったんです。普通の人間には1000%不可能なことなんですから、ありがたく思ってくださいよ。
そして、私はそういうイレギュラーな方々に異世界の説明をする、所謂いわゆる「ナビゲーター」です。以後お見知りおきを」

少女は優雅に一礼する。

「あー……つまり、俺は異世界転移した……ってことでいいか?」

啓斗は恐る恐る聞く。

「まぁ、ざっくり言うとそんな感じですね」

少女は何も特別感なくあっけらかんと言い放つ。

「じゃあ早速異世界の解説を始めます!一回しか言わないのでよく聴いてくださいよ!」

啓斗は戸惑いつつ頷く。

「では!(ここで小さく咳払いをして)これから貴方が行く世界は、魔法や妖怪、呪い、魔物など、貴方達の「空想」が現実になったものだらけです。
そして、貴方にはそこで生き抜いてもらいます。まあ、色々探せば元の世界に戻る方法も見つかる……かも。そこは実際に頑張ってみてください」

少女は少し意地悪そうに笑う。

「はい、重要なのはここから! 元々異世界の住人ではない貴方は、異世界で手に入るスキルや魔法に適性が一切ありません!」

告げられる絶望的な言葉に、少しのんびり話を聞いていた啓斗は思わず話を遮る。

「おい、ちょっと待て。じゃあどうやって生き残れって言うんだ!?」
「ですから、それを今から説明するんです!」

少女は目頭めがしらを釣り上げながら啓斗を制止する。

「では、貴方に与えられた「イレギュラースキル」を見せて差し上げましょう!」

すぐに笑顔に戻った少女がパチンと指を鳴らす。
すると、啓斗の目の前にホログラムが現れた。
ホログラムは、グッズショップ等でよく見かけるガチャガチャの形をしている。

「はい、「スキルガチャ」です!貴方はこれを引くことで異世界にある全ての能力を「運次第で」手に入れられるのです!
スキル数は……えー、詳しい数は忘れました! あ、因みにレアリティは威力、習得難度で5段階に分けてあります」
「分け方は、NノーマルRレアSRスーパーレアURウルトラレアTRチートレアとなっております」
「そして!なんと貴方は毎日このガチャを100回連続で引けるんです!同じスキルが被っても、スキルレベルがドンドン上がるので問題なし!」

今の説明の中に、啓斗はかなり違和感を感じる部分があった。
レア度の表記が何かおかしいのだ。
Normalノーマル」「Rareレア」「SuperRareスーパーレア」「UltraRareウルトラレア」まではしっくりくるのだが、どうにも「チートレア」の「TR」という表記が分からない。
「チート」という言葉は、英語に訳すと「Cheat」となるため、本来は「CR」という表記が正しく思われる。
しかし、このチートレアだけわざわざ「cheaTRareチートレア」となっているようだ。
啓斗はその部分について質問しようとしたのだが、ナビゲーターが早口でまくし立てるので口を挟む暇が無かった。


「それじゃ、初回限定、SR確定で100連回せますよ。SRくらいから並の魔物は圧倒出来るので、心配せずドカンと回しちゃってください!」

その言葉と同時に、ガチャに「TAP!!」という表示が現れる。
啓斗が、その表示に触れると、中から光の玉が現れ啓斗の体にドンドン吸い込まれていく。

「因みに金色がSRスーパーレアで、Rレアが銀、Nノーマルが銅色の光です」

言われて改めて確認すると、ほぼ全ての光球が銅色だ。
しかし、最後の100個目、金色の光球が現れ、体に吸い込まれる。

「SR獲得おめでとうございます。まぁ、確定でしたけどね。では、最後にこちらをどうぞ」

少女から腕時計型の端末を渡される。

「これを操作すれば、ガチャ画面を呼び出したり、スキル図鑑を確認したりできます。是非ご活用ください」

啓斗は端末を腕に巻く。

「では、そろそろお時間になりました。貴方は見知らぬ場所で目覚めるでしょう。最初に、スキルの確認をしておくことをオススメします。」

言葉にしっかり頷いた啓斗を見て、少女は今までで1番優しげな笑顔を浮かべる。

「それでは、良い旅を、啓斗様。あ、そうそう。恐らく目覚めたら今この時から1日経過しているはずなので、もう100連してみるのもいいかもしれませんよ」

その言葉を聞いた次の瞬間、啓斗の視界はまた閃光に包まれた。






「あ、ガチャの排出率、言った方が良かったかな。まぁいいや」

啓斗が消えた後の空間で少女は1人呟く。
手元に隠し持っていたスマホ型端末には、

N:50%
R:40%
SR:9%
UR:0.98%
TR:0.02%

と表記されていた。

「確率見ればすぐ分かることですけど、SRは本来9個くらい出てフツーなんですよねー」
「すいません啓斗様。こっちの都合で色々と苦しくなっちゃうかもしれません。……なんて言っても本人には聞こえませんけど。さて、報告しなきゃ」




「……TRティーアール、ねぇ。んー、確かに間違っちゃあいないんですよねー。間違ってもいますけど」

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コメント

  • ともと

    toi8先生が好きで読ませていただきました
    ガチャものは楽しい!

    1
  • ローソニアン

    小説の中にもガチャが出てきて、なんかお金をかけずに自分までドキドキ出来てとっても楽しく読ませて頂きました!

    0
  • ノベルバユーザー601712

    面白いです。

    0
  • ノベルバユーザー601233

    面白そう。
    続きも気になりました。

    0
  • ノベルバユーザー356982

    TRはさすがに笑う
    作者高校すら卒業してないんじゃなかろうか

    0
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