僕はみんなの死期がわかる。

大津 千代

第7話 想う人の…

帰りのHRを終え綾人はそそくさと教室を後にする。結菜も友人と話しながらほぼ同時に教室を後にした。綾人はそれに気づいていない。


綾人が少しだけ早く昇降口を出る。結菜は友人との会話が弾み、遅めに昇降口を後にした。









綾人と結菜の乗る電車は同じで朝も同じ時間帯の電車に乗って通学をしていた。しかしお互い車両が違く朝や帰りは会う事は無かった。2人が会うのは学校でしかなかったのだ。綾人は駅の売店で帰ってから飲む予定のエナジードリンクを1缶買う。会計をしている綾人の後ろの改札を結菜が通る。もちろん、綾人が気付くことはない。通学用のバッグにエナジードリンクの入った袋を入れ改札を綾人は通り抜ける。そして駅のホームへと向かっていく。





駅のエスカレーターを降りて行く綾人。エスカレーターを降りると、遠くに電車のライトが見えた。だんだんと近づいているように感じる。そして綾人の視界には他の人の死期がに入る。しかし、‘‘ある人’’だけ明らかに違った。その人に視線を向ける。その人の頭上付近に死期が表示されている。


その人とは結菜だった。結菜は友人と話している。


そして結菜の頭上付近には
《10秒前》と表示されている。



それを見て、綾人は走り出す。電車がすでにホームに入って来ていた。そのうちにも結菜の頭上付近に表示されている死期のカウントダウンが1秒、また1秒と進む。綾人は人を避けながら結菜に走っていた。



その時、結菜の後方に男性が立つ。友人と話している結菜はその男性に気づいていない。ホームに入って来た電車が結菜がいるところに近づく。


「結菜さん!避けて!」
綾人が叫ぶ。結菜がその声に気づき後ろを振り向いた。結菜が振り向いたと同時に男性の両手が結菜の背中に伸びる。そしてその男性は電車が近くに来たのを見て結菜の背中を思いきり押した。その男性は押した後、足早に逃げてしまった。


それと同時に綾人がその場についた。


「きゃ!」と結菜が短く叫ぶ。結菜の体はすでに線路側に倒れそうになっている。電車も近づいている。


「結菜さん!」綾人が手を伸ばす。結菜も手を伸ばす。


「綾人くん…!」
だんだんと結菜の体が線路側に倒れていく。2人の伸ばした手が近づくがその手は繋がる事は、無かった。



結菜が綾人の視界からいなくなった。それと同時に電車が結菜のいた場所を通り過ぎた。そして電車が緊急停車をした。綾人は唖然とし、伸ばしていた手の先を見つめ続けている。何が起こったのか、理解が出来なかった。夢だ、夢だと何度も心の中で繰り返しているうちに涙が浮かび、頬を伝う。そして結菜と一緒にいた友人の泣き叫ぶ声が駅中に響き渡る。









綾人の想う人、結菜が。




死んだ。

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