名無しの英雄

夜廻

71話

「アァァァア!」
俺は騎士団長に鎌を振るうが簡単に剣で弾かれてしまう
騎士団長の後ろにスズが回り込み2つの剣で攻撃する
が、それすらも剣で防御される
俺はそれを予知し、気配遮断を使って死角に回り込む
それで攻撃するがやはり攻撃が通らない
「ッ!」
少し力み過ぎたのか弾かれた反動が強い
それをカバーするべくスズは騎士団長の気を引くように攻撃する
稼いでくれた時間を使って体勢を立て直す
俺は影を操り騎士団長の足に絡ませようとする
が、足に一瞥もくれずに避ける
「なんだァ?」
俺は不思議に思う
いくら俺の動きは読めてもスズの動きは読み切れないはずだ……
なぜ解る?
スズの攻撃をいなして距離をとる
「不思議かい?……教えるわけ無いだろう?」
「そォかよ」
不貞腐れて俺は鎌をやたらめったらに振るう
「主人様!避けて!」
後ろでスズが言う
俺はスズが何をするか解らなかったがとりあえず避ける
避けた瞬間にドラゴンのブレスとも言うべき業火が迸る
「!!」
驚いて後ろを向くがスズしかいない
よそ見しちゃダメじゃないか」
後ろから騎士団長の声が聞こえる
「させる訳ないでしょう?」
驚いて後ろを振り向き俺は驚愕した
そこには前に居たはずのスズがいた
「君の方が強いみたいだね」
少し驚きながらスズに言う
「………」
スズは黙って剣を振るう
俺も負けじと気配遮断を使って死角から攻撃する
「そうか、君達があのーー」
「うるさいっ!」
スズがそう叫び攻撃の手を激しくする
「おっと」
俺もそれに合わせて攻撃するが1度たりとも攻撃が通らない
「そうか、君は〈強ーー」
「!!」
スズから高威力の吹雪が吹き荒れる
俺は予想外のスズの攻撃に驚く
スズの持つスキルにこんな攻撃が出来るスキルは無かったハズ…
「いやー、強いねぇ」
無傷で対面している騎士団長がそう言う
「あれを食らって無傷だとォ……なら」
全力で敏捷に部分強化をかけて走り出す
一瞬にして騎士団長の前まで迫り攻撃する
「そう慌てるなよ」
それすらも軽く受け流す
俺は騎士団長から距離をとる
「年甲斐もなくワクワクしてるんだから」
とても気持ちのいい笑顔で騎士団長はそう言った


「私の目標はね、とんでもないスキルのヤツをごく一般的なスキルで圧倒することなんだ」
騎士団長は語り出す
「だから君を育てたんだよ?」
そう言って俺を指さす
「だからお前を倒す」
スズに改めて宣戦布告する
「望むところ」


それからはほぼスズと騎士団長の一騎打ちだった
この戦いには俺も介入出来そうにない
何故なら2人の動きが速すぎて見えないどころか音が遅れてやってくる始末だ
だがある時終わりは突然やって来た
「ぐっ!」
騎士団長が少しだけ足を切られてよろめく
その隙を逃さない様にスズが攻撃する
だがニヤリと笑いスズの攻撃を受け流してがら空きの胴体に剣が迫った
そしてその戦いに決着が着いた


「なァ」
俺は声をかける
「………」
声が出せない様だ
「見誤ったな」
動けない敗者はフッと笑って……

その日俺達は勝利した



スズの元に行く
「お前、暴走回路を使っただろ」
スズは心做しかしょんぼりとしている
「はぁ……お前にはそのスキルは使うなと言っておいたはずだが…」
「ゴメンなさい……」
スズは謝る
「罰だ……お前は俺の奴隷を辞めろ」
「………!?」
少し放心して驚く
「俺の復讐は終わった……」
俺は周りを見る
そこには住民と思われる死体の数々が山となっている
それは惜しくもノース帝国で見た絵の様で……
スズに向き直り首輪を外す
「じゃあな」
そう言って《死神》は姿を消した

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品