名無しの英雄

夜廻

68話

レオンの髪はかつて無いほど紅く染まり修羅のような顔になっていた
その顔から普段の落ち着いた雰囲気は微塵も感じられない
「おーおー、怒ってるねぇ」
おちゃらけた雰囲気で女性は言う
「言い残す事があったら何か聞きますよ」
レオンはそう告げる
「あ?なんで勝った気になってんだ?その首だけ置いてさっさと死んでくれない?」
目付きを鋭くして女性は言う
その雰囲気からは先程のおちゃらけた雰囲気は無い
レオンは知っている
こういう切り替えが上手い人ほど面倒で冷静だと
例えばシトウのように…
「手加減しないよ?必ず殺す」
「やってみな」
女性はそう嘲笑うと後ろに山となっていた住民の死体に向かって火魔法を唱え焼いた
住民はそれを見て逃げる
「………」
女性の行動、仕草が気に触る…
今すぐにでも殺したい衝動に駆られていた
「どうした?」
そうヘラヘラと女性は武器は抜いて徐ろに逃げている住民を殺した
「!!!」
レオンはその破壊衝動を抑えていた理性が働かなくなるのを自覚する
気がつくと壁にぶつかっていた
「なんだ……?」
壁にぶつかったおかげで少し冷静になる
レオンには吹き飛ばされた記憶が無い
だが、確実にレオンは攻撃をしてそれを返された事だけは確かだ
女性を見ると無傷で飄々としている
「アハハ!いやー愉快だねぇ」
可笑しくて堪らないと言う風に嘲る
「もう一回やってみるか…」
そしてレオンは冷静になり女性に攻撃を仕掛けた
すると剣が女性に当たる寸前で剣が空中に止まり、そこから動かなくなる
「懲りないねぇアンタ」
ニヤニヤと笑う
「ほらよ!」
女性が思いっきりレオンを蹴り飛ばす
レオンは壁にぶつかり、壁を破って止まった
「……ぐっ」
今回はレオンの記憶も確かだった
「なんだアレは…」
記憶は確かでも突破口が解らない…
剣が止まったのはわかった……
だが何故だ?
何かの魔法かスキルか……?
なら…
もう一回だけと思い女性に上から剣を振る
その時に水属性魔法を放った
「!?」
女性は剣など意に返さずに全力で魔法を避ける
「なるほどね……厄介だね?」
「あーあ、バレちまったかぁ」
肩を竦めて女性が言う
「まさか物理攻撃無効だなんてボクじゃ無きゃ思いつかないよ?」
「なんでわかった?」
「ボクの戦友に攻撃を通さない人がいるのさ……だから似たようなスキルだと思ったんだけど……どうやらキミはその戦友よりもランクが下のスキルみたいだね?」
「うるせぇ」
女性は攻撃をしてくるがどれも単調で簡単に避けられる
「今までマトモな戦いをしなかったツケだね?……じゃあさようなら…〈水龍〉」
レオンは使える最高の魔法を女性に放つ
「ぐっ…あぁぁぁああ!」
そして女性は魔法に飲まれてレオンの目の前に落ちてくる
レオンは女性を見る
明らかに水死し、苦しげな表情で死んでいる
「ふぅ……魔力が枯渇した……」
その場に座り込んでレオンは魔力の回復を待った

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