スキルを使い続けたら変異したんだが?
最終話 世界の始まり
例の激闘から目を覚ましたのは、それから二日後。自分のベットの上だった。
激しい頭痛に見舞われながらもリビングへ降りるとちょうど朝食の時間で、家族会議が始まった。
ヘッドギアを着けたまま部屋で倒れていた俺を妹が見つけたそうだ。
その悲鳴を聞きつけてきた二人が、別段救急車も呼ばずにベッドで寝かせていたのがうちの親らしいといえばらしい。
会議の結果、俺は当分の間VRゲームの使用を禁じられた。
まあ、やりたくてもできないだろうということだったが。
その答えは、テレビから流れてきたニュースでわかった。
世界初のVRMMO 《サクセスオブスキル》
その取締り役の逮捕と、企業の事業停止が報道されていた。
VRゲームのシステムを悪用し、利用者へ危害を加えようとしていたそうだ。
しかし、その逮捕に至った経緯が謎だとコメンテーターが不思議がっていた。
取締役と開発スタッフが自首したそうだ。
良心の呵責と、いまいち曖昧な結論でニュースは終わっていた。
それから一時間ほどでようやく解放され、俺は部屋に戻ることを許された。
部屋の中をよく見ると、VRゲームの機材がさっぱり消えていた。大方、妹の部屋辺りに隠したのだろう。
しかし、それに手を出す気分にもなれず、俺はベッドに後ろ向きにダイブする。
布団の上で充電器に差しっぱなしだったスマホが跳ね、俺の額にぶつかった。
痛っ。って、なんか着信来て……三十件!?
あまりの件数に俺はゾッとする。しかも全部同じ人物……和樹からだった。
……、今は話す気分にはならないな。
結局は、アイツが守りたかったサリアを倒しちまったし、色々と心の整理がつかない。
「……これからどんな顔して会えばいいんだろうな」
心中のもやもやを吐露するように、誰にともなく呟いた。
『別に、普通でいいんじゃない?』
……はあッ!?
スマホから突如として響いた声に、俺は慌てて通話中じゃないか確かめる。
違った。だが、気のせいというにはあまりにも聞き覚えのある声だった。
調べると見覚えのないアプリがインストールされている。いや、むしろそれ以外のアプリがアンインストールされていた。
その名前は。
「……リアナ?」
『えへ、来ちゃった』
どこからツッコめばいいかわからず、俺はスマホを片手に固まる。
そんな俺の考えを見透かしたようにリアナは続けた。
『ニュース見たでしょ? 解放したサリアと一緒に、アイツらを洗脳しちゃった♪』
「いや、しちゃったって……」
『なんかもうあいつらに滅茶苦茶にいじられた世界とか、リアナもごめんだったしね。
ユウトの望み通りぶっ壊してきちゃった♪』
「いや、してきちゃったって……」
とてつもないスケールの話に、ただ繰り返すことしかできない俺。
だが、これだけは聞いておきたかった。
「っていうか、なんでお前が俺のスマホに……?」
『あの世界と心中なんてしたくないし。あなたのアカウント情報をネットで辿ったの。
データ領域一杯だったから全部消しちゃったけど』
だから中身がすっからかんだったのか。
「いや、でも人工知能ってスマホの容量に入りきるものなのか……?」
『ちょっとした裏技があってね。まあ、アンダーなことしてるから聞かない方が身のためだと思うけど』
聞こうが聞くまいが、リアナが俺のスマホに居る時点でもう共犯なのではないだろうか。
まあ、怖いので深くは追及しないが。
「……ところで、さっきサリアと一緒にって言ったよな? ということは」
『うん、あの子ならカーレルのアカウントを辿って行ったはずだよ』
「……そうか」
その事実に、胸の奥が少し軽くなった。
『さて、それじゃあ行こうか』
「は? いきなり何言ってんだ?」
『世界を壊した記念に打ち上げしようって、あの子たちと約束したんだ』
あの子たち。そうリアナが呼ぶ人間を、俺は二人しか知らない。
「まさか、リナとナツメか?」
『うん、そうだよ。世間は意外に狭いっていうか、みんな近くに住んでたね。
リナは同じ高校でユウトの一年年上だったし、ナツメは隣町の女子高に通っててユウトと同い年だったよ。
あ、本名とか誕生日とかスリーサイズとかも知りたい?』
いや、なんで知ってる?
……、いや聞かない方が良いのか。
「そういえば、あの決戦の時にあいつらが現れたのって……」
『うん、私が転移させたんだよ。カンストさせた状態にして。
もちろん、二人の了承はもらってたけどね』
あの時全然リアナが喋らないと思っていたら、そういうことだったのか。
『それより、早く着替えなよ。
ユウトが起きた時にもう二人に連絡しちゃったし。十二時に駅前で集合って』
「……はあっ!?」
スマホの時刻はもう十一時半を回っている。
おいおい、今からじゃ本気で自転車漕がないと間に合わない時間じゃねえか!
リアナへの文句を後回しに、俺は寝間着を脱ぎ捨てて私服へ着替え始める。
そうして波乱万丈で騒がしくも、新しい俺の人生が幕を明けた。
激しい頭痛に見舞われながらもリビングへ降りるとちょうど朝食の時間で、家族会議が始まった。
ヘッドギアを着けたまま部屋で倒れていた俺を妹が見つけたそうだ。
その悲鳴を聞きつけてきた二人が、別段救急車も呼ばずにベッドで寝かせていたのがうちの親らしいといえばらしい。
会議の結果、俺は当分の間VRゲームの使用を禁じられた。
まあ、やりたくてもできないだろうということだったが。
その答えは、テレビから流れてきたニュースでわかった。
世界初のVRMMO 《サクセスオブスキル》
その取締り役の逮捕と、企業の事業停止が報道されていた。
VRゲームのシステムを悪用し、利用者へ危害を加えようとしていたそうだ。
しかし、その逮捕に至った経緯が謎だとコメンテーターが不思議がっていた。
取締役と開発スタッフが自首したそうだ。
良心の呵責と、いまいち曖昧な結論でニュースは終わっていた。
それから一時間ほどでようやく解放され、俺は部屋に戻ることを許された。
部屋の中をよく見ると、VRゲームの機材がさっぱり消えていた。大方、妹の部屋辺りに隠したのだろう。
しかし、それに手を出す気分にもなれず、俺はベッドに後ろ向きにダイブする。
布団の上で充電器に差しっぱなしだったスマホが跳ね、俺の額にぶつかった。
痛っ。って、なんか着信来て……三十件!?
あまりの件数に俺はゾッとする。しかも全部同じ人物……和樹からだった。
……、今は話す気分にはならないな。
結局は、アイツが守りたかったサリアを倒しちまったし、色々と心の整理がつかない。
「……これからどんな顔して会えばいいんだろうな」
心中のもやもやを吐露するように、誰にともなく呟いた。
『別に、普通でいいんじゃない?』
……はあッ!?
スマホから突如として響いた声に、俺は慌てて通話中じゃないか確かめる。
違った。だが、気のせいというにはあまりにも聞き覚えのある声だった。
調べると見覚えのないアプリがインストールされている。いや、むしろそれ以外のアプリがアンインストールされていた。
その名前は。
「……リアナ?」
『えへ、来ちゃった』
どこからツッコめばいいかわからず、俺はスマホを片手に固まる。
そんな俺の考えを見透かしたようにリアナは続けた。
『ニュース見たでしょ? 解放したサリアと一緒に、アイツらを洗脳しちゃった♪』
「いや、しちゃったって……」
『なんかもうあいつらに滅茶苦茶にいじられた世界とか、リアナもごめんだったしね。
ユウトの望み通りぶっ壊してきちゃった♪』
「いや、してきちゃったって……」
とてつもないスケールの話に、ただ繰り返すことしかできない俺。
だが、これだけは聞いておきたかった。
「っていうか、なんでお前が俺のスマホに……?」
『あの世界と心中なんてしたくないし。あなたのアカウント情報をネットで辿ったの。
データ領域一杯だったから全部消しちゃったけど』
だから中身がすっからかんだったのか。
「いや、でも人工知能ってスマホの容量に入りきるものなのか……?」
『ちょっとした裏技があってね。まあ、アンダーなことしてるから聞かない方が身のためだと思うけど』
聞こうが聞くまいが、リアナが俺のスマホに居る時点でもう共犯なのではないだろうか。
まあ、怖いので深くは追及しないが。
「……ところで、さっきサリアと一緒にって言ったよな? ということは」
『うん、あの子ならカーレルのアカウントを辿って行ったはずだよ』
「……そうか」
その事実に、胸の奥が少し軽くなった。
『さて、それじゃあ行こうか』
「は? いきなり何言ってんだ?」
『世界を壊した記念に打ち上げしようって、あの子たちと約束したんだ』
あの子たち。そうリアナが呼ぶ人間を、俺は二人しか知らない。
「まさか、リナとナツメか?」
『うん、そうだよ。世間は意外に狭いっていうか、みんな近くに住んでたね。
リナは同じ高校でユウトの一年年上だったし、ナツメは隣町の女子高に通っててユウトと同い年だったよ。
あ、本名とか誕生日とかスリーサイズとかも知りたい?』
いや、なんで知ってる?
……、いや聞かない方が良いのか。
「そういえば、あの決戦の時にあいつらが現れたのって……」
『うん、私が転移させたんだよ。カンストさせた状態にして。
もちろん、二人の了承はもらってたけどね』
あの時全然リアナが喋らないと思っていたら、そういうことだったのか。
『それより、早く着替えなよ。
ユウトが起きた時にもう二人に連絡しちゃったし。十二時に駅前で集合って』
「……はあっ!?」
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コメント
ノベルバユーザー258570
色々予想外で面白かったです。応援しています、。頑張ってください。
三日月
めっちゃ面白かった(((o(*゚▽゚*)o)))
続き希望(というか切望?)
続きが出たら絶対読むわ〜
ショウ
面白い頑張って