クラスにハブられた僕は罪を背負いながら頑張ります

煮干

望の温もり

 お城の中は外観とは違って綺麗だ。大きなシャンデリアが煌々と輝いて、赤色のマットの色をより鮮明にする。僕は思わず、感嘆の声がもれた。


「すごい......」


 シャンデリアも絨毯も階段も高級感がある。生まれて初めてのお城の中に、僕はつい見惚れていた。


「ノゾム、靴を脱ぐんだって」


 リアに言われてハッとする。見ると、リアは靴を脱いでいた。辺りを見渡すと、靴がずらりと並ぶ靴箱にリアの靴がある。僕も靴を脱いで、リアの隣に靴をおいた。


「ユウの指示で煩わしいことをさせてしまい、申し訳ありません」


 パブールさんが頭を下げる。


 この世界では靴を脱ぐ習慣がないのか......日本だと脱ぐから、つい当たり前のように感じるなぁ......。


「日本では脱ぐことが多いので、気にしてないですよ」


 僕は靴を脱いで靴箱にいれようとしたその瞬間、後ろの扉が勢いよく開いた。見ると、どこかに逃げていた優がすました顔で帰ってきた。


「ただいま」


「よかったです、帰ってきて。大切な弟を私に丸投げするのかと思いましたよ」


 パブールさんは呆れたように大きなため息をつく。だが、優はヘラヘラとしている。


「そんなわけないだろ、罠の確認をしてたんだよ。今日も異常なし!」


 笑顔で優は敬礼をする。


「はいはい。では、あとの事はユウにお任せします。私は夜ご飯の支度があるので」


 パブールさんは会釈をすると、階段のほうへと歩いていく。


「なんであんなに無愛想なんだろうねぇ。もうちょっと可愛げあってもいいのに......」


「聞こえてますよ!」


 パブールさんの怒声が響き、優は耳を塞ぐ。そして、僕を見るなりヘラヘラと笑った。


「じゃあ、まずはお部屋に......と言おうと思ったが、荷物はないよな。なら隠れ家巡りするか!」


 隠れているかいないかはおいといて、優にとっては自慢の隠れ家みたいだ。目を爛々と輝かせ、紹介したいと訴えかけてくる。


「いいね!」


 リアも賛同する。目を輝かせて、無邪気な子供のようだ。


「望は嫌か?」


「そんなことないよ。僕も行く!」


「よし!俺に続け!」


 優は満面笑顔で拳をたかだか突き上げる。すると、扉の向こうから怒気を含む声が聞こえた。


「静かにしないと夜ご飯は抜きですよ!」


 瞬間、優はしゅんとする。まるで、お母さんに怒られた子供のように。僕はクスリと笑った。


「ここからは声の大きさを低くするよ。とりあえずこの階には部屋が四つある。入ってすぐ左がトイレ。右が調理室。階段近くの左はお風呂。右は食堂だ。次は二階だな」


 優は階段を登る。僕とリアもその後ろに続いて階段を登る。


「両方とも寝室となってるけど、ほとんどは物置とかしてるな。望とリアは同じ部屋でいか?」


「よくな......」


「いいよ!」


 僕が否定しようとすると、リアは容認した。驚いて声もでない。


「ノゾムは嫌なの?」


「嫌じゃないけど......恥ずかしいと言うか......」


「えー、一緒に寝てたじゃん」


 言われてみれば、何度か一緒に寝ている。けど、ほとんどは僕が寝た頃にリアが毛布に勝手に入ってきてるだけだ。


「あ......そういえば、一つの部屋以外あまってないな」


 優は思い出したように言う。つまり、一緒に寝る以外の選択肢はない。


「分かった......けど条件がある。リアは僕に抱きつかないで!」


「だって望が温かいんだもん。エルフって冷え性だから、人肌が温くて......」


 そう言いながらリアは、僕に倒れかけてくる。僕はサッと避ける。すると、リアは頬を膨らます。


「そうやってすぐしようとしないでよ!」


「ほら、イチャイチャするなら自室でしろ。お前たちの部屋はすぐ左の二一だ」


 優は右へ歩いていく。僕とリアを残して......。


「それじゃ、僕たちも部屋に行こうか」


 リアが僕の前に手を差し出す。僕は一瞬ためらったものの、すぐに手をとった。


「やっぱり望は温かいよ......。優しい人間だからかな」


 そう言うリアの手は冷たい。じゃあ、リアは冷たいエルフなんだねとは口が裂けても言えない。いや、言っちゃいけない。


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