蒼炎の魔術士

ibis

8話

「『グラビテイション』」
「ふっ、くっ……!」

 ソフィアを抱えたまま、見えない重力を避ける。
 相手の攻撃は見えない……けど、カルトさんは杖の先に魔法を使う。
 それがクセなのか、それとも杖で魔法を使う先を示さないと使えないのか。

「どっちかわかんねぇけど、見えない攻撃を避ける手段にはなる……!」

 後ろに飛び、ソフィアを降ろす。

「ソフィア、ちょっと待っててくれ。すぐに終わらせるから」
「……………」
「そ、ソフィア?」
「……………」

 黙ったままのソフィアが、そっぽを向く。

「よそ見厳禁」
「なっ―――」

 横薙ぎに迫る杖―――腕を犠牲にして、頭への直撃を避ける。
 直撃は避けたが―――老人とは思えない腕力で、公園の噴水まで吹き飛ばされ……激突した。

「うっ……ぐ……」
「『グラビテイション』」
「くそッ!」

 跳ね起き、地面を転がる。
 次の瞬間、背後の噴水が音を立てて潰れた。

「ちっ……!『カグツチ 波之型なみのかた』ッ!」

 波のように迫る蒼炎を展開。
 さあ、どう避ける―――

「『グラビテイション』」
「……マジかよ……!」

 カルトさんを襲おうと迫っていた蒼炎が―――重力によって、軌道を変えられ、地面と衝突して消えた。
 炎にも重力が働く……なら、正面から放っても無意味だ。

「だったら……!『カグツチ 鳥之型とりのかた』ッ!」
「ほう……綺麗ではないか」

 手から漏れ出す蒼炎が、形を作り出す。
 それはさながら、蒼い鳥のようだ。

「行けッ!」

 『ギュンッ!』と加速し、蒼鳥がカルトさんに迫る。

「『グラビテイション』」
あめぇよッ!」

 一直線に迫る蒼鳥が、不可視の重力に押し潰される―――前に、蒼鳥が動きを変え、縦横無尽に飛び回り始めた。

「ほっほっほ……これは素晴らしい……!放った魔法をここまで自在に操る魔術士は初めて見た」
「そうかよ……!『カグツチ 爪之型つめのかた』ッ!」

 飛び回る蒼鳥とは別に、手のひらに蒼炎を展開する。
 その蒼炎が、少しずつ形を変え―――俺の右手を覆う、蒼い爪となった。

「魔力の操作にけている……いや、長け過ぎている……ここまで辿り着くのに、いったいどれだけの時間を使った?」
「覚えてねぇ……なッ!」

 蒼爪を構え―――カルトさんとの距離を詰める。
 迫る俺を迎撃しようと、カルトさんが杖の先を向けるが―――

「……なるほど」

 その背後には、蒼鳥が迫っていた。
 さあ、俺を重力で潰しても、蒼鳥を重力で潰しても……致命傷は避けられない!

「くたばれ―――!」
「『グラビティホール』」

 カルトさんが、杖を向けた先。
 俺でも、蒼鳥でもなく―――横だ。

「うぉ―――?!」

 杖を向けた先―――カルトさんの横に、体が引き寄せられる。
 いや……俺だけじゃなく、蒼鳥まで引き寄せられていた。

 このままだと、自分で放った魔法と衝突する。
 反射的に蒼鳥を解除し、地面を転がった。

「今、のは……?!」
「『グラビテイション』」

 再び迫る不可視の重力を―――あえてカルトさんとの距離を詰める事で回避。
 ……これだけ近けりゃ、自分まで重力に巻き込んじまうだろ―――!

「『グラビティホール』」
「うっ……なあ?!」

 今度は上空に杖を向け―――その先に引き寄せられる。
 マズイ。このままだと。落下する。いや。落下+『グラビテイション』で死ぬ―――

「『グラビテ―――」
「『カグツチ 翼之型つばさのかた』ッ!」

 カルトさんの詠唱より早く、背中に蒼い翼を作り出す。
 そのまま距離を取り―――なんとか、死なずに済んだ。

「『重力の魔術士』……まさか、引力まで使えるのか……?!」
「ほっほっほ。よく気づいたね。その通り、ワシは重力と引力を操る事ができる」

 ……ヤバイ……そんなの強すぎだろ。

「しかし、ワシは魔力の操作がヘタでのぉ……こうやって杖で魔法を使う先を示さないと、辺り一面に重力を使ってしまうのだよ」
「……それ、ヘタってレベルじゃねえぞ」

 『炎魔法』を使おうとして、魔力操作を誤って自分の体を焼いてしまったとかなら聞いたことあるけども。

「……くそ……見えない攻撃とか、ビートだけで充分だってのに……!」
「おい、あれ見ろよ……!」
「え?……嘘、『第11代』と『第13代』?!」
「なんでこんな所で戦ってんだ……?!」
「ヤバ……公園グチャグチャだよ!」

 くそ……野次馬やじうまが増えてきた。
 カルトさんの『グラビテイション』の範囲は、大体『直径2メートル』。
 たったの2メートル……それに対して、俺の魔法は『ちょっとでも魔法の操作を誤れば、周りの人を巻き込む』。
 つまり……野次馬が増えるほど、俺は周りを見て戦わなくちゃならない。

「めんっ、どくっ、せえッ!」
「『グラビテイション』」

 横っ飛びで重力を回避し、蒼爪を振り上げる。

「『グラビティホール』」
「チッ―――くっそぉ!」

 引力に引き寄せられ、攻撃は失敗。
 間髪入れずに、カルトさんと距離を詰めようと―――

「……あ?」
「『グラビテイション』」

 ―――すぐ背後に、ソフィアがいた。

 杖の先は、俺を―――いや、俺たちを捉えている。
 考えてなんかいなかった……言うならば反射的……もしくは、本能だ。

「きゃっ!レテ―――」

 無意識でソフィアを突き飛ばした―――次の瞬間。
 全身を、不可視の重力が襲った。

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