蒼炎の魔術士

ibis

6話

「……朝か……」
「おはよーレテ君!」

 頭を振りながら、体を起こす。
 ……なんか、なつかしい夢を見てたような気がする。

「……レテ君―――きゃ」

 ソフィアの手を引き、抱き寄せる。
 甘い香り……細い腰……小さな胸……柔らかな体……ああ、愛しい。

「ど、どうしたのレテ君?」
「……悪い……なんか、急に……抱き締めたくなって……」
「……えへへ……いいよ。もっと強く抱き締めて」

 ……わからない。
 どんな夢を見たのか、覚えていないが……
 ソフィアが、愛しくてたまらない。

「……ソフィア……」
「んー?」
「……大好きだ」
「…………えへへへへ……うん、私も」

 幸せそうに笑うソフィア……その唇に、優しくキスをする。

「……飯、作るか」
「……くっついたまま、作れない?」
「前も同じ事言ったよな?無理だって」
「……むー……」

 むくれるソフィアと共に階段を下り、朝食の用意をしようと―――

「……ああ……?」
「どうしたの?レテ君?」
「……なんか、外が騒がしいな」
「そう?」

 ……うん、騒がしい。
 人の気配がする……それも1人2人じゃない。

「……ソフィア、ちょっと離れてろ」
「わかった」

 ソフィアが離れるのを確認し、俺は玄関を開けた―――

「む……おはようレテイン君」
「……ベルガドール様か……なんか用か?」

 『ヘヴァーナ』の国王、ベルガドールが立っていた。
 その背後には、何十人と騎士が並んでいる。

「昨日、ビート君に手紙を渡したはずだが……届いているか?」
「……いや、届いてねぇな」

 嘘だ。
 届いたって言えば、返事を寄越せって言われるだろう……ならば、届いてないと答えるのが一番だ。

「そうか……中に入ってもいいか?」
「よくない、ダメだ。用があるならここで言え」

 腕を組み、中に入れさせないように立ち塞がる。
 ……とっとと帰ってくれないかな……

「……おい……先ほどから聞いていれば、何様のつもりだ?」
「ああ?誰だてめぇ……?」
「我は『第14代 国王側近魔術士』、『剛腕の魔術士 プラディア・マスドリア』……貴様の後を継いだ者だ」
「おいおいベルガドール様、とうとう歳で頭イっちまったのか?見るからにただのゴリラじゃねぇか。こんなの雇って―――?!」

 プラディアの姿が消えた。
 それを認識すると同時、体が宙に浮かぶ。
 ……いや違う……これは―――

「プラディア……」
「すいませんベルガドール様。しかし、こいつの態度は眼に余ります」
「かっ……!はっ……やっぱりゴリラだな……!挑発に耐えきれないで手を出すとか、動物じゃねぇか……!」
「貴様……!まだ言うかッ!」
「よせ、止めろプラディア!」

 俺の首を掴み、持ち上げていたプラディアが、そのまま地面に向かって―――

「―――『パワード』」
「なっ……に?!」

 動きがピタリと止まった。

「……ねぇ……何してるの?」
「貴様……『鬼―――」
「答えろ。私のレテインに、何をしているの」

 俺を地面に叩き付けようと振り下ろされた腕が―――ソフィアの細腕に、動きを止められていた。
 ……ソフィアのやつ、喋り方が昔に戻ってやがる。本気で怒っている証拠だ。

「『鬼族』か……まだ生き残りがいたとはな。ぜひ手合わせを―――?!」

 プラディアの腕から『ボギッ』と、鈍い音が聞こえた。
 ソフィアだ。ソフィアが握力でプラディアの腕をへし折ったのだ。

「な、ぐっ……!貴様……!」
「レテ君、大丈夫?」
「ああ……余裕だっての」
「―――『ビルドアップ』ッ!」

 『パァンッ!』と、プラディアの服が弾け飛んだ。
 なるほど……こいつは強化系統の魔法を使うのか。

「ソフィア」
「ん?」
「殺すなよ」
「もう!わかってるよー!」

 頬を膨らませるソフィアに向かって、プラディアが拳を放ち―――

「『パワード』」
「なっ―――ぐっ……!」

 迫る拳を、片手で受け止めた。

「ほんと……弱いね?」
「うる、さい……ッ!」

 怒りに震えるプラディアが、反対の腕を振り上げる。
 だが、それを振り下ろすより、ソフィアがプラディアの腹に掌底しょうていを入れる方が早い。

「かっ……ほ……」

 『ドズウンッ!』という音と共に、辺りに凄まじい衝撃が走る。
 掌底を受けたプラディアの大きな体が……地面に沈んだ。

「うはー……ソフィアは強いな」
「えへへ……まあレテ君ほどじゃないけどね」

 ソフィアの頭を撫で、ベルガドールの方を向く。

「……で、まだ俺と話したいか?」
「いや……日を改めるとしよう」

 そうだ、とっとと帰れ。

―――――――――――――――――――――――――

「『第14代』……あんまり強くないな」
「そうだね……と言うより、レテ君とビートが強すぎたんだよ思うよ?」

 机に座るソフィアが、苦笑しながら朝食を食べる。

「どうだかな……俺とビートも、『第11代』には勝てないし」
「『第11代』……『重力の魔術士 カルト・グラビドン』だっけ?」
「ああ……見た目はただのじいさんなのに、俺もビートも勝てなかった」

 『第11代』……確か今年で60歳だったはずだ。
 1回だけ、カルトと手合わせをした事がある。
 結果は……ボロ負け。
 まったく、手も足も出なかった。

「あの人……なんで引退したんだろうな」
「そういえばそうだね。実力も信頼もあったのに、なんで引退したんだろ?」

 カルト・グラビドン。
 歴代の『国王側近魔術士』の中で、一番長く国王に仕えていた魔術士。
 国王に仕えていた期間、驚愕の38年間。
 俺なんか1年も仕えてなかったぞ。

「……ちょっとカルトさんの所に行くか、暇だし」
「そうだね!レテ君が戦う所も見たいし!」
「えぇ……」

「蒼炎の魔術士」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く