蒼炎の魔術士
4話
ソファーに座り、手紙に目を通す。
「……………」
「レテくーん?どうしたのー?」
「……んや、何でもない」
ビートに渡された手紙を握り潰し、ポケットに突っ込んだ。
『久しぶりだな……『第13代 国王側近魔術士』、『蒼炎の魔術士 レテイン・エクスプロード』君。
『炎帝』の事について話がある。王宮に来てほしい』
と、手紙に書いてあった。
「……『炎帝』……か」
「レテ君?」
「何でもないよ」
『炎帝』―――『魔王』を守る『四天王』の1人だ。
『炎帝』『氷帝』『雷帝』『風帝』……この4人で『四天王』と呼ばれている。
今の手紙に書いてあった『炎帝』は―――『鬼族』の暮らす国を、ソフィアの故郷を滅ぼしたやつだ。
……これをソフィアに見せるわけにはいかない。
「……明日また『ヘヴァーナ』に行かなきゃならねえ」
「えー?なんで?」
「ベルガドール様から呼ばれた……ソフィアは留守番しててくれ」
「嫌だよ?」
真顔で返事をするソフィア……まあ、そう言うと思ったけど。
「嫌だよって……なんでだよ?」
「だってレテ君、何か隠してるでしょー?」
「……別に隠してねぇよ」
「嘘」
隣に座り、俺の顔を真正面から覗き込んでくる。
「私を誰だと思ってるの?未来のお嫁さんだよ?旦那さんが嘘を吐いてるか吐いていないかなんて、すぐわかるんだからね?」
「……………」
「もう一度聞くよ?何か隠してるでしょ」
……これだ。
ソフィアに嘘を吐くと……すぐに見抜いて、別人のように問い詰めてくる。
前にも何度か同じような事があった。
最後には俺が折れて、真実を話すのだが……
『なーんだ、そんな事だったんだね。てっきり私以外に女を作ったのかと思っちゃった』
と、安心したように笑うのだ。
「……その……『炎帝』について、話があるって」
「『炎帝』……それで、なんでレテ君はそれを隠そうとしたの?」
「いや……お前の故郷を滅ぼしたやつだし……嫌な気持ちになるかなーって……」
「……もう!」
ギュッと抱き締められる感覚に、場違いな安心感を覚える。
「もしも……もしも、だよ?ベルガドール様から『炎帝』を倒せって言われたら、レテ君は行かないといけないでしょ?」
「……まあ、そうだろうな」
「行くとしたら、私に黙って行っちゃうでしょ?」
「……ああ」
「レテ君が『炎帝』の所に行って、怪我でもしたら……もし死んじゃったら、どうするつもりなの?私を置いて逝くの?また私を1人ぼっちにするの?……1人に、しないでよ」
……そうだった。
こいつは、1人なんだ。
親も友だちも、全員『炎帝』に殺されて、1人ぼっちなんだ。
そこで俺もいなくなったら……本当に1人になってしまう。
「……悪い。ソフィアの気持ち、全然考えてなかっ―――」
「許さない」
「えぇ……?」
「……さっき邪魔された続きをしてくれるなら、許してあげる」
邪魔された……続き?
「……はあ。しょうがねぇな……」
「んー!」
目を閉じ、顔を突き出してくる。
俺は、その綺麗な顔に手を添えて―――
「……ん」
「んっ……」
優しく、柔らかくキスをした。
「えへへ……久しぶりにしたね?」
「ああ……そういやそうだな」
「……もう一回、する?」
「……次はキスじゃ済まさねぇぞ?」
「きゃははー!レテ君のエッチー!」
バタバタと寝室に駆け上がるソフィア……もちろん、手を出すつもりは無い。
「……はあ……俺が死ぬ、か……」
ソフィアは言った。『私を誰だと思ってるの?未来のお嫁さんだよ?』と。
ソフィアは言った。『死んじゃったら、どうするつもりなの?』と。
ソフィアは言った。『1人に、しないでよ』と。
俺は、ソフィアと結婚する。これは俺の中で、決定している事だ。
俺は、ソフィアを置いて死ぬつもりは毛頭ない。嫁を置いて死ねるかっての。
俺は、ソフィアを1人にする事は、絶対にしない。あいつの隣は、俺の場所だ。
「……2年前に、約束したんだ」
『俺は絶対にいなくならない!俺がお前の隣にいる!お前を1人になんてさせない!』
『どう……して……そこまで……?』
『お前が、好きだからに決まってんだろ!』
……そうだ、約束したんだ。
あいつの隣には、俺が立つ。
俺以外の誰かを立たせるつもりはないし、俺があいつの隣ならいなくなるつもりもない。
「レテくーん?キスの続きしないのー?」
「……しない」
「えぇー?!」
そうだ……決めたんだ。
あの日、2年前に。
「……………」
「レテくーん?どうしたのー?」
「……んや、何でもない」
ビートに渡された手紙を握り潰し、ポケットに突っ込んだ。
『久しぶりだな……『第13代 国王側近魔術士』、『蒼炎の魔術士 レテイン・エクスプロード』君。
『炎帝』の事について話がある。王宮に来てほしい』
と、手紙に書いてあった。
「……『炎帝』……か」
「レテ君?」
「何でもないよ」
『炎帝』―――『魔王』を守る『四天王』の1人だ。
『炎帝』『氷帝』『雷帝』『風帝』……この4人で『四天王』と呼ばれている。
今の手紙に書いてあった『炎帝』は―――『鬼族』の暮らす国を、ソフィアの故郷を滅ぼしたやつだ。
……これをソフィアに見せるわけにはいかない。
「……明日また『ヘヴァーナ』に行かなきゃならねえ」
「えー?なんで?」
「ベルガドール様から呼ばれた……ソフィアは留守番しててくれ」
「嫌だよ?」
真顔で返事をするソフィア……まあ、そう言うと思ったけど。
「嫌だよって……なんでだよ?」
「だってレテ君、何か隠してるでしょー?」
「……別に隠してねぇよ」
「嘘」
隣に座り、俺の顔を真正面から覗き込んでくる。
「私を誰だと思ってるの?未来のお嫁さんだよ?旦那さんが嘘を吐いてるか吐いていないかなんて、すぐわかるんだからね?」
「……………」
「もう一度聞くよ?何か隠してるでしょ」
……これだ。
ソフィアに嘘を吐くと……すぐに見抜いて、別人のように問い詰めてくる。
前にも何度か同じような事があった。
最後には俺が折れて、真実を話すのだが……
『なーんだ、そんな事だったんだね。てっきり私以外に女を作ったのかと思っちゃった』
と、安心したように笑うのだ。
「……その……『炎帝』について、話があるって」
「『炎帝』……それで、なんでレテ君はそれを隠そうとしたの?」
「いや……お前の故郷を滅ぼしたやつだし……嫌な気持ちになるかなーって……」
「……もう!」
ギュッと抱き締められる感覚に、場違いな安心感を覚える。
「もしも……もしも、だよ?ベルガドール様から『炎帝』を倒せって言われたら、レテ君は行かないといけないでしょ?」
「……まあ、そうだろうな」
「行くとしたら、私に黙って行っちゃうでしょ?」
「……ああ」
「レテ君が『炎帝』の所に行って、怪我でもしたら……もし死んじゃったら、どうするつもりなの?私を置いて逝くの?また私を1人ぼっちにするの?……1人に、しないでよ」
……そうだった。
こいつは、1人なんだ。
親も友だちも、全員『炎帝』に殺されて、1人ぼっちなんだ。
そこで俺もいなくなったら……本当に1人になってしまう。
「……悪い。ソフィアの気持ち、全然考えてなかっ―――」
「許さない」
「えぇ……?」
「……さっき邪魔された続きをしてくれるなら、許してあげる」
邪魔された……続き?
「……はあ。しょうがねぇな……」
「んー!」
目を閉じ、顔を突き出してくる。
俺は、その綺麗な顔に手を添えて―――
「……ん」
「んっ……」
優しく、柔らかくキスをした。
「えへへ……久しぶりにしたね?」
「ああ……そういやそうだな」
「……もう一回、する?」
「……次はキスじゃ済まさねぇぞ?」
「きゃははー!レテ君のエッチー!」
バタバタと寝室に駆け上がるソフィア……もちろん、手を出すつもりは無い。
「……はあ……俺が死ぬ、か……」
ソフィアは言った。『私を誰だと思ってるの?未来のお嫁さんだよ?』と。
ソフィアは言った。『死んじゃったら、どうするつもりなの?』と。
ソフィアは言った。『1人に、しないでよ』と。
俺は、ソフィアと結婚する。これは俺の中で、決定している事だ。
俺は、ソフィアを置いて死ぬつもりは毛頭ない。嫁を置いて死ねるかっての。
俺は、ソフィアを1人にする事は、絶対にしない。あいつの隣は、俺の場所だ。
「……2年前に、約束したんだ」
『俺は絶対にいなくならない!俺がお前の隣にいる!お前を1人になんてさせない!』
『どう……して……そこまで……?』
『お前が、好きだからに決まってんだろ!』
……そうだ、約束したんだ。
あいつの隣には、俺が立つ。
俺以外の誰かを立たせるつもりはないし、俺があいつの隣ならいなくなるつもりもない。
「レテくーん?キスの続きしないのー?」
「……しない」
「えぇー?!」
そうだ……決めたんだ。
あの日、2年前に。
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