蒼炎の魔術士

ibis

3話

「レテくーん?」
「お、ふ……ちょ、ちょっと……!なんで走んの……?」
「え?だってレテ君が慌ててるみたいだったし……」

 食料を持って走るソフィアの後を追いかけ―――その速さに付いていけない。
 ……いや違うんだ。ソフィアは『鬼族』。俺ら『人族』とはそもそも身体能力や運動能力が雲泥の差なのだ。
 だから決して、俺の運動神経が悪いとかではない……本当に。

「は……あ、キツい……マジ、ヤバイ……」
「……大丈夫?」
「大丈夫……大丈夫だけど……ちょっと休憩したい」
「ん、じゃあ休憩しよっか!」

 ソフィアが平原に座り―――その隣に座る。

「……完全に運動不足だね」
「は、はあ?んなわけないだろ?俺は元々こんな感じだし……」
「うんうん、そうだね。レテ君は負けず嫌いだからね」

 頭を撫でてくるソフィアの手を、抵抗せずに受け入れる。

「……平和だな」
「うん……ねぇ、レテ君」
「どうした?」
「……大好き、だよ?」

 当然言われた愛の言葉に、思考が停止した。
 でも、それも一瞬の話。

「……ああ。俺も大好きだ」
「うん……えへへ……」

 幸せそうに笑うソフィア……その桃色の唇に、顔を近づけ―――

「おうおう。こんな野原でいちゃつくのは止めとけ……誰が見てるかわかんねぇぞ?」
「うおっ?!」

 振り向き、背後に男が立っている事に気づく。
 金髪、碧眼。そして赤色のローブ……見覚えのある、というより、よく知った人物だった。

「『ビート』か……驚かせんなよ」
「悪いな!どうしても邪魔したくなっちまって!」
「クソ野郎かよ」

 ビート・サウンド……まあ、俺の友達みたいな奴だ。
 いや……6歳からの付き合いだからな、友達というより幼なじみって感じかな?

「『第12代 国王側近魔術士』、『音響の魔術士 ビート・サウンド』……お前に先を越されたのは、俺が唯一お前に負けた記録、だな」
「やめろよその呼び方!俺はもう一般人だっての!」

 俺は『第13代』、ビートは『第12代』……こいつに負けたのは、これが初めてだ。

『おい!早くしろよビート!』
『ま、待ってよレテイン……!』

 運動能力も、頭脳も、魔法の才能も……何もかも俺の方が勝っていた……でも、どこで負けたんだろうか。

「……ってか、お前が国外に出るとか珍しくないか?何かあったか?」
「おっ、そうだった!」

 ポケットに手を突っ込み―――何やら手紙のような物を手渡してくる。

「なんかレテインに渡してくれって頼まれたんだよな」
「……誰からだ」
「『ベルガドール様』からさ……ま、何があったかは知らんけど……」

 ベルガドール……『ヘヴァーナ』を治める国王だ。

「……お前、『国王側近魔術士』は引退しただろ?なんでベルガドール様から手紙を貰ってんだ?」
「たまたま『第14代』に会ってな!そん時に手紙を渡されたんだよ!」

 へぇ……『第14代』、決まってたのか。
 俺が勝手に『国王側近魔術士』を辞めてから、後の『国王側近魔術士』はどうするんだろうなーって思ってたけど……決まったんなら、良かった。

「おっ!ソフィアちゃんも久しぶりだな!」
「ひ、久しぶりだね……」
「何だよおいテンション低いな!レテインかよ!」
「おいコラ、誰のテンションが低いって?」

 ビートの頭を掴み、ソフィアから引き離す。
 ソフィアは……自分よりテンションが高いやつが苦手だ。

「……手紙、ありがとよ」
「おう!それじゃ、俺ぁ帰るからよ!」
「ああ……気を付け―――る必要もねぇか。お前だし」
「まあな!」

 ヒラヒラと手を振り、ビートが『ヘヴァーナ』へと引き返して行く。

「……帰ろうか」
「うん!」

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