蒼炎の魔術士

ibis

1話

「ふぁ……あ、ああ……?」

 窓から差す朝日が、視界を白く染める。

 ……朝か……なんか、寝不足だ。
 まぁ、寝不足の原因は何となくわかってるけど―――

「あ、レテ君起きたー?」
「……ああ……おはよう、ソフィア」
「おはよー!」

 薄紫色の髪、濃い紫色の瞳。そして額から生えた『角』……ソフィアだ。
 ちなみに何故寝不足かと言うと……ソフィアの寝顔を見てたら眠れなかった、という理由である。

「ね、お腹空いた!」
「わかった……じゃあ離れろ。飯作れねぇ」
「え~……レテ君と離れたくないよ~……」
「じゃあ飯作らねぇぞ」
「うーん……じゃあまだくっついてるね!」

 どうしてそうなる。

「はぁ……ほら離れろ。飯作るから」
「……くっついたまま作れない?」
「無理言うな。危ないから」
「………………………………わかった」

 しぶしぶ、といった感じで離れてくれた。

「……食べたい物はあるか?」
「レテ君の作るのなら何でも!」
「そうか……んじゃ、適当に作るからちょっと待ってろ」
「はーい!」

 そうだ……俺は、これを望んでいた。
 国王の護衛でも無く、下民を従えて上民ぶるわけでも無く……ただこうして、愛する人と朝を迎えて『今日はどうしようか』みたいな事を話して……こんな毎日が続けば……俺はそれだけで満足だ。

―――――――――――――――――――――――――

「ごちそーさま!」
「うい、お粗末さん」

 お腹いっぱいになったのか、心地良さそうな表情でソファーに寝転がる。

「……よし……どっか行くか?」
「ん!散歩!」
「散歩って……毎日毎日飽きないな?」
「レテ君と一緒だからね!」

 さらっと出た殺し文句に、顔が熱くなるのを感じる。

「あ……レテ君赤くなった!」
「なってねぇ……ほら行くぞ」
「はーい!」

 腕に抱きついてくるソフィアと共に、外へ出る。
 ……良い天気だ。昼寝でもしたくなる。

「はー!いい天気ー!」
「ああ……そうだな」
「もー!レテ君はいっつもテンション低いよね!もっと笑おうよ!笑ったら楽しいよー?」
「そういうソフィアは、いつもテンション高いよな……」

 笑ったら楽しいとか……俺はソフィアの隣にいれば幸せだから、別にいいよ。

「……そろそろ食料が少なくなってきたからな……今日はこのまま『ヘヴァーナ』に行くか」
「お、いいねー!」

 『ヘヴァーナ』……人間が暮らす国の名前だ。
 俺は……15歳まで、その国の魔術士として働いていた。
 15歳のある日、ソフィアに出会って……今に至るのだが。
 ちなみに、俺は今17歳だから、ソフィアとは大体2年間一緒に暮らしている。

「ほら!早く行こー!」
「はいはい……」

 駆け出すソフィアの後を、ゆっくりと追いかけた―――

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