カオティックアーツ
42:港町、アパダリア
  ぽこ派とマナ派の激闘? から数日後……
レインの馬車に揺られながら、楓たちは、港町【アパダリア】に辿りついた。
長旅のせいもあって、全員お腹が減っていた。
「さぁ、もうすぐアパダリアだよ。町についたらご飯にしよう!」
「クレハは食い意地が……」
クレハに一言いおうとした楓のお腹が、くぅと小さくなる。
楓もお腹が減っていたのだ。
「そんなこと言って~ 楓もお腹がすいているじゃない。
アパダリアに到着したらごはん、ごはん!」
馬車の中で、騒ぐクレハ。
馬車で暴れるなと言いたい楓だったが、先にレインに言われてしまった。
「ぽこ派!
ちょっと静かにしなさいな。
今は馬車で移動中なんですよ。
マナタイトちゃんがキズモノになったらどうしてくれるんですか!」
たしかに、商品をダメにされたらと楓は思った。
しかし、それは楓の思い違いだということを、ティオが教えてくれた。
「お兄さん、マナ派を舐めてはいけません。
あれは、商品価値じゃなく、純粋に、マナタイトタケに傷がついて欲しくないんです。
傷のついたら、キャラクターの可愛さが半減するという意味なんです」
なるほど、と思う楓。
カノンにキズが傷を負ったら、おそらく楓は怒るだろう。
カノンは大切な仲間であり、ライトワークのマスコットだと、楓は思っている。
「がうがう!」
楓の思考を察したのか、ふてくされた顔のカノンが、楓の膝をぺちぺち叩く。
そんな仕草が可愛かったのか、ティオと楓は、カノンを撫で回した。
そんな様子を見ていたブラスとクレハは、カノンを羨ましそうに見ている。
もちろん、楓に構ってもらっているカノンを見ての話だ。
二人共、楓に構ってもらいたいのだった。
そんな二人を見て、フレアが悪巧みをしようとするが、楓が何かを察して、フレアを威嚇する。
アパダリアに着くまで、不毛な争いが繰り広げられた。
そんな様子を見ていたレインは、楓を見ながら、楽しげにくすっと笑った。
***
「楓、さっきのことを訂正しなさい!」
「いや、今回は俺が正しい。俺の意見を聞くのがベストだ!」
クレハと楓は、アパダリアについたとたん、言い争いが始まった。
一体なんの騒ぎだと、住人たちが集まってくる。
「ふん、お前はなんにも分かっていない。
魚料理で一番美味しいのは焼きだ。
よって、アパダリアの名店【焼き魚亭】に行くことが正しい選択なんだ!」
腕を大きく振って、【焼き魚亭】の看板を指差す楓。
クレハは、そんな楓の様子を鼻で笑った。
「お魚さんは、生が一番。川だと寄生虫とかで食べれないもんね。だから、港町の名物である刺身が一番という事になる。
だから、【生魚亭】が正解なの!」
二人の争いは、焼き魚と生魚、どちらを食べたいかという、しょうもない争いだった。
それがわかった住人たちは、二人をくすっと笑ったあと、静かに去っていった。
楓は、全く気にしていなかったが、クレハの顔が次第に赤くなる。
どうやら恥ずかしかったようで、そんならやるなよと思う一同だった。
「と、とにかく、私はお刺身っていうのが食べてみたいの!
だから【生魚亭】に行く。
一緒に行きたい人はついてきて」
そう言うと、ブラスとフレアがクレハのもとに向かった。
楓のところに残ったのは、ティオとカノン。
レインは、商業ギルドに荷下ろしに行くそうで、食事は別で取るということになっている。
「ティオ、お前も刺身が良かったんなら、そっちに行っていんだぞ。
焼き魚が食べたいのは、俺のわがままだからな」
「そんなことないよ。ね、カノン」
「がうがう!」
「二人共、ありがとな」
楓は、ティオとカノンのことを優しく撫でてやった。
ティオは、十二歳ぐらいの男の子だ。
その割には、しっかりしており、料理などの家事全般が出来る。
そんな、しっかり者のティオが、最近、カノンと一緒に楓のところにやってくるようになったのだ。
きっと、ティオも甘えたいんだろう、楓はそう思っていた。
だからこそ、一緒に食事をしたいと、楓のもとにやってきたティオを優しく撫でたのだ。
撫でられたティオの顔は、少しばかり赤くなっていた。
「そ、それじゃあお兄さん。早く行きましょう!」
小走りで先に行ってしまったティオ。
楓は、何か悪いことでもしてしまったのだあろうか、と思った。
「悪いことしたなら、あとで謝っておかないとな」
楓のつぶやきを聞いていたカノンは、「こいつ、なんにも分かっていないな」的な、呆れた顔をして、楓の肩まで上り、頭をぺちぺちと叩いたのだった。
【生魚亭】に入ったクレハたち。
醸造酒がとっても合うということで、ブラスとフレアは、刺身の盛り合わせと醸造酒を。
クレハはお酒が年齢的に飲めないので、お刺身定食を頼んだ。
「おっさしみ、おっさしみー」
「おお、クレハ。上機嫌だね」
「ブラス、何言ってんのよ。お刺身よ。私たちが居た場所じゃ、一生食べられないものよ」
「はは、お刺身で喜ぶなんて、子供だな。
これじゃあ、楓は渡せないな」
クレハにドヤ顔をするブラス。
それにイラっと来たのか、クレハが反撃しようとする。
しかし、クレハが反撃するようなことは起こらなかった。
 (フレアさんの眼力が怖い……)
クレハは、フレアの逆鱗に触れそうだと感じて、素直に引き下がったのだ。
そう、フレアはお酒が大好きだった。
だからこそ、美味しいお酒が飲めなくなる状況を未然に防いだのだ。
そして、待ちに待った料理がやってきた。
しかし……
「……お刺身ってコレなの?」
「俺は何回か食べたことあるけど、こんなんじゃなかったぞ?」
「これ……アルコールを水で割っただけじゃない……」
出されたのは、お刺身ではなく、それに近いこんにゃくだった。
そして、醸造酒として出されたものは、アルコールを水で割ったものだった。
しかも、1対1。
味で分かるレベルのものだった。
アパダリア名物であるお刺身と醸造酒を提供する有名店に入ったのに、偽物を出されたクレハたちは、非常にがっかりしたのであった。
一方、【焼き魚亭】に行った楓たちは、海の魚を楽しみに待っていた。
川魚とは違い、種類も豊富であり、何より大きかったりする。
広く、深い海だからこそ、環境に合わせて進化してきた魚達。
その大きな魚の脂身には旨みが凝縮されており、激しい海流などを泳ぐために発達した筋肉は、厚みと食べごたえがある身になっている。
焼いた時に滴り落ちる旨みと魚の身が絡み合い、極上の逸品になるだろうと、楓は思っていた。
「ふふん、楽しみですね。お兄さん」
「ああ、そうだな。カノンも楽しみだよな」
「がうがう!」
カノンも魚が好物であり、実に楽しみにしていた。
上機嫌なカノンは、「まだかまだか」と体を揺らしながら待っていた。
そして、楽しみに待っていた料理が楓たちの前に並べられた。
そして、楽しみに待っていた楓たちの表情が絶望に変わる。
そう、川魚の定食だったのだ。
同じ焼き魚でも、川と海では全く違うものがある。
そして、港町に来た楓、ティオ、カノンは海の魚を食べたかったのだ。
しかし、来たのは川魚。
非常に残念である。
残念であるが、出された食事を残すわけには行かず、残さず食べて外に出た。
楓たちが外に出たと同時に、近くにあった、【生魚亭】からクレハたちが出てきた。
クレハたちの、非常にがっかりした表情に「ああ、向こうも同じだったんだな」と察した楓は、なんだか虚しくなり、大きくため息をついた。
レインの馬車に揺られながら、楓たちは、港町【アパダリア】に辿りついた。
長旅のせいもあって、全員お腹が減っていた。
「さぁ、もうすぐアパダリアだよ。町についたらご飯にしよう!」
「クレハは食い意地が……」
クレハに一言いおうとした楓のお腹が、くぅと小さくなる。
楓もお腹が減っていたのだ。
「そんなこと言って~ 楓もお腹がすいているじゃない。
アパダリアに到着したらごはん、ごはん!」
馬車の中で、騒ぐクレハ。
馬車で暴れるなと言いたい楓だったが、先にレインに言われてしまった。
「ぽこ派!
ちょっと静かにしなさいな。
今は馬車で移動中なんですよ。
マナタイトちゃんがキズモノになったらどうしてくれるんですか!」
たしかに、商品をダメにされたらと楓は思った。
しかし、それは楓の思い違いだということを、ティオが教えてくれた。
「お兄さん、マナ派を舐めてはいけません。
あれは、商品価値じゃなく、純粋に、マナタイトタケに傷がついて欲しくないんです。
傷のついたら、キャラクターの可愛さが半減するという意味なんです」
なるほど、と思う楓。
カノンにキズが傷を負ったら、おそらく楓は怒るだろう。
カノンは大切な仲間であり、ライトワークのマスコットだと、楓は思っている。
「がうがう!」
楓の思考を察したのか、ふてくされた顔のカノンが、楓の膝をぺちぺち叩く。
そんな仕草が可愛かったのか、ティオと楓は、カノンを撫で回した。
そんな様子を見ていたブラスとクレハは、カノンを羨ましそうに見ている。
もちろん、楓に構ってもらっているカノンを見ての話だ。
二人共、楓に構ってもらいたいのだった。
そんな二人を見て、フレアが悪巧みをしようとするが、楓が何かを察して、フレアを威嚇する。
アパダリアに着くまで、不毛な争いが繰り広げられた。
そんな様子を見ていたレインは、楓を見ながら、楽しげにくすっと笑った。
***
「楓、さっきのことを訂正しなさい!」
「いや、今回は俺が正しい。俺の意見を聞くのがベストだ!」
クレハと楓は、アパダリアについたとたん、言い争いが始まった。
一体なんの騒ぎだと、住人たちが集まってくる。
「ふん、お前はなんにも分かっていない。
魚料理で一番美味しいのは焼きだ。
よって、アパダリアの名店【焼き魚亭】に行くことが正しい選択なんだ!」
腕を大きく振って、【焼き魚亭】の看板を指差す楓。
クレハは、そんな楓の様子を鼻で笑った。
「お魚さんは、生が一番。川だと寄生虫とかで食べれないもんね。だから、港町の名物である刺身が一番という事になる。
だから、【生魚亭】が正解なの!」
二人の争いは、焼き魚と生魚、どちらを食べたいかという、しょうもない争いだった。
それがわかった住人たちは、二人をくすっと笑ったあと、静かに去っていった。
楓は、全く気にしていなかったが、クレハの顔が次第に赤くなる。
どうやら恥ずかしかったようで、そんならやるなよと思う一同だった。
「と、とにかく、私はお刺身っていうのが食べてみたいの!
だから【生魚亭】に行く。
一緒に行きたい人はついてきて」
そう言うと、ブラスとフレアがクレハのもとに向かった。
楓のところに残ったのは、ティオとカノン。
レインは、商業ギルドに荷下ろしに行くそうで、食事は別で取るということになっている。
「ティオ、お前も刺身が良かったんなら、そっちに行っていんだぞ。
焼き魚が食べたいのは、俺のわがままだからな」
「そんなことないよ。ね、カノン」
「がうがう!」
「二人共、ありがとな」
楓は、ティオとカノンのことを優しく撫でてやった。
ティオは、十二歳ぐらいの男の子だ。
その割には、しっかりしており、料理などの家事全般が出来る。
そんな、しっかり者のティオが、最近、カノンと一緒に楓のところにやってくるようになったのだ。
きっと、ティオも甘えたいんだろう、楓はそう思っていた。
だからこそ、一緒に食事をしたいと、楓のもとにやってきたティオを優しく撫でたのだ。
撫でられたティオの顔は、少しばかり赤くなっていた。
「そ、それじゃあお兄さん。早く行きましょう!」
小走りで先に行ってしまったティオ。
楓は、何か悪いことでもしてしまったのだあろうか、と思った。
「悪いことしたなら、あとで謝っておかないとな」
楓のつぶやきを聞いていたカノンは、「こいつ、なんにも分かっていないな」的な、呆れた顔をして、楓の肩まで上り、頭をぺちぺちと叩いたのだった。
【生魚亭】に入ったクレハたち。
醸造酒がとっても合うということで、ブラスとフレアは、刺身の盛り合わせと醸造酒を。
クレハはお酒が年齢的に飲めないので、お刺身定食を頼んだ。
「おっさしみ、おっさしみー」
「おお、クレハ。上機嫌だね」
「ブラス、何言ってんのよ。お刺身よ。私たちが居た場所じゃ、一生食べられないものよ」
「はは、お刺身で喜ぶなんて、子供だな。
これじゃあ、楓は渡せないな」
クレハにドヤ顔をするブラス。
それにイラっと来たのか、クレハが反撃しようとする。
しかし、クレハが反撃するようなことは起こらなかった。
 (フレアさんの眼力が怖い……)
クレハは、フレアの逆鱗に触れそうだと感じて、素直に引き下がったのだ。
そう、フレアはお酒が大好きだった。
だからこそ、美味しいお酒が飲めなくなる状況を未然に防いだのだ。
そして、待ちに待った料理がやってきた。
しかし……
「……お刺身ってコレなの?」
「俺は何回か食べたことあるけど、こんなんじゃなかったぞ?」
「これ……アルコールを水で割っただけじゃない……」
出されたのは、お刺身ではなく、それに近いこんにゃくだった。
そして、醸造酒として出されたものは、アルコールを水で割ったものだった。
しかも、1対1。
味で分かるレベルのものだった。
アパダリア名物であるお刺身と醸造酒を提供する有名店に入ったのに、偽物を出されたクレハたちは、非常にがっかりしたのであった。
一方、【焼き魚亭】に行った楓たちは、海の魚を楽しみに待っていた。
川魚とは違い、種類も豊富であり、何より大きかったりする。
広く、深い海だからこそ、環境に合わせて進化してきた魚達。
その大きな魚の脂身には旨みが凝縮されており、激しい海流などを泳ぐために発達した筋肉は、厚みと食べごたえがある身になっている。
焼いた時に滴り落ちる旨みと魚の身が絡み合い、極上の逸品になるだろうと、楓は思っていた。
「ふふん、楽しみですね。お兄さん」
「ああ、そうだな。カノンも楽しみだよな」
「がうがう!」
カノンも魚が好物であり、実に楽しみにしていた。
上機嫌なカノンは、「まだかまだか」と体を揺らしながら待っていた。
そして、楽しみに待っていた料理が楓たちの前に並べられた。
そして、楽しみに待っていた楓たちの表情が絶望に変わる。
そう、川魚の定食だったのだ。
同じ焼き魚でも、川と海では全く違うものがある。
そして、港町に来た楓、ティオ、カノンは海の魚を食べたかったのだ。
しかし、来たのは川魚。
非常に残念である。
残念であるが、出された食事を残すわけには行かず、残さず食べて外に出た。
楓たちが外に出たと同時に、近くにあった、【生魚亭】からクレハたちが出てきた。
クレハたちの、非常にがっかりした表情に「ああ、向こうも同じだったんだな」と察した楓は、なんだか虚しくなり、大きくため息をついた。
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