カオティックアーツ
35:実力テスト ブラス編
冒険者ギルドの登録用紙を全て記入し終わった楓とブラスは、受付嬢に用紙を渡す。
用紙を受け取った受付嬢は、軽く内容をみて驚愕する。
「せ、聖騎士ですか……」
「ん、元聖騎士な。俺はもうやめた身だ」
「元でも、聖騎士の方なら、それなりのランクになれますよ!」
そして、怪しげな目で楓を見てきた受付嬢。
楓は、記入した用紙に不備があったのかと思い不安になった。
「あなたは、もう少し真面目に書いて欲しいですよ」
「何か不備でもありましたか?」
「ありまくりですよ! なんですか、研究者兼技術者って。それに、討伐履歴にぽこりん数万とか、ありえません!」
「いや、やったのは事実なんだが……」
「技術者や研究者が魔物討伐なんて、できる訳ないじゃないですか!」
「俺のカオティックアーツに不可能はない!」
「そのカオ何とかがどれだけすごいか知りませんが、嘘は良くないと思います!」
興奮気味で言い寄ってくる受付嬢。
本当のことしか書いていない楓にとって、どうすればいいのかわからない状況になった。
「楓の行っていることは、本当ですよ。異常な性能をもつ武器を製造できるやつなんです。武器の性能は、俺が保証しますよ」
「せ、聖騎士だったブラスさんが言うなら……信じましょう」
この言い方は、絶対に信じてないなと楓は思った。
この世界には、強大な魔物が多くいる。
そんな魔物を簡単に屠れる武器は、この世界に存在しない。
だからこそ信じてもらえないのだが、楓は常識が少しずれていた。
楓のいた世界なら、幼児でも、カオティックアーツを使えば大人を倒せる。
楓のいた世界は、そんな物騒なものが溢れていた。
戦争のために使うものではなく、より豊かにするための技術だが、全ては使い方だ。
薬も適量を飲めば風邪が治るが、必要以上飲めば死に至る。
それと同じで、正しい使い方をすれば豊かになる道具も、使い方を誤れば、死に至るのだ。
楓の作るカオティックアーツは、この世界で生きていくために、攻撃性能をあげた武器だ。
その武器を使えば、簡単に魔物を討伐できるだろう。
しかし、その武器の存在を知らないものから見たらどうだろうか。
当然、信じられない。
だからこそ、受付嬢は、疑惑の目を向けた。
そして、嘘なら実力テストで落ちるだろうとも思っていた。
「次に、実力テストですね。訓練所に案内します」
受付嬢の案内のもと、訓練所に到着した、楓とブラス。
複数人で、訓練や模擬戦ができるように、広く、地面も整った場所だった。
「あそこにいる二人が本日の試験官になります」
受付嬢が指した方には、二人の冒険者がいた。
一人は、鎧を着ており、前衛で戦っている冒険者だということが分かる。
もうひとりは、ローブを被っている。
魔法は禁忌であり、忌むべきものだが、それに代わるものが存在する。
それが、聖法だ。
おそらく、聖導士だろうと、ブラスはいった。
聖法を駆使して、前衛を援護する後衛職という事を、ブラスに教えてもらった。
「俺たちが、試験官となる冒険者だ。どちらかが、一人ずつと戦ってもらう。実力や戦い方を見て、お前たちのランクが決定する。必死でガンバレ」
「そこに、模擬戦闘用に武器があります。自分の武器がある場合、それでも構いません。模擬戦闘用の武器は、まだ、武器を持っていない人のためですから」
その言葉に楓は、少し悩んだ。
楓が持つカオティックアーツは、戦闘用のため、高い威力を持つ。
模擬戦闘に絶対に使えない武器だ。
だが、楓はカオティックアーツがないと戦えない。
楓は、研究者兼技術者なのだ。
それはブラスも同じであり、ブラスが使っている武器は、楓が作成したカオティックアーツ【ヴァイブロブレード】だ。
斬りつければ簡単に鎧や盾を切り裂ける剣を使ってしまっては、ヘタをしたら相手を殺してしまう恐れがある。
しかし、ブラスは元聖騎士。
剣術の心得があるため、模擬戦闘用の武器でも問題なかった。
「さて、どちらが先に実力テストを受けるんだ」
「ブラス、お前が先に受けろ。俺はカオティックアーツを使いたいんだけど、威力が高すぎて、このままでは使えない」
「ああ、いいよ。俺は模擬戦闘用の武器があれば大丈夫だからな」
楓とブラスの会話を聞いて、試験官の二人が笑った。
「はは、武器の性能が高すぎて戦えないだ。そんなんじゃ冒険者としてやっていけないぞ」
「そうですね。それに、威力が高い武器なら、それなりの大きさになるでしょう。そんなものを常日頃から持ち歩くのは、非効率的ですね」
そう言って、楓を馬鹿にする試験官たち。
楓を愛するブラスにとっては、絶対に許せな言葉だった。
「訂正するなら今のうちですよ。楓を馬鹿にする奴は俺が許せない。俺の愛しい楓を馬鹿にするやつを許せな……痛い……」
バカなことを口走っているブラスの頭を、楓が殴った。
ブラスの言葉を聞いていた受付嬢は「え、もしかしてこの二人って……」とつぶやいていたが、気にしたいことにする。
受付嬢が腐っていたとしても気にしない。
絶対に気にしないぞと、心に誓う楓だった。
「俺はカオティックアーツの調整に入る。先にガンバレ」
「楓が見てくれないのは悲しいが、やってやるよ」
「おまえの相手は俺かな?」
前衛職っぽい冒険者が前にでた。
ブラスは、模擬戦闘用の武器を構える。
「お前も、剣に自身がみたいだが、修羅場を掻い潜ってきたAランクの冒険者についてこれるかな!」
冒険者は、ブラスを切りつけにきた。
だが、ブラスから見て、冒険者の剣は遅かった。
これなら、前に戦った聖騎士隊隊長のドルフの方が速いと思うブラス。
冒険者の攻撃を難なく受け止める。
「ほう、これを防いだか」
「いや、攻撃が遅すぎますよっと」
ブラスは冒険者に反撃する。
聖騎士は、魔女などの、教典の意に反する存在を裁く、特別な騎士団だ。
聖騎士が相手にするのは強敵しかいない。
それを考慮して、聖騎士に入る前に特別な訓練などを受けている。
そして、冒険者とは違い、対人戦なども考慮されて訓練している騎士にとって、主に魔物と戦っている冒険者は弱すぎた。
魔物の討伐と考えるならば、おそらく冒険者の方がうまく動けるだろう。
だが、この実力テストは対人戦。
対人戦において、冒険者が元聖騎士に勝てるわけがなかった。
ブラスが放つ高速剣に対応できなかった冒険者は、あっさりとやられてしまう。
「俺の勝ちかな」
「ち、畜生。これじゃあAランクも返上かな?」
「そんなことはないさ。冒険者が主に相手にするのは魔物だろう。俺は元聖騎士。対人戦に対する心得がある。その差じゃないのか?」
「な、聖騎士だったのか。それならこの強さは納得いく。流石だ。おめでとう。これでお前も冒険者だ」
「ああ、ありがとう」
ブラスと冒険者が握手を交わす。
なかなかの激闘だったと、受付嬢が言っていた。
楓は、前のドルフとの戦いの方がすごかったと思っていた。
「では、判定の結果、ブラスさんはAランク冒険者として認定します」
「そんなに簡単でいいのか?」
「実力がある人を遊ばせておくのはもったいないですから」
それもそうか、とブラスは思った。
ブラスの冒険者ランクが告げられた頃、楓はカオティックアーツの調整を終えていた。
「じゃあ、次は楓の番だな。ガンバレ」
「言われなくても、できる限りのことはするさ」
「じゃあ、君の相手は私だね」
ローブを被った、聖導士の冒険者が前に出てきた。
ふん、やるべき事はやってやる、楓はそう思って前に出て行った。
用紙を受け取った受付嬢は、軽く内容をみて驚愕する。
「せ、聖騎士ですか……」
「ん、元聖騎士な。俺はもうやめた身だ」
「元でも、聖騎士の方なら、それなりのランクになれますよ!」
そして、怪しげな目で楓を見てきた受付嬢。
楓は、記入した用紙に不備があったのかと思い不安になった。
「あなたは、もう少し真面目に書いて欲しいですよ」
「何か不備でもありましたか?」
「ありまくりですよ! なんですか、研究者兼技術者って。それに、討伐履歴にぽこりん数万とか、ありえません!」
「いや、やったのは事実なんだが……」
「技術者や研究者が魔物討伐なんて、できる訳ないじゃないですか!」
「俺のカオティックアーツに不可能はない!」
「そのカオ何とかがどれだけすごいか知りませんが、嘘は良くないと思います!」
興奮気味で言い寄ってくる受付嬢。
本当のことしか書いていない楓にとって、どうすればいいのかわからない状況になった。
「楓の行っていることは、本当ですよ。異常な性能をもつ武器を製造できるやつなんです。武器の性能は、俺が保証しますよ」
「せ、聖騎士だったブラスさんが言うなら……信じましょう」
この言い方は、絶対に信じてないなと楓は思った。
この世界には、強大な魔物が多くいる。
そんな魔物を簡単に屠れる武器は、この世界に存在しない。
だからこそ信じてもらえないのだが、楓は常識が少しずれていた。
楓のいた世界なら、幼児でも、カオティックアーツを使えば大人を倒せる。
楓のいた世界は、そんな物騒なものが溢れていた。
戦争のために使うものではなく、より豊かにするための技術だが、全ては使い方だ。
薬も適量を飲めば風邪が治るが、必要以上飲めば死に至る。
それと同じで、正しい使い方をすれば豊かになる道具も、使い方を誤れば、死に至るのだ。
楓の作るカオティックアーツは、この世界で生きていくために、攻撃性能をあげた武器だ。
その武器を使えば、簡単に魔物を討伐できるだろう。
しかし、その武器の存在を知らないものから見たらどうだろうか。
当然、信じられない。
だからこそ、受付嬢は、疑惑の目を向けた。
そして、嘘なら実力テストで落ちるだろうとも思っていた。
「次に、実力テストですね。訓練所に案内します」
受付嬢の案内のもと、訓練所に到着した、楓とブラス。
複数人で、訓練や模擬戦ができるように、広く、地面も整った場所だった。
「あそこにいる二人が本日の試験官になります」
受付嬢が指した方には、二人の冒険者がいた。
一人は、鎧を着ており、前衛で戦っている冒険者だということが分かる。
もうひとりは、ローブを被っている。
魔法は禁忌であり、忌むべきものだが、それに代わるものが存在する。
それが、聖法だ。
おそらく、聖導士だろうと、ブラスはいった。
聖法を駆使して、前衛を援護する後衛職という事を、ブラスに教えてもらった。
「俺たちが、試験官となる冒険者だ。どちらかが、一人ずつと戦ってもらう。実力や戦い方を見て、お前たちのランクが決定する。必死でガンバレ」
「そこに、模擬戦闘用に武器があります。自分の武器がある場合、それでも構いません。模擬戦闘用の武器は、まだ、武器を持っていない人のためですから」
その言葉に楓は、少し悩んだ。
楓が持つカオティックアーツは、戦闘用のため、高い威力を持つ。
模擬戦闘に絶対に使えない武器だ。
だが、楓はカオティックアーツがないと戦えない。
楓は、研究者兼技術者なのだ。
それはブラスも同じであり、ブラスが使っている武器は、楓が作成したカオティックアーツ【ヴァイブロブレード】だ。
斬りつければ簡単に鎧や盾を切り裂ける剣を使ってしまっては、ヘタをしたら相手を殺してしまう恐れがある。
しかし、ブラスは元聖騎士。
剣術の心得があるため、模擬戦闘用の武器でも問題なかった。
「さて、どちらが先に実力テストを受けるんだ」
「ブラス、お前が先に受けろ。俺はカオティックアーツを使いたいんだけど、威力が高すぎて、このままでは使えない」
「ああ、いいよ。俺は模擬戦闘用の武器があれば大丈夫だからな」
楓とブラスの会話を聞いて、試験官の二人が笑った。
「はは、武器の性能が高すぎて戦えないだ。そんなんじゃ冒険者としてやっていけないぞ」
「そうですね。それに、威力が高い武器なら、それなりの大きさになるでしょう。そんなものを常日頃から持ち歩くのは、非効率的ですね」
そう言って、楓を馬鹿にする試験官たち。
楓を愛するブラスにとっては、絶対に許せな言葉だった。
「訂正するなら今のうちですよ。楓を馬鹿にする奴は俺が許せない。俺の愛しい楓を馬鹿にするやつを許せな……痛い……」
バカなことを口走っているブラスの頭を、楓が殴った。
ブラスの言葉を聞いていた受付嬢は「え、もしかしてこの二人って……」とつぶやいていたが、気にしたいことにする。
受付嬢が腐っていたとしても気にしない。
絶対に気にしないぞと、心に誓う楓だった。
「俺はカオティックアーツの調整に入る。先にガンバレ」
「楓が見てくれないのは悲しいが、やってやるよ」
「おまえの相手は俺かな?」
前衛職っぽい冒険者が前にでた。
ブラスは、模擬戦闘用の武器を構える。
「お前も、剣に自身がみたいだが、修羅場を掻い潜ってきたAランクの冒険者についてこれるかな!」
冒険者は、ブラスを切りつけにきた。
だが、ブラスから見て、冒険者の剣は遅かった。
これなら、前に戦った聖騎士隊隊長のドルフの方が速いと思うブラス。
冒険者の攻撃を難なく受け止める。
「ほう、これを防いだか」
「いや、攻撃が遅すぎますよっと」
ブラスは冒険者に反撃する。
聖騎士は、魔女などの、教典の意に反する存在を裁く、特別な騎士団だ。
聖騎士が相手にするのは強敵しかいない。
それを考慮して、聖騎士に入る前に特別な訓練などを受けている。
そして、冒険者とは違い、対人戦なども考慮されて訓練している騎士にとって、主に魔物と戦っている冒険者は弱すぎた。
魔物の討伐と考えるならば、おそらく冒険者の方がうまく動けるだろう。
だが、この実力テストは対人戦。
対人戦において、冒険者が元聖騎士に勝てるわけがなかった。
ブラスが放つ高速剣に対応できなかった冒険者は、あっさりとやられてしまう。
「俺の勝ちかな」
「ち、畜生。これじゃあAランクも返上かな?」
「そんなことはないさ。冒険者が主に相手にするのは魔物だろう。俺は元聖騎士。対人戦に対する心得がある。その差じゃないのか?」
「な、聖騎士だったのか。それならこの強さは納得いく。流石だ。おめでとう。これでお前も冒険者だ」
「ああ、ありがとう」
ブラスと冒険者が握手を交わす。
なかなかの激闘だったと、受付嬢が言っていた。
楓は、前のドルフとの戦いの方がすごかったと思っていた。
「では、判定の結果、ブラスさんはAランク冒険者として認定します」
「そんなに簡単でいいのか?」
「実力がある人を遊ばせておくのはもったいないですから」
それもそうか、とブラスは思った。
ブラスの冒険者ランクが告げられた頃、楓はカオティックアーツの調整を終えていた。
「じゃあ、次は楓の番だな。ガンバレ」
「言われなくても、できる限りのことはするさ」
「じゃあ、君の相手は私だね」
ローブを被った、聖導士の冒険者が前に出てきた。
ふん、やるべき事はやってやる、楓はそう思って前に出て行った。
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