カオティックアーツ
33:宿屋探しに冒険者ギルド
半日ほど経った頃、ようやく村に到着した。
村の名は【クラウス】といい、野菜がとても美味しいと評判のある、村々の一つである。
特に馬鈴薯が美味しいらしく、数多の国から注文があるそうだ。
【クラウス】は、他の村々と違い、畜産農家が多い。
そのため、牛乳やチーズ、シチューなどのおいしい料理がある。
村に入ったとたん、あちらこちらから、食欲をそそる、いい匂いが漂っていた。
時刻は、夕暮れ時。
ちょうど、夕飯を食べている時間帯だ。
クレハのおなかが、くぅと小さくなる。
クレハは、「あはは」と笑いながら誤魔化した。
「ふふ、みんなありがとね。無事に村までたどり着くことができたわ」
「まぁ、成り行きってことで」
「そうそう、あまり気にしないで。私のお腹の方が大変なのよ!」
「ふふ、だったら、いいお店を紹介してあげる。それと、襲われているところを助けてもらってから、ここまで護衛してもらってたんだから、ちゃんと報酬出さないとね」
「いいですよ。報酬なんて……」
「ちょっとフレアさん。ここは俺に任せてください。報酬、ありがたくいただきます。ところで、ちょっとお願いがあるんですけど」
「報酬のこと? ふふ、もしかして、この服が欲しいって、エッチ!」
「ちょ、違いますから!」
「そんなに否定しなくても……報酬の件は、また後にしましょう。荷下ろしに商業ギルドに行かないといけないのよ。あなたたちはどうするの?」
「とりあえず、今日の宿を決めないといけないので、どこに行けば……」
ここと違う世界から来た楓は、宿屋の探し方なんて知らなかった。
元の世界なら、旅行案内所なんかに行けば、全てが解決した。
空いている宿の情報なんかもすぐに手に入った。
しかし、ここは異世界だ。
そんな場所なんてあるはずがない。
さて、どうしたらいいのだろうか。
楓は、無駄に高い知能をフル回転させて、効率の良い方法を考えた。
そんな楓を邪魔するように、クレハがぽろっと呟いた。
「冒険者ギルドに行かないといけないのかぁ。ヤダな。あそこは無駄に暑苦しい人が多いから……」
「え、なんで冒険者ギルドなんだ」
「冒険者ギルドには、村の宿情報があるはずよ。まぁここに冒険者ギルドがあればの話なんだけどね」
「大丈夫ですよ。この村は、周辺の村よりも大きいので、冒険者ギルドがちゃんとありますよ!」
「ならよかった。じゃあ、後で合流しましょう。話はその時にでも」
「ええ、わかったわ。じゃあ、商業ギルドに行ってくるわね」
「また後で」と手を振って去っているレイン。
クレハも同じく手を振って、「じゃあ、冒険者ギルドに行こ!」と言って、楓の手を、しっかり握って引っ張ってった。
本当なら、クレハと手をつないでいる状況になにか感じるべきところなのだが、無駄にいい知能をフル回転させたのに、全て無駄に終わったことがちょっぴりショックだった楓は、そんなことを気にする余裕がなかった。
そんな楓を見て、ちょっぴりむすっとするクレハをブラス以外全員が、優しく見守りながら冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドに到着すると、仕事終わりの冒険者たちで賑わっていた。
冒険者ギルドは、仕事を受けるカウンタ以外に、酒場がある。
その酒場で飲みながら、たわいもない話をしているんだろうと楓は思った。
「あ、また賑わってるね。私、あの酒場って嫌いなんだよ」
「どうしてなんです、フレアさん」
いかにもお酒が好きそうなフレアが、「酒場が嫌い」など言い出したので、ブラスはつい聞いてしまった。
「私はお酒が好きなんだけど、どうもこの酒場だけはだめなんだよ。この酒場って、冒険者の引き止めみたいな場所なんだよ」
「ど、どういう……」
怪しげなことを話しだしたフレアに、楓も聞いてしまった。
「あれだよ。冒険者に登録した人だけ使えます的なあれだ。まぁ、ここのギルドにはないが、冒険者なら割引などなどなんでもありだ!」
「でも、割引ぐらいなら別にいいじゃないですか?」
「いや、あれは、危険な冒険をしてしまった冒険者がいたとしよう。『今日でやめる』、彼はそう思っていた。でも、冒険者をやめてしまうと酒場の割引、料理の無料提供などなどの冒険者限定サービスが受けられなくなってしまう。悩んだ結果、命は無事だったからと、冒険者限定サービスを選ぶ。冒険者がやめないようにするための策略なのだよ」
「そんな馬鹿な事があるわけ……」
「な、なんでバレてるんですか! 冒険者ギルドのトップシークレットが!」
楓たちの話を盗み聞きしていたギルドの受付嬢が、慌ててやってきた。
小柄な受付嬢の胸は、走る度に揺れており、クレハは自分の胸の大きさと比べてショックを受ける。
クレハは、一体どうしたらああなれるのか、など考えながら、楓を殴った。
「ぐはぁ、クレハ! いきなり何するんだよ」
「う、受付嬢の胸に視線が……なんて思っていないんだからね」
「気持ち、ダダ漏れだよ」
「そ、それで、先ほどの話は、ギルドでもトップシークレットなんですぅ」
かぁぁぁと頬が赤くなる受付嬢。
どうやら、楓とクレハのやり取りも聞いていたみたいだった。
「俺は見ていないからな」と言い訳みたいなことを言って、「はぁ」とため息をつく楓だった。
村の名は【クラウス】といい、野菜がとても美味しいと評判のある、村々の一つである。
特に馬鈴薯が美味しいらしく、数多の国から注文があるそうだ。
【クラウス】は、他の村々と違い、畜産農家が多い。
そのため、牛乳やチーズ、シチューなどのおいしい料理がある。
村に入ったとたん、あちらこちらから、食欲をそそる、いい匂いが漂っていた。
時刻は、夕暮れ時。
ちょうど、夕飯を食べている時間帯だ。
クレハのおなかが、くぅと小さくなる。
クレハは、「あはは」と笑いながら誤魔化した。
「ふふ、みんなありがとね。無事に村までたどり着くことができたわ」
「まぁ、成り行きってことで」
「そうそう、あまり気にしないで。私のお腹の方が大変なのよ!」
「ふふ、だったら、いいお店を紹介してあげる。それと、襲われているところを助けてもらってから、ここまで護衛してもらってたんだから、ちゃんと報酬出さないとね」
「いいですよ。報酬なんて……」
「ちょっとフレアさん。ここは俺に任せてください。報酬、ありがたくいただきます。ところで、ちょっとお願いがあるんですけど」
「報酬のこと? ふふ、もしかして、この服が欲しいって、エッチ!」
「ちょ、違いますから!」
「そんなに否定しなくても……報酬の件は、また後にしましょう。荷下ろしに商業ギルドに行かないといけないのよ。あなたたちはどうするの?」
「とりあえず、今日の宿を決めないといけないので、どこに行けば……」
ここと違う世界から来た楓は、宿屋の探し方なんて知らなかった。
元の世界なら、旅行案内所なんかに行けば、全てが解決した。
空いている宿の情報なんかもすぐに手に入った。
しかし、ここは異世界だ。
そんな場所なんてあるはずがない。
さて、どうしたらいいのだろうか。
楓は、無駄に高い知能をフル回転させて、効率の良い方法を考えた。
そんな楓を邪魔するように、クレハがぽろっと呟いた。
「冒険者ギルドに行かないといけないのかぁ。ヤダな。あそこは無駄に暑苦しい人が多いから……」
「え、なんで冒険者ギルドなんだ」
「冒険者ギルドには、村の宿情報があるはずよ。まぁここに冒険者ギルドがあればの話なんだけどね」
「大丈夫ですよ。この村は、周辺の村よりも大きいので、冒険者ギルドがちゃんとありますよ!」
「ならよかった。じゃあ、後で合流しましょう。話はその時にでも」
「ええ、わかったわ。じゃあ、商業ギルドに行ってくるわね」
「また後で」と手を振って去っているレイン。
クレハも同じく手を振って、「じゃあ、冒険者ギルドに行こ!」と言って、楓の手を、しっかり握って引っ張ってった。
本当なら、クレハと手をつないでいる状況になにか感じるべきところなのだが、無駄にいい知能をフル回転させたのに、全て無駄に終わったことがちょっぴりショックだった楓は、そんなことを気にする余裕がなかった。
そんな楓を見て、ちょっぴりむすっとするクレハをブラス以外全員が、優しく見守りながら冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドに到着すると、仕事終わりの冒険者たちで賑わっていた。
冒険者ギルドは、仕事を受けるカウンタ以外に、酒場がある。
その酒場で飲みながら、たわいもない話をしているんだろうと楓は思った。
「あ、また賑わってるね。私、あの酒場って嫌いなんだよ」
「どうしてなんです、フレアさん」
いかにもお酒が好きそうなフレアが、「酒場が嫌い」など言い出したので、ブラスはつい聞いてしまった。
「私はお酒が好きなんだけど、どうもこの酒場だけはだめなんだよ。この酒場って、冒険者の引き止めみたいな場所なんだよ」
「ど、どういう……」
怪しげなことを話しだしたフレアに、楓も聞いてしまった。
「あれだよ。冒険者に登録した人だけ使えます的なあれだ。まぁ、ここのギルドにはないが、冒険者なら割引などなどなんでもありだ!」
「でも、割引ぐらいなら別にいいじゃないですか?」
「いや、あれは、危険な冒険をしてしまった冒険者がいたとしよう。『今日でやめる』、彼はそう思っていた。でも、冒険者をやめてしまうと酒場の割引、料理の無料提供などなどの冒険者限定サービスが受けられなくなってしまう。悩んだ結果、命は無事だったからと、冒険者限定サービスを選ぶ。冒険者がやめないようにするための策略なのだよ」
「そんな馬鹿な事があるわけ……」
「な、なんでバレてるんですか! 冒険者ギルドのトップシークレットが!」
楓たちの話を盗み聞きしていたギルドの受付嬢が、慌ててやってきた。
小柄な受付嬢の胸は、走る度に揺れており、クレハは自分の胸の大きさと比べてショックを受ける。
クレハは、一体どうしたらああなれるのか、など考えながら、楓を殴った。
「ぐはぁ、クレハ! いきなり何するんだよ」
「う、受付嬢の胸に視線が……なんて思っていないんだからね」
「気持ち、ダダ漏れだよ」
「そ、それで、先ほどの話は、ギルドでもトップシークレットなんですぅ」
かぁぁぁと頬が赤くなる受付嬢。
どうやら、楓とクレハのやり取りも聞いていたみたいだった。
「俺は見ていないからな」と言い訳みたいなことを言って、「はぁ」とため息をつく楓だった。
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