カオティックアーツ
10:助ける方法
「フレアさん、聖呪痕について詳しく教えてください」
楓は、フレアに必死で頼んでいた。
それは、ティオとカノンの思いに応えるため。
親を助けたいと思う気持ちに応えるためだ。
しかし、助けるための情報がない。
いくら楓が、カオティックアーツという優れた技術があったとしても、助ける方法が分からなければ助けられない。
だから、フレアに頼んでいた。
情報が欲しいと……
「私も詳しくはわからん。聖呪痕は教会の名を語ったイカレタ組織【オルタクルス】という組織が開発したものだ。聖樹痕に関して事件が起こったことがある。私が知っているのはそれぐらいだ」
「ええ、それでも構いません。小さな手がかりでもなんでもいいです。少しでも、カノンの親を助けるために……」
「きゅ~がうがう」
カノンにも、楓の助けたいという気持ちが伝わってきたのか、楓のもとに寄ってくる。
「お兄さん。カノンもなにか手伝いたいって言っているよ」
「はは、今は大丈夫だ。俺が何とかしてやるからな。だから、いい子で待っとけ」
そっと、楓がカノンの頭を撫でる。
いつもなら、楓の手を噛むカノンだが、この時は、楓を噛まなかった。
(……この毛並みはすごいな。柔らかいようで硬い。これでは並みの武器が通らない)
カノンの頭を撫でながら、カノンの親をどうやって抑えるけるかも考えていた。
並みの攻撃が通らない。
これでは麻酔弾なども体に入らずに終わってしまう。
あのまま、真正面で戦ったら確実に死ぬ。
さて、どうしたものかと悩んでいると……
「楓、カノンを撫でながら何か考えているようだけど、聖呪痕はもういいのか?」
「すいません。カノンを触ったら毛並みが気になって…」
「まあ、【ライオネイラ】の強靭な毛並みは凄いから気になるのも仕方がないな。で、聖呪痕のことなんだが……」
フレアは語る。
数年前に【オルタクルス】のとある研究所から一人の男が脱走した。
その男の腕には怪しげな輝きを持つ痣があった。
痛みに耐えているのか、それとも別の何かで苦しんでいるのかはわからない。
だけど、確実に何かに蝕まれているのがわかった。
憲兵たちと教会の者、【オルタクルス】の者達の中で、戦闘経験がある者たちが、その男を囲った。
男から見られる感情は、激昂、不安、恐怖、悪意、そして闇……
それらすべてが混ざり合ったかのような雄叫びを上げた。
そこたら男が突然変異し始めた。
黒く、いろんな負の思いが混ざったモヤをまといながら、近くにいた人たちを殺していく。
なんとか男を抑えることに成功したらしいが、その時の男は全身が真っ黒になっており、まるで人の形をした何かのようにしか見えなかったという。
聖なる呪いというにはあまりにも邪悪ですぎる呪いだった。
分類として、聖法の部類に含まれる聖呪痕の解呪方法は未だに見つかっていない。
「……というのが事件の内容だ」
「それだけなんですか? それだけではカノンの親を助けるための手がかりには……」
「いや、まだ聞いたことがあるものがある。それは聖呪痕が何なのかだ」
「でも、それはフレアさんが事件を例にして話してくれたじゃないですか?」
「いや、あれは事件の内容。その後、私は聖呪痕の話をたまたま聞いたの」
フレアが言うには、聖樹痕とは、周囲から聖法気だと思われるエネルギーを直接体内に送り込んで術を使うためのもの。
聖呪痕自体がある効力を及ぼす魔法陣のようになっている。
そこに力を加えれば、魔法陣に施した術が発動する。
楓が【インフィニティ】に使用した魔法陣によるコンパクト化と同じ原理であることがわかった。
「あとは術を解くためにどうすればいいか考えなくては……」
「それについても問題ないと思うよ」
「クレハ、それはどういうことだ」
「要は聖法を使えなくすればいいのよね」
「いや、既に使われた聖法による体の変化も直さないと、すべてもとに戻らないかもしれないんだ」
「魔法の場合はあるべき形に戻るわよ。【ティムバー・リストリクションズ】だって、使用後に木が元の状態に戻るもの」
「むー」
楓は何か引っかかるような気がしていた。
聖呪痕は自然にある聖法気をもとに、常時、術が発動して、相手を苦しめる聖法。
聖法の効果は体の変質。
悪意、殺意、嫉妬、不満、あらゆる負の感情と凶暴性、それに見合った力を与える、聖と言うにはほど遠いい悪魔的呪い。
聖呪痕を消すだけでどうにかなるとも思えない。
そう、楓は直感的に感じ取っていた。
「楓、お前が悩むのもわかる。聖呪痕を消したぐらいじゃ元に戻らないだろう」
「やはりそうですか……」
「ああ、普通の魔法には、使役後に残留する魔力を発散させる工程がある。これをしなければ、魔法によって変質したものがそのままになってしまうからな。残留する力さえ消し飛ばすことができれば、元に戻る可能性はある、しかし……」
「しかしどうしたの? フレア姉さん! 助ける方法があるなら、大丈夫じゃない!」
「クレハ、方法はないんだよ。力を発散させるだけの魔法や聖法気は存在しない。なぜそれができないのか。それは魔法を使用するときの魔力すらも発散させてしまうからだ。元のエネルギーがなければ何も発動しない…」
「そ、そんな……」
ドン!
場が静寂になる。
机を叩いたのは楓だ。
楓は何か思いついたのか、すごく怪しい笑顔をしていた。
「か、楓? どうしたのよ」
「はは、カノン。お前の親を助けられるかもしれない。体に残留しているっていうエネルギーを俺がなんとかしてやるよ」
「何を言っているんだ。そんなことできるわけが……」
「俺のカオティックアーツに不可能は無い! 俺はやってみせますよ。フレアさん」
そう言うと、楓はその場から去った。
カノンの親を助ける、カオティックアーツを作るために!
楓は、フレアに必死で頼んでいた。
それは、ティオとカノンの思いに応えるため。
親を助けたいと思う気持ちに応えるためだ。
しかし、助けるための情報がない。
いくら楓が、カオティックアーツという優れた技術があったとしても、助ける方法が分からなければ助けられない。
だから、フレアに頼んでいた。
情報が欲しいと……
「私も詳しくはわからん。聖呪痕は教会の名を語ったイカレタ組織【オルタクルス】という組織が開発したものだ。聖樹痕に関して事件が起こったことがある。私が知っているのはそれぐらいだ」
「ええ、それでも構いません。小さな手がかりでもなんでもいいです。少しでも、カノンの親を助けるために……」
「きゅ~がうがう」
カノンにも、楓の助けたいという気持ちが伝わってきたのか、楓のもとに寄ってくる。
「お兄さん。カノンもなにか手伝いたいって言っているよ」
「はは、今は大丈夫だ。俺が何とかしてやるからな。だから、いい子で待っとけ」
そっと、楓がカノンの頭を撫でる。
いつもなら、楓の手を噛むカノンだが、この時は、楓を噛まなかった。
(……この毛並みはすごいな。柔らかいようで硬い。これでは並みの武器が通らない)
カノンの頭を撫でながら、カノンの親をどうやって抑えるけるかも考えていた。
並みの攻撃が通らない。
これでは麻酔弾なども体に入らずに終わってしまう。
あのまま、真正面で戦ったら確実に死ぬ。
さて、どうしたものかと悩んでいると……
「楓、カノンを撫でながら何か考えているようだけど、聖呪痕はもういいのか?」
「すいません。カノンを触ったら毛並みが気になって…」
「まあ、【ライオネイラ】の強靭な毛並みは凄いから気になるのも仕方がないな。で、聖呪痕のことなんだが……」
フレアは語る。
数年前に【オルタクルス】のとある研究所から一人の男が脱走した。
その男の腕には怪しげな輝きを持つ痣があった。
痛みに耐えているのか、それとも別の何かで苦しんでいるのかはわからない。
だけど、確実に何かに蝕まれているのがわかった。
憲兵たちと教会の者、【オルタクルス】の者達の中で、戦闘経験がある者たちが、その男を囲った。
男から見られる感情は、激昂、不安、恐怖、悪意、そして闇……
それらすべてが混ざり合ったかのような雄叫びを上げた。
そこたら男が突然変異し始めた。
黒く、いろんな負の思いが混ざったモヤをまといながら、近くにいた人たちを殺していく。
なんとか男を抑えることに成功したらしいが、その時の男は全身が真っ黒になっており、まるで人の形をした何かのようにしか見えなかったという。
聖なる呪いというにはあまりにも邪悪ですぎる呪いだった。
分類として、聖法の部類に含まれる聖呪痕の解呪方法は未だに見つかっていない。
「……というのが事件の内容だ」
「それだけなんですか? それだけではカノンの親を助けるための手がかりには……」
「いや、まだ聞いたことがあるものがある。それは聖呪痕が何なのかだ」
「でも、それはフレアさんが事件を例にして話してくれたじゃないですか?」
「いや、あれは事件の内容。その後、私は聖呪痕の話をたまたま聞いたの」
フレアが言うには、聖樹痕とは、周囲から聖法気だと思われるエネルギーを直接体内に送り込んで術を使うためのもの。
聖呪痕自体がある効力を及ぼす魔法陣のようになっている。
そこに力を加えれば、魔法陣に施した術が発動する。
楓が【インフィニティ】に使用した魔法陣によるコンパクト化と同じ原理であることがわかった。
「あとは術を解くためにどうすればいいか考えなくては……」
「それについても問題ないと思うよ」
「クレハ、それはどういうことだ」
「要は聖法を使えなくすればいいのよね」
「いや、既に使われた聖法による体の変化も直さないと、すべてもとに戻らないかもしれないんだ」
「魔法の場合はあるべき形に戻るわよ。【ティムバー・リストリクションズ】だって、使用後に木が元の状態に戻るもの」
「むー」
楓は何か引っかかるような気がしていた。
聖呪痕は自然にある聖法気をもとに、常時、術が発動して、相手を苦しめる聖法。
聖法の効果は体の変質。
悪意、殺意、嫉妬、不満、あらゆる負の感情と凶暴性、それに見合った力を与える、聖と言うにはほど遠いい悪魔的呪い。
聖呪痕を消すだけでどうにかなるとも思えない。
そう、楓は直感的に感じ取っていた。
「楓、お前が悩むのもわかる。聖呪痕を消したぐらいじゃ元に戻らないだろう」
「やはりそうですか……」
「ああ、普通の魔法には、使役後に残留する魔力を発散させる工程がある。これをしなければ、魔法によって変質したものがそのままになってしまうからな。残留する力さえ消し飛ばすことができれば、元に戻る可能性はある、しかし……」
「しかしどうしたの? フレア姉さん! 助ける方法があるなら、大丈夫じゃない!」
「クレハ、方法はないんだよ。力を発散させるだけの魔法や聖法気は存在しない。なぜそれができないのか。それは魔法を使用するときの魔力すらも発散させてしまうからだ。元のエネルギーがなければ何も発動しない…」
「そ、そんな……」
ドン!
場が静寂になる。
机を叩いたのは楓だ。
楓は何か思いついたのか、すごく怪しい笑顔をしていた。
「か、楓? どうしたのよ」
「はは、カノン。お前の親を助けられるかもしれない。体に残留しているっていうエネルギーを俺がなんとかしてやるよ」
「何を言っているんだ。そんなことできるわけが……」
「俺のカオティックアーツに不可能は無い! 俺はやってみせますよ。フレアさん」
そう言うと、楓はその場から去った。
カノンの親を助ける、カオティックアーツを作るために!
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