家族に愛されすぎて困ってます!

甘草 秋

54話 こんな時に行く所なんて決まっているだろ




 ────生まれて初めてプロポーズをされた。


 頬を薄い赤色で染めながら、勇気を出してしたようなプロポーズ。
 あの顔があの景色があのキスが、忘れられない。

「......どうしたらいいんだ」

 あの後すぐにあーちゃんは保健室を後にしていった。
 こう、言い残して。


────返事はいつでもいいよ。待ってあげる。でも......なるべく早くねっ。


 俺には、あーちゃんは時間が無いように見えた。急いでいる感じで。でも、早まっていない感じ。複雑だ。
 あーちゃんからのキスもプロポーズも、もちろん嬉しかった。あんなに可愛い子にキスされて嬉しがらないやつなんていないと思う。いや、いない。断言できる。
 だけど.....。

「俺には.....瑠美姉がいるし.....」

 片方を捨てて片方を取る。どっちかを選ばなきゃいけない。誰かを選ばなくちゃいけない。
 どっちも欲しいなんてものは強欲だ。その人たちに失礼だ。
 でも......それでも......俺には。

「どっちを選ぶかなんて......できない......」

 自分の愚かさ惨めさが胸の奥に突き刺さる。片方を選べば片方が傷ついてしまう。
 人を傷つけることは、したくない。

「これは、誰かに相談だな」

 俺は保健室を出て、ある人物のいる場所に向かった。



 着いたのは図書室。
 今は文化祭中なので本の貸し出しはしておらず、休憩スペースとなっている。
 ドアを開けると、今まさに休憩中の生徒達がワイワイと騒いでいる。
 この図書室の一番端、一番目立たない席にそいつは座っていた。相席もナッシングのようだ。
 俺はそいつの隣の席にゆっくりと座った。
 やはり反応はない。仕方なく声をかける。

「文化祭なのに読書かよ柳原。俺でもやらんぞ」
「......ここは図書室だ。静かにしろ近衛」
「確かにここは図書室だが。今だけは休憩スペースだ。静かにする必要は無いと思うぞ。それに、俺はうるさくした覚えはない」
「休憩スペースは静かにしなくていいという考えが間違っている。休憩スペースで静かにしたいやつもいるんだ。だから静かにしろ」

 手に持っている本を読みながら、俺と会話する。
 なんて器用なんだ。前世は聖徳太子かなんかだな。

「相談があるんだよ」
「はぁ......またか、この前のやつはどうなったんだ」
「この前のやつは......まぁ、何とかなったんだけど。今回のやつは、なんというかそれも関係してるっつーか」
「代名詞が多すぎる。聞いてて不愉快だし、分かりにくい。この前のやつはいいから、今回のだけ話せ」
「......分かった」

 俺は保健室であったことを話した。キスのこととかは話してない。

「......つまり、お前は二股の女たらし野郎ってことか?」
「違うわ!」
「だってそうしか考えられないだろ。好きな人がいて、違う人に告白されて、どっちか選べない。ってことだろ」
「ま、まぁ、そうだな」
「最低だな」
「ええ!?......だって、仕方ないだろ......」
「仕方ないで済んだら警察はいらないぞ」
「.....いや、でも......」
「片方を選んだら片方が傷つく。どっちかを選ばなければいけない。でも、傷つけたくない。......パラドックスだな。詰みだ」
「っ......」

 返す言葉がない。

「人は無意識に誰かを傷つけるものだって、何かのアニメで言ってたぞ」
「......何だよそれ」
「関われば傷つけるし、関わらなければそのことが傷つけるかもしれない。生きていても死んでいても、ずっと傷つける」
欺瞞ぎまんだな」
「騙してなんかいないぞ。その通りだとは思わないか?」
「え?」
「片方を選んだら傷つける。でも、どちらとも選ばない方が傷つけるんじゃないか?」
「だとしたら、どうしろと?」
「当然、西アフリカじゃあるまいし、両方選ぶこともできない。日本は一夫多妻制じゃないからな」
「詰みじゃねぇか」
「......そうだな。詰みだな。でも、......だからこそなんじゃないか?」
「どういう事だ?」
「考えてもがき苦しみ、足掻いて悩め」
「?」
「後は自分で考えろ。これ以上人を頼るな。お前の人生はお前ものだ。俺に責任がいったら面倒だからな。後は自分の選択をしろ」

 納得がいくような答えは貰えなかった。
 ......いや、そこがダメなんだ。そういう所がダメなんだ。
 人に計算方法ではなく、答えを貰おうとしていた。自分で何も考えず、何もせず、何も与えず。答えだけを貰おうとしていた自分がいた。そんな自分が馬鹿馬鹿しく思えた。


────パシンっ!


 俺は両手で顔を叩いた。
 何か......今日は頬を殴られてばっかだな......。

「......ど、どうした?もしかして、マゾヒスト?」
「違う。......大馬鹿な自分に、喝を入れただけだ。......後は自分で考えることにした」
「そうしてくれ」

 俺は図書室を後にしようとした。

「近衛」

 が、柳原に止められた。

「何だ?」
「......頑張れよ」

 俺は今まで、こいつに応援されたことがあっただろうか。

「おう。ありがとな」

その返事を聞いた柳原は、少しだけ笑っいた。






 お久ぶりです。甘草 秋です。
 まずは、長期にわたって投稿しなかった事をお詫びさせてください。

 ホントすんませんでしたぁぁ!!!

 6月の終わりごろから学校のテストやら行事やらに追われ。夏休みも宿題に追われる日々でなかなか書くことが出来ませんでした。それに、少しモチベが上がらなかったていうのも理由の一つです。

 ですが先日、有難いコメントを頂きまして、モチベが夏の気温のように急上昇し、今に至ります。本当に有難うございます!
 これからの投稿頻度は私のモチベによりますが、暇な時に読んでいただければ作者も嬉しい限りです。

 コメントなども沢山くれると、次の話が出れるのも近いかもしれません。

ではまた!
 

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コメント

  • ミラル ムカデ

    今回も面白かったです!
    早く続きが読みたい!!

    1
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