家族に愛されすぎて困ってます!

甘草 秋

45話 プリン殺害事件!?



「春ちゃん!どうしたの!?」

 俺の疲れ果てた姿に母さんは心底驚いたようだ。

「え?いやー。......うん、なんでもないよ」

 ここは何とかして誤魔化す。

「お兄様♪楽しかったですね〜♡」
「ひ、ひいっ!」

 奈々がいきなり出てきて驚いてしまった。
 奈々の悪魔ような顔を見る度に風呂場であったことを思い出してしまい、俺は一歩後ずさる。

「お兄様、どうして私に怯えているんですか?」
「ば、ばばば馬鹿言え。俺が実の妹相手に、怯えるわけないだろぅ?......」
「ですよね♪」
「お、おぅ」

 どうして俺の妹たちはこんなに怖いのだろうか。まぁいつまでも怖がってちゃらちが明かないし、お風呂場での出来事は俺の記憶の中からさっぱりと消すとしよう。
 俺は海のような広い心で許してやることにした。妹には弱い。
 シスコンじゃないからな!

「何があったか気になるけど......そんなことより、はやくご飯にしましょ」
「そ、そうだね」

 今日も母さんの絶品手料理をいただくとしよう。



「あ〜美味しかった〜」
「よかった♪」

 母さんお手製のハンバーグはとてつもなく美味だった。

「あ、母さん。俺も皿洗い手伝うよ」
「ありがと春ちゃん」

 いつも母さんにはお世話になってるし、これくらいは手伝いをしないと。

「〜♪〜♪食後のデザートでも食〜べよ〜っと♪」

 夕飯の後にデザートを食べる、これが里姉の日課だった。

「デザート♪デザート〜♪............?あれ......?」
「ん?どうしたの里姉?」
「私の............プリンがない!!!」
「..................ぇ?」






 殺伐とした空気、静まり返ったリビング。
 俺たちは晩御飯を食べるテーブルのいつもの席に座っているのだが、俺の隣の里姉だけは違った。席を立って深刻な顔をしていた。
 そして、テーブルの真ん中に置かれているのは、ゴミ箱から漁られたプリンの空のカップが一つ。

「本日、私が朝イチにコンビニで買っておいたプリンが何者かによって食べられました。心当たりのある人は申し出てください」

(嘘ぉぉぉおぉおぉ!?あのプリンって里姉のだったのか!?やばい。どうしよ。正直に言うべきか?)

 いつも家ではダラ〜としている里姉も今ではキリッとしている。まるで、取調べをする女性警察官のようだ。

(ダメだ。今言ったら間違いなく殺される)

「......」
「誰も何も言いませんか......。これは全員容疑者ですね」
「「「「「ひぃ!」」」」」

 里姉の見たことない顔に母さん達も怯えている。
 プリンだけでこうなるとか、里姉のデザート好きには困ったものだ。
 そんなことより、どうする?俺が食べたということがバレるのは時間の問題だろう。
 ここは、他の改善策を提案してみるか......!

「さ、里姉。プリンは俺が今すぐ買ってくるからさ、犯人探しはやめない?」
「このプリンは今日だけ・・コンビニで発売された数量限定の高級プリンなの。だから今買いにってももう無いよ」

(何だってぇぇぇえぇえぇ!?あれは高級なやつだったのか!!道理で美味いと思った......)

 やばい。本気でやばい。もう打つ手がない。ここはもう、正直に言うしか............!

「ごめんなさい。それは私が食べました」
「......ぇ?」

 名乗り出たのは俺ではなく、奈々だった。

「あなたが私の高級プリンを食べたの?」
「はい♪」

 いや、俺が食べたよ。
 もしかして、俺の事を庇ってくれているのか!?

「そう、それじゃ............歯ぁ食いしばれぇぇええ!!」
「やめろ里姉ぇ!暴力はダメだってぇ!」

 俺は奈々にストレートを決めようとした里姉の体を抑えた。

「やめてたーくん!私はこの子を殴らないと気が済まないわ!」
「では、どうしたら気が冷めてくれますか?」
「一発殴られるか、同じくらいの美味さのプリンを用意してみなさい!」
「はい♪分かりました」
「「え?」」

 そう言うと、奈々はサッと携帯を取り出し、どこかに電話をかけ始めた。

「私よ。今すぐ三ツ星のパティシエにプリンを作らせて、ここに持ってきてちょうだい」
(かしこまりました)

 な、なんだ?なんか凄いことしようとしてない?

「奈々、一体何を?」
「里美さんのは私が食べてしまったので、そのお詫びということでそれ相当なものを用意しようと♪」
「なん......だと」

 さすが総理大臣の孫と言ったところか......。あ、それだったら俺もか。
 あと、食べたの俺だよ。

「私が満足出来なかったら一発殴らせてもらうわよ」
「はい♪」

ー数分後

「お嬢様。お待たせ致しました」

 黒いスーツを身にまとった中年の執事と思われる男が、一つの皿をテーブルに置いた。

「「おお〜」」

 俺と里姉は驚きを隠せなかった。
 少し溝のある四角い白の皿に肌色に輝くプリンが一つ。若干赤みがかったカラメルがプリンを優しく包んでいる。
 実に美味しそうだ。見ているだけでヨダレが垂れてくる。
 それを目を輝かせながら見る里姉。頬は赤く染っている。今にも食べたそうだ。

「私の所で働いている三ツ星のパティシエに作ってもらいました。どうぞ召し上がれ♪」
「ごくりっ」

 里姉がスプーンを手に取る。そして、プリンに一直線。その手は震えていた。プリンを一掻き掬い、口に運ぶ。

「っ!!!!!」

 里姉が目を見開く。

「美味〜〜〜〜いっ!!」

 あまりの美味しさだったのだろう。口や目はとろけていて、体に力が入らなくなったのかテーブルにバタりとうつ伏せになった。

「ほぇ〜〜っ」
「お、俺も食いたい!」

 いてもたってもいられず俺はスプーンを取り、プリンを掬い、口に運んだ。

「んっ!!!!」

 あまりの美味さに、里姉と同様俺もバタりとうつ伏せに倒れた。


「美味......すぎる」

俺の口内は幸せの甘さに包まれた。









「ん?......んん......あ、あれ?」

 俺はいつの間にか寝てしまったらしい。
 今は奈々の部屋で奈々に膝枕をされている。
 あのプリンは想像を絶する程に美味く、気を失ってしまったようだ。ある意味悪魔だな。

「お兄様、起きましたか?」
「え?ああ、うん。......で、どうしてこうなった?」
「里美さんのプリン食べたの、お兄様ですよね?」
「ギクッ!」

 奈々にはお見通しだったらしい。

「ど、どうして分かった?」
「顔に出てました」
「マジで?俺結構ポーカーフェイスは上手いほうなんだけどなぁ」
「私はお兄様の全てを知っていますから♡」
「そ、そうなんだ......」

 そのことに関しては深く追求しないでおこう。

「それより、お兄様」
「何?」
「私がお兄様の事を庇ってあげたんですから。貸し一つですよね?」
「え?あぁ。ま、まぁそうなるのか?......ってまさかお前......また......」
「〜♪〜♪」
「いやぁぁぁあぁあぁ!」







奈々「お兄様が何をされたかは、ご想像にお任せします♡」


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