家族に愛されすぎて困ってます!
44話 メンヘラ気味の妹
「......みんなどうしたの?」
 今俺が目にしているのは家族の異性たちである。
 彼女らは疲れている様子で額に汗を流していた。
 しかし、何故か奈々だけは200点満点の笑顔をしていた。
「まぁ......ちょっと......みんなで......運動でもしようかと、思って......」
 瑠美姉に肩を貸してもらいながら母さんが言った。
「へ、へぇー。健康的だね」
 なんだか胡散臭い。
「じゃあ俺風呂入ってくるから」
 時刻はもう6時を過ぎた頃だ。
 勉強で疲れた体を癒すため風呂に入りたかった。
「あ、でも。母さん達運動してきて汗びっしょりでしょ?みんなから先入っていいよ」
「いえいえ、気を使う必要はありませんよ。お兄様から先に入っちゃって下さい♪」
 奈々がにっこり笑顔でそう言った。
「え、でも......」
「私達は大丈夫ですから。ほらほら、はやくはやく♪」
 奈々は俺の背中を押して脱衣所まで連れていく。
「じゃあ、できるだけ早く出るよ」
「それは無理だと思います......」
「ん?今なんて言った?」
「何でもありません♪」
 なんだか嫌な予感がした。
 脱衣所に居座ろうとした奈々を無理やり追い出してから、自分の衣服を脱ぎ始めた。
 脱ぎ終わったところで風呂場へ入り、まずシャワーを浴びる。髪を濡らし、ワンプッシュしたシャンプーで洗う。頭皮マッサージも怠らない。
 洗い終わった髪を流している途中でガチャりと風呂場のドアが開いた。
「え!?誰!?」
 後ろから気配がする。その気配は俺の後ろで止まり、俺を後ろから抱きしめながら人差し指で背中を撫でるように触った。
「ひゃ、ひゃい!?」
 反射的に変な声を出してしまった。
 背中から伝わる柔らかさと温かさからしておそらく女性。胸の大きさはそこそこあり、里姉ぐらいだろう。
 (つまり、里姉か?)
 背中に押し付けられた胸だけで誰だか憶測できる自分が怖い。ていうか変態ですね。
「おい、誰だ!......って、奈々か......」
「なんか、微妙に嫌がってませんか?」
「いや。今日お前二回目だろ」
 朝にも生まれたままの状態でベッドに潜られるという強烈なスキンシップをされている。
「何回でもいいじゃないですか♪お兄様とのスキンシップは私の元気の源なんです♡」
「だからって風呂に突撃しなくてもいいだろ」
「お兄様とお風呂に入るという権利を私が取ったからです♪」
「また勝手なことを......」
 そうか、だから夕方に皆で外に行ってたのか。
「〜♪〜♪」
 楽しそうに鼻歌を唄う奈々。
 奈々はかなり大胆だ。
 でも、それは奈々の愛情表現なんだろう。久しぶりに春鷹と再会して嬉しいのだ。
 俺みたいな出来損ないの兄をこんなにも愛してくれる。俺もそれが嬉しかったんだと思う。
 だから、今日くらいは許してあげることにした。
「ほら、背中流してやるからここに座れ」
「え?あ、はい......」
 春鷹の思いがけない言動に奈々は少し驚いたと同時にドキリとした。
 そんなこととはいざ知らず、春鷹はスポンジにボディシャンプーを馴染ませ、奈々の背中を優しく洗い始めた。
「お兄様、お上手ですね♪」
「だろ?瑠奈姉や真子にも褒められたんだぞ」
「......えっ?今なんて言いました?」
「え?」
 何だか目が怖い。本当に怖い。
「入ったんですか?私以外の人と......」
「え?......いやー、は、入ってないぞ......?」
「そうですか。入ったんですか、私以外の人と」
 しらばっくれても無駄だった。
「いやでも、あれは不可抗力というか!相手の方が勝手に入ってきて、俺はどうすることも出来なかったというか!」
 言い訳とかではなく全部本当なんだけどね。
「他の女と入った分の埋め合わせをしなくてはいけませんね......」
 嫌ー!俺の妹メンヘラになってるよー!
「覚悟してくださいね♪お兄様♡」
「ひゃあぁぁぁぁあぁぁあ!」
 この日の夜に何が起こったのか。
 それは、春鷹と奈々以外に誰にも分からない。
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コメント
ペンギン
一体なにが起こったんだ...!?